見出し画像

どんよりとした日々にワンピースを添えて。

ワンピースが好きだ。まもなく最終章が始まる某麦わら一族の物語ではなく、すぽんと着れてさらっとお出かけができる超絶便利な、あの服のこと。

服屋さんに行って最初に引きつけられるのは、そのほとんどがワンピース。そして運命を感じて結局お買い上げしてしまうのもワンピース。おかげでそもそも衣装持ちでないはずなのに、各シーズンにつき最低3着はレギュラーに控えるほどになってしまった。たぶん、私に会えば半分以上の確率でワンピースを着ていると思う。

着替えの楽さはもちろんのこと、その着こなしのまとまり感もすごく気に入っている。その日のコーディネートを考えることに楽しみを見出せる人には物足りないのかもしれないけれど、どこまでもズボラで楽を求める私にはあまりにもちょうどいい。


この間帰省したときに、昔母が着ていたワンピースをもらった。
母から服をお下がりでもらうことは今までにもあったのだけれど、母はバブルの時代にバブリーに生きていた人なのでそのほとんどが着るのを躊躇うというか、時代錯誤というか、そんな印象で実際に着たことはおそらく一度もなかった。

ただ、そのワンピースは私が初めて着てみたいと思った母の服だった。薔薇の花が咲き乱れているのに、どこか落ち着いた雰囲気の漂うワンピース。古着好きというわけではないのだけれど、このレトロ感がしっかり私に刺さった。珍しくちゃんとポケットがついているところもポイントが高い。

試しに着てみると、我ながらけっこう似合っていたので嬉しかった。これはもう即レギュラー行き。4番?エース? よくわかんないけど、とにかく私のとっておきのポジションに彼女は抜擢されたのだ(彼だったらごめん)。

おや? 背後に何かいますね……。


楽でしかも可愛いって、これほど最強なことはないと思う。袖を通してぼふっと被るだけで、なんと一瞬にしてお着替え完了ができるワンピース。魔法道具も変身の呪文もいらない、その早着替えぶりにはセーラームーンやプリキュアもびっくり。あとどれみちゃん(ギリ世代ではない)。

だから、ワンピースの一枚だけで全身が一気にまとまるあの瞬間は気持ちいい。特に予定のない日でも、とりあえず朝起きてお気に入りのワンピースさえ着ておけば、あ、ついでにお化粧するか、それならせっかくだしどこかに出かけるか、という気力が湧いてくる。

もはや、ワンピースそのものが魔法道具なんじゃないか。全国の女児たち(+大きいおともだち)の憧れの的である変身シーンは披露できないけれど、この不思議なやる気の満ち溢れようを思うと、ちょっと魔法にかけられた気分になってみてもおかしくないと思うのだ。


しとしとと雨が降るどこか憂鬱なこの日も、えいっと全身を薔薇の園にしてみせる。ほら、もうお出かけしたくなった。ささっとお化粧を済ませて、お気に入りの傘も携えてドアを開ければ、自然と背筋がしゃんと伸びる。

せっかくなら天気のいい日にお気に入りを身に纏いたいけれど、気分が乗らない日にこそ好きなもので気分を上げていくのも悪くない。そう、だから私は雨の日も風の日も晴れの日も、このワンピースとともに日々を生きていこう。


ご自身のためにお金を使っていただきたいところですが、私なんかにコーヒー1杯分の心をいただけるのなら。あ、クリームソーダも可です。