【美術展2024#84】光琳 国宝「紅白梅図屏風」×重文「風神雷神図屏風」@MOA美術館
会期:2024年11月1日(金)〜11月26日(火)
いつもは熱海温泉宿とセットで訪れるMOA美術館だが、今回はこれを見るためだけに来た。
どちらもそれぞれの所蔵先で見たことはあるが、隣に並べて展示されるのは39年ぶりとのこと。
そんな煽りを喰らったらやはり足を運ぶしかなかろう。
杉本博司のベンチの向こうに熱海の海を望む。
東大寺などの修復をしている奈良の瓦職人に発注したというタイル。
小さな窯で焼くので焼成された色味がそれぞれ微妙に異なり人の温もりを感じる。
入場前から否応なしに気分が盛り上がる。
MOA美術館は杉本博司氏がリニューアルに関わったというだけあり、細部までとことんこだわりまくっている。
コレクション品の質の高さはもちろんのことなのだが、美術館を観に来るというだけでもここに来る意味は大いにある。
今回の展示はほとんどの作品が写真撮影可。
素晴らしい。
・《秋草図屏風》 伝 尾形光琳
花のマチエールがレリーフ状になっている。
きっと平面のままでも素晴らしい絵なのだが、こうすることで花鳥風月を室内でもよりリアルに味わうことができる。
当時の屏風は装置としての面もあったからこれも正解なのだろう。
やり過ぎにならないくらいの匙加減がすばらしい。
・《竹梅図屏風》 尾形光琳
小ぶりな屏風。
インテリアにちょうどいい。
うちの和室に置きたい。欲しい。
・《花卉摺絵新古今集和歌巻》 本阿弥光悦
宗達(周辺)と本阿弥光悦によるコラボ巻物は、絵がステンシル的なハンコ絵にも見えるが、よく見ると筆の痕跡があり、緊張感を持った一発描きで描かれている。
基本的な大きさや形はほぼ揃っているのだが手作業だからどうしても微妙にずれていたりして、逆にそれが生き生きとした瞬間を切り取った繊細な表現になっているようにも思えた。
この時点ですでに作品は完成されているようにも思えるが、それを惜しげもなく下絵にして書を書いてしまう光悦のオラオラぶり。
だが書が入ることでお互いの良さを引き立てあってより良い一点物に昇華されているようにも見える。
絵の上に書が書いてあるのか、書の上に絵が描いてあるのか、しばらく見ているうちに交錯してくる。
時にクロスオーバーしながら即興で縦横無尽に音を奏でるジャズセッションのようにも思えた。
・《虎図屏風》 尾形光琳 左
・《龍虎図》 俵屋宗達 右
いくら本物の虎を見たことがないとはいえ、これはさすがに可愛すぎるだろう。
もう猫ですらないし、なんならおじさんみたいな顔。
このありえないくらいの絶妙な構図、そして尻尾や脚の処理が天才。
・《水葵蒔絵螺鈿硯箱》 尾形光琳
手広くやってるんだよなあ。
そしてそれぞれ質が高い。
・《寒山拾得図》 尾形光琳
寒山拾得と聞くと昨年の横尾忠則の寒山拾得展を思い出す。
まあ、横尾氏は寒山百得と謳っていたが。
・《色絵藤花文茶壺》 野々村仁清
MOA美術館が誇る国宝の一つ、野々村仁清の茶壷。
この作品のためにわざわざ設えられた小部屋の中央に鎮座する。
作品そのものが素晴らしいのはもちろんなのだが、照明の当て方や反射を抑えた特殊ガラスなど、作品に対するリスペクトが素晴らしい。
・《銹絵寿老人図角皿》 尾形光琳 / 乾山
光琳と乾山の合作皿。
光琳が絵を描き乾山が書を書き、両名の落款が入る。
デコ広表現された寿老人を見るたびに私はこのおじさんを思い出してしまう。↓
20年くらい前のCannondaleのマスコットキャラクター。
知ってる人いるかね?
・《風神雷神図屏風》 尾形光琳
トーハク所蔵の光琳本。
この光琳本を模写したとされる酒井抱一本を先日出光美術館で見たばかりだがどちらも素晴らしい。
そして実際に隣に並べて比較をしないとその違いを発見するのはなかなか難しい。
2006年には出光美術館で俵屋宗達と尾形光琳と酒井抱一の《風神雷神図屏風》が3点同時に展示される貴重な展覧会があったが、残念ながら私はその年海外に住んでいたので行けなかった。
後年、図録のみ入手したのだが、3点の違いをクローズアップして比較しているので非常にわかりやすかった。
並べて比べてみるとけっこう違う。
どこかでまたこの企画やってくれないかな。
・《紅白梅図屏風》 尾形光琳 国宝
MOA美術館のラスボス登場。
光琳は宗達本《風神雷神図屏風》を模写した後、風神・雷神の二神を紅白の梅に置き換え、さらに中央の空間に水流を描くことで自らの表現として昇華させた《紅白梅図屏風》を完成させた。
今までも見たことのある両作品だったが、こうして隣に並べて比べてみることによってその共通項や差異に改めて気づくことができる貴重な機会だった。
とにかく手持ちの所蔵品で日本美術史上のマスターピースを押さえているのは強い。
美術館側も矜持を持ってその資産をしっかりと運用して新たな表現を生み出しているというのがまた素晴らしい。
それは何より光琳にとっても幸せなことだと思う。
そしてここMOA美術館は什器としての名作椅子の運用も素晴らしいのだ。
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