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やってやれないことはない18話 『銀行融資の実行』

入院病棟のベッド回転率は・・・病床利用率は・・・
誰も意識していません。

調べてみると、ベッド回転率は1回転/月に行っていません。
病床利用率は50%以下でした。

もちろん、入院するほどの患者さんはいないことに越したことはありません。
本当にそうなのか。
又もや職員に聞き取り調査開始。

「あなたの家族を当院に入院させたいですか?」

首をかしげる職員が半数以上でした。

それでこの状態であることが見えてきました。
自分の家族に勧めることができない病院だから、入院患者は他の病院に行ってしまうわけです。

というわけで、入院させたい病院にすればいいのだと独り納得していました。
あとは、方法論です。

環境整備はジワジワと行っていますが、入院環境の変更には役所における許可が必要となります。

大事な工事にもなります。

大きな資金計画が必要です。

3年目には、税務調査が入りました。
初めて税金を払える病院になったからです。

と言うことは・・・銀行からの借り入れが可能になってきているということです。

ならば、銀行が貸し出しやすいような状況を作り出せばよいということになります。

先ずは、周りの土地を買い取ります。
農業委員会にかけて農地を買い取り、所有地をまとめます。
この病院は、本体のほとんどが借地の上に立っていたので、不動産担保の価値が殆どありません。

増改築する計画の殆どを医療法人のまとめた土地の上に行います。

まずは、一つ土地を買い取ったごとに、銀行の融資担当者に案内して知らせます。
環境整備をしたごとに同様に行います。

他の病院からの評判を聞きつけて、自ら銀行員が訪問したいとの連絡が来るようになります。

これは相当関心を持ってもらえるとの手ごたえを感じ始めました。

増改築の設計開始です。
基本方針として、各部署の増改築は、その部署に責任をもって参加させました。

全ての建築に関する費用見積もりが出ます。

同時に始めていた医療器具や医療器械、備品などすべての目録を業者と打ち合わせながら作成し、見積もりを出していきます。

増改築総費用が出てきました。
3億3500万円を銀行が貸し出すかが最終関門です。

私は、この病院に赴任するにあたり3年間で再建目途を付ける予定でした。
当初、介護保険対応という話はなかったので予定通りでしたが、これに対応できる形にしたいとの意見により、延長することになってしまいました。

当初の再建計画では、今までの借金を返済し、社内留保を積み上げて終了と思い描いていましたが、根の深いマイナス収益構造を恒常的なプラスに置き換えて終了とすることが、ベストと考えるようになりました。       
                                       この病院が存在していることに期待している患者さんを増やし、もってその負託にこたえ、恒久的に存続できる収支構造を構築することが、必要十分条件として適正な解と判断するようになっていました。

そのための重要な布石が、この増改築における収益構造の転換です。

3億3500万円を銀行が貸し出しをする為に、いよいよ銀行頭取との面談です。
多勢に無勢とならぬよう、理事長と病院長と私の3人でタッグを組んでいざ出陣です。 
                                                事前打ち合わせもしっかり行い、銀行の頭取室へ訪問です。
先方は、5人の銀行マンの出席で、全体の構想と結果目標と準備態勢を忌憚なく説明し、無事終了しました。

後日、『融資実行』しますとの返事で安心して皆で喜びました。

悲願の大工事が始まります。

当然、この事業計画では入院計画が策定されていますが、達成できるかどうかは各部署の課長及び科長、看護師長の実行力にかかっています。

入院ベッド利用率は、90パーセントを要求しています。
午前退院、同日午後入院が実行できれば可能です。
増加した外来患者数からは、この数字が可能とみていました。

リハビリテーションは総合承認施設となります。
この県においても、まだ数件しかありませんので県内有数のリハビリテーションセンターとして機能させなければなりません。                                              機能的な訓練構成などやらなければならないことが山積みです。
                                                  部署のまとめや指揮系統の整理など誰もが未知数なことへの挑戦です。
常に結果を求めて尻をたたき続けます。
それは、彼らにとって本当に自己実現できた喜びを得てもらうためにです。
                                       リハビリテーションには、バリアフリーの発想が必定です。
新設の介護病棟に設置する家具や待合室などの椅子について、高さや使い勝手を踏まえて、業者と一緒に設計をして製作させることにしました。
これは、後に訪問リハビリテーションやデイケアなど多くの場面で、技術的根拠として役に立つことになります。

今回の増改築には、職員食堂を新設することにしました。

屋上に設計上部屋を作るようになっていたのではないか、と思われる骨組みがありました。エレベーターもついています。
建築士にこの場所に職員食堂と外テラスを増設したいので、可能かどうか調べてもらいました。

この病院の職員が100名余りいるのにもかかわらず、食堂がありません。
看護職員は、狭い休憩室、看護助手はロッカーのある更衣室の床の上、他の職員は、自分の職場で昼食をとり、衛生上、清潔と言える状態ではなく、見るも無残な有様でした。

食堂の窓に陽光が降り注ぎ、周りの景色が四季を映す中で食事のできる食堂を作り、職員全体の昼時間における精神的開放をすることで、職員の意識改革に影響を与える環境整備に着手することは、意味があると考えていました。

建築士の調査後の回答は、建築基準法上も他法上も問題なく増築できるとのこと。

開放的な職員食堂を設計するよう依頼しました。            必ずま~るい大きな窓を一つ作ってくれるよう頼みました。       これが唯一のこだわりでした。

増改築の許可を受ける為に、役所と何回も打ち合わせをし、そのたびに建築士に設計図を変更させ、それを複数製本して再提出をする。忍耐の世界でした。
朝3時までこの繰り返し。家に帰って風呂に入り出勤ということも幾度あったでしょうか。
そして、許可の決済が下りたところで工事開始です。

院内の段取りを全職員に伝え、日々の朝礼で伝え続けます。

そして完成の日を迎えます。

このnoteは、私の人生において成功・完結・失敗・後悔などのストーリーです。 若い皆さんのヒントになればと思って書いています。 書いてほしいことがあれば、気軽にご連絡ください。 サポートは結果であると受け止めておりますのでよろしくお願いいたします。