【美術展2024#98】ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子 ピュシスについて@アーティゾン美術館
会期:2024年11月2日(土)〜 2025年2月9日(日)
コロナ禍以降各地で急速に広まった感のある自館コレクションを基にしたセッション系展覧会。
アーティゾン美術館はその先駆けと言ってもよいのではないだろうか。
既存の作品に新しい観点を発見し、既存の作品を通して新しい表現を生むこの試みは主催側の美術館としても腕の見せ所だ。
そしてアーティゾン美術館はそれを毎度うまいこと提示してくる。
ということで今年も楽しみにしていた。
今年取り上げたのは毛利悠子氏。
ヴェネチアビエンナーレ作家でもある。
さて、まず「ピュシス」ってなんだ?
※「ピュシス」とは古代ギリシャ語で「自然」や「本性」を意味する言葉
だそうだ。
そうか、なるほどわからん。
まあ見てみようではないか。
会場に入る前から作品が並ぶ。
ボ〜〜〜〜〜っと音が鳴り響く。
ブラックの静物画に対しての作品とされている。
果物からの電気抵抗を利用しアンプで増幅して音に変換しているとのこと。
後に登場する照明にも作用しているというが、果物から照明を点けるほどの電力をどうやって抽出するのか仕組みはよくわからない。
心地よい音色は夏に行ったシアスター・ゲイツ展を思い出した。
ブランクーシの引き裂けなさそうな《接吻》に対して、毛利作品はくっつくのかくっつかないのかハラハラさせられる関係。
磁力に弄ばれるようにフラフラと揺れ動くフォーク。
現代の恋愛観や人間関係の曖昧さや脆弱さを表しているようにも見えた。
この階段のエキスパンドメタルについては特に言及がなかったけれども明らかに倉俣作品から引っ張ってきているな。
マルセル・デュシャンの《大ガラス》をわかりやすく引用する。
デュシャンの作品自体はややこしくてわけわからんが、この「眼科医の証人」部分はビジュアル的にわかりやすいアイコンなのであちこちの作品で引用されまくっている。
アーティゾン美術館所蔵のデュシャンの《トランクの箱》はこちら。
辿っていけばそもそも元ネタのデュシャンも既成の検眼用具からの引用だ。
毛利氏はこの映像を撮るために実際にベリール(北フランス)まで行ったとのこと。
行くだけで丸2日かかったそうだ。
マイクで拾った波の音を音域ごとに鍵盤に割り振り、波の音とともにピアノが不規則に音を奏でている。
この辺りのシリーズはマティスのドローイングに対するアンサーになる。
タイトルの《I/O》は、入力/出力の「Input/Output」、初めてこの作品が発表されたオーストラリアのパースが面している「Indian Ocean」、デジタル信号の「1/0」などいくつかの意味を含有しているそうだ。
会場内は壁を取っ払って一室とし、その中に毛利作品が配置されていた。
それぞれの作品がアーティゾン美術館所蔵作品に対する個々のアンサーとして存在しているだけでなく、作品同士に関係性を持たせていたりと様々な伏線が張ってあり、会場全体で一つのインスタレーション作品のように感じた。
毛利氏は今回の展示を「寄せては返す波のよう」であるとし、藤島武二の《波(大洗)》をキービジュアルとして会場入ってすぐの場所に表札のように展示していた。
ということで、人工的な機械だらけの展示だったのだが、結局どのように「ピュシス」だったのだろう。
家に帰って晩酌しながら図録の作家インタビューを読んでいてビール噴いた。
ズコー
いや、それはわからんて。
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