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縁結び、この度失念バレンタイン

今日はこのままつけて帰ろうや、と言われ、受け取ったばかりの指輪をつけて浮かれている、雨上がりの夕暮れ。先に断っておくとまだ籍は入れていない。今日だけの特別だ。

鏡のように平たく真四角に加工されてはめ込まれたダイヤモンドは、ある角度から見ると眩しいほどに輝く。宝石以外の部分はマット加工にしてもらったので、ダイヤの透明感がより一層強調される。
この加工も時の経過とともに徐々に削れ、やがて元の艶を取り戻していくらしい。その過程を、今から楽しみにしている。


きっかけは、出雲に縁のある恋人が広告を見つけて教えてくれたことだった。縁結びの地にちなんだデザインの指輪にはそれぞれコンセプトがあり、一目見て気に入った。

最初の日、旅の道中に突然訪れた私たちをあたたかく迎え入れてくれたこと。そして指輪のデザインごとの特徴や、製作過程の細かなこだわりまで丁寧に教えていただけたこと。あの日の時点で、私たちの心はほとんど決まっていた。

担当の方とのやわらかなやり取りの中で、“このお店で指輪を買うこと”に対する魅力はどんどん増していった。そして心地よく、興味深い話を聞きながら、私はあるデザインの指輪に惹かれていた。それが冒頭に書いた、私の選んだ指輪である。

ダイヤモンドといえば表面に複数の小さな面をつけた、立体的なカットが主流だ。そこをあえて鏡のように平たく四角く加工したダイヤを、指輪にはめ込む。一見立体的なカットのダイヤよりもダイヤらしい煌めきは薄れるかと思いきや、あるとき不意に、眩く光を放つ瞬間がある。その一瞬の美しさと特別感に魅入られた。

この指輪を選べば、このお店で買った指輪だということがすぐにわかる。もちろん他のデザインも魅力的だけれど、私はここにしかないもの、いや、ここだからこそあるものが欲しかった。悩みに悩み、最後に手に取ったのはやはり、揺るぎない想いを宝石の透明度に込めた指輪だった。

ただ、デザインが好きなだけではこのお店で買わなかったかもしれない。担当の方から醸し出される出雲らしい穏やかな雰囲気が、そして担当者ご自身からひしひしと伝わってくる指輪への愛が、ここで指輪を購入する理由の一つになったのは間違いないだろう。
このお店で、この人から買ってよかったと心から思える買い物を、人生一度きり(にしたい)の結婚指輪で叶えることができてよかった。


指輪を受け取ったあとは、すぐそこの出雲大社まで赴き写真を撮ってもらった。後日送られてきた写真の私たちは、どれも照れくさそうに、それでいて自分で恥ずかしくなるくらい幸せそうに笑っている。

自分よりも相手の左手薬指が埋まっているという現実に、なぜだか色気めいたものを感じておかしな気分になる。帰り道、定期的にはしゃいでは「落ち着け」とたしなめられていた私。今、非常に浮かれている。浮かれすぎて、バレンタインの存在を忘れていたくらいだ。ひとまずバレンタインの件は、何かとバタバタしていたので今週末で勘弁してもらうことにする。


最後に、本当に素敵なお店なので、結婚指輪やペアリングを検討されている方に共有させてください。出雲大社前の『出雲結いずもゆい』さん。東京の浅草と名古屋にも支店を出されています。
お隣の店舗の『出雲縁いずもえん』さんでは指輪の手作りもできるそうです。縁結びの神様にあやかって、幸せになれますように。

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