適切な英語表現について(Black Lives Matter)

外国語を学ぶ時、その国の文化に関心を持つと理解が進む、などよく聞きます。

例えば、日本語の「いただきます」という言葉。諸説あるようだが、食べ物そのもの、生産者や調理者への感謝の気持ちを表す言葉として知られている。この私達にとって身近な一言、日本語学習者にとって、日本文化への理解がないと「はて?」となる事だろう。

文化…というか時代背景…いや、適切な英語表現について。

導入に困るのだが、今回取り上げたいのは、アメリカを中心に運動されているBlack Lives Matterについて。この運動そのものではなく、それについて波紋を起こしている「英語表現」についてです。

Black Lives Matter(BLM)については、こちらのサイトがとても分かりやすいので是非。

ALL LIVES MATTERの怖さ

6月の初旬の事でした。テニスプレーヤーのNaomi Osaka選手のとあるツイートが私のタイムラインに飛び込んで来ました。彼女は当時、頻繁にBLMについての意見をツイートしており、フォローはしていないものの、友人のリツイートなどでよく目にしていました。

彼女の、BLMに賛同するツイートのリプライを見ていた時、とある女性がこんな返信をしていました。

「私は、全ての人種・民族の人権を尊重します。ALL LIVES MATTER」

見た瞬間に私は、これはまずいな、と思いました。

欧米にも日本にもファンの多いOsaka選手、返信欄は英語と日本語が溢れています。

このツイート自体にはイイネが沢山付いていたのですが、一人の親切な方が以下のように教えていました。

「In the US the phrase "ALL LIVES MATTER" is used by racists, so I don't recommend using it. It dismisses the problem in US where it seems black lives do not matter the way they are treated. 」

「アメリカでALL LIVES MATTERというフレーズは、人種主義者が使うものなので、使わない事をお勧めする。このフレーズは本来の問題である、黒人の人々の命は大切なはずなのに、それがないがしろにされている、という視点を見逃してしまう。」

上でリンクを貼ったサイト内にあった、日本語の例で言うともっと分かりやすいかもしれません。

「Black Lives Matter「BLM」は、黒人に対する暴力と社会システム全体に広がる人種差別の根絶を訴える人権運動。和訳では「黒人の命は大切だ」となる。注意したいのは、「黒人の命も大切だ」と、たった1文字助詞が変わるだけで、他の人種の命も存在することが連想されて論点がずれてしまうということ。もちろんすべての人種の命が大切なことは言うまでもないけれど、今ここで焦点を当てて考えるべきは「黒人の命」

実はこうした表現、その後も何度か目にする事があり、なんともモヤモヤしておりました。

カナダでも議論を分ける表現

4日前、私が住むトロントの地元ブログニュースレターで、こんな話題が飛び込んで来ました。

あるお店の看板で、ALL LIVES MATTERというメッセージが掲げられたからです。

ここまで読んでくださった方の中には、「え?でもそれダメなんじゃ」とお察しのことかと思います。

事実、この看板を巡って市民は討論。看板は既にクリアにされているとの事。

ALL…の後に、BE SAFE(この時期、相手を思いやる表現としてよく使われている)BE KIND(他者に優しく)

とある事から、こちらのオーナーの言い分である「そんなつもりはなかった」なのだと思います…そして、このフレーズについての危うさを再確認した次第。

1か100か

上記のニュースのコメント欄にもあるように、こうした炎上を「やりすぎなんじゃない?」と危惧する人もいます。

実は、私もその一人。もちろん、BLMに賛同の立場を取っていますが、コロナを収拾させたいこの時期において、ソーシャルディスタンスを配慮せず、マスクなしで、デモ行進をする事には意を唱えます。

(トロントでは依然、緊急事態宣言下。公共の室内ではマスクが義務化されました)

さらに、奴隷制度等に賛成した人物の銅像がなぎ倒されたりそうした人々の氏名から名付けられた道路名を直ちに変更すべきだ、という活動もあります。

これらの問題について、BLMについては賛同するが、これは違うのではないか?といった議論がしにくくなっている、または議論をする事自体がoffensive(不快、無礼、攻撃的)という雰囲気です。

1か100か、という両極端の立場でしか物事を測れないのは、違うのではないか、と私は思います。

Graffiti Art or Vandalism Debate

ちなみに私は、街の落書きはアートか犯罪か。という討論が大好きです。


出典;https://voguegirl.jp/lifestyle/culture/20200609/black-lives-matter-202006/#!/g/1/1/

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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




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