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勉強しなくてもいい

「学校でしか直さない!」

そう言うと小6の長男は、間違いだらけの算数の問題集を投げ捨てソファーに飛び込んだ。

長男はもともと遅刻癖があったが、小6になっても相変わらずである。
遅れて出席するものの、特に算数は僕に似て苦手なのか要領が悪い。
「やり方教えてあげるから」と言っても、「今はやりたくない」などいろんな言い訳をしては逃げてしまう。

問題集を解いてみて多少は合っているのならまぁ分かる。
しかし、苦手な部分はまさに「0点」なのである。
さすがに心配なので何とかしてあげたいと思うのだが、なかなか素直に話を聞いてくれない。

そう、長男は反抗期真っ盛りなのである。

ゆりかごに揺られながら、ぶんぶんとガラガラを振り回していた赤子の長男はもういない。
いるのは自我に目覚めつつあり、自分の考えを押し通そうとする長男なのである。
そんな長男に対し妻も僕も、朝は「起きなさい」、帰ってきては「宿題しなさい」「お風呂洗いなさい」と命令調で接してしまっている。
どうやらこれもよくないようである。

僕はというと、小さい頃から勉強が好きで、大学院を出てからもずっと語学や異文化の研究を続けている。
購入した本は部屋の壁一面に据え付けた本棚を完全に覆い尽くし、どんどんとその領域を広げている。
勉強しているからと行って別にお金になるわけでもなく、「また本買ったの?」と妻のため息が増えるだけである。

そんな僕は両親から「勉強しなさい」と言われた記憶がない。僕だけではなく、兄も弟もそうだ。
父からは「勉強しなくてもいい。働いてくれた方がいい」と言われていた。
そう言われると反発したくなるというのが、思春期の人間というものである。
兄弟揃って「働きたくないから勉強する」という方向に舵を切ったのだ。
おかげで、今でも勉強に対して構えることもなく、息をするかのように取り組める。
一方で働くことは嫌いだけれど・・・。

長男にもこの我が家直伝の教育法で臨もうか。
しかし筋金入りの屁理屈家。
果たしてこの話術が通用するのか甚だ自信がない。
「勉強も仕事もしたくなーい!」って言われたらどうしよう・・・。


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