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【美術館の名作椅子#09】アーティゾン美術館

アーティゾン美術館

設計:株式会社日建設計(建物全体)
   TONERICO(美術館内装デザイン)
開館:2020年




・How High the Moon

《How High the Moon 2-seater》

デザイナー:倉俣 史朗
発表:1986年
メーカー:(復刻)ギャラリー田村ジョー
参考価格:(復刻・シングル)¥2,062,500(2024年5月現在)

私の中での名作椅子界の玉座。
デイリーユースや家庭用には全く適さない孤高の存在。
まさに、引かぬ!!媚びぬ!!省みぬ!!(ドーン!!!!!!)
帝王はこれで良いのだ。

ちなみにこの2シーターモデルはごく少数しか製作されておらず、近年オークションでも値が爆上がり中。
先日イギリスのフィリップス・オークションにて出品された品がなんと約3,500万円にて落札された。
02 May 2024 Sold for £ 177,800 ↓


シングルはギャラリー田村ジョーから復刻生産されている。

だが、2シーターモデルは復刻されておらず。
長らく幻の椅子とされていたが、ギャラリー田村ジョーのInstagramによると、

倉俣史朗がデザインした "How High the Moon"。2シーターのモデルが、30脚だけ制作されています。

ギャラリー田村ジョーInstagram

とのこと。

庶民向けの詳細は不明だがセレブ界隈ではどのようなインフォメーションがあったのだろうか。
いずれにせよそんな超貴重な玉座のしかもオリジナルを惜しげも無く一般庶民に開放してくださる石橋財団の神対応。
私のような下賤な者でもアーティゾン神殿に詣でれば玉座に座らせていただけることができてしまうという僥倖。
本当にありがたき幸せでございますです。



・ガラスのベンチ

《ガラスのベンチ》

デザイナー:倉俣 史朗
発表:1986年

〜倉俣史朗の《ガラスのベンチ》(1986年)は、旧ブリヂストンビル本社ビルのロビーにあったもの。2020年、ブリヂストン本社ビルがミュージアムタワー京橋として生まれ変わったのを機に、 〜中略〜 アーティゾン美術館の6階展示室エントランスに引っ越した。

ART Agenda

ほぼ未公開だったという超貴重なベンチ。
こちらも実際に座らせていただける。ありがたや。
ガラスに座るという非日常的な行為。
ガラスが割れてしまわないか、傷がついてしまわないか、背筋を伸ばしながら恐る恐る座る。
座り心地は、…硬い。
けど、そんなの関係ねえ!
座り心地がどうとかそんな小市民的なことはどうでもよいのだ。
座することで自身の身体と超貴重な逸品が一体となるアート体験。
まさにここでしか味わえない異次元のユーザーエクスペリエンス。
感動(涙)



・エキスパンド・チェア

エントランスの《エキスパンド・チェア》
展示室内の《エキスパンド・チェア》

デザイナー:倉俣 史朗
発表:1988年

倉俣氏がブリヂストン美術館のためにデザインしたチェア。
美術館改装に合わせ、生地の張替が行われたとのこと。
エントランスにも展示室内にも置かれる。
前述の玉座に比べればかなり「椅子感」はあるが、単体で見ればこの椅子だってなかなかのクセつよ野郎だ。
もちろん市販はされていない。


しかし倉俣史朗は本当に素晴らしい。
椅子というかもはやアートだ。
私のnoteマガジン【美術展2024】も倉俣史朗からスタートした。 ↓



・キョウバシ ダイニング アームチェアー

デザイナー:米谷 ひろし
発表:2020年
メーカー:カンディハウス
価格:117,700円~(2024年5月現在)


・キョウバシ ダイニング サイドチェアー

デザイナー:米谷 ひろし
発表:2020年
メーカー:カンディハウス
価格:86,900円~(2024年5月現在)

アーティゾン美術館のためにデザインされたキョウバシシリーズ。
倉俣作品にやられて頭がおかしくなっているためかとてもお買い得に思えてしまったりする。


・その他オリジナル椅子の数々

arflex製オリジナルベンチソファ
arflex製オリジナルベンチソファ
arflex製オリジナルソファ

理想の空間を実現するため、ご納品したソファ、テーブルはすべて特注で製作。
展示室とホワイエに配した本革のベンチソファは、四方から自由に座れる緩やかなラウンドフォルム。試作検討により細かく調整したパイピングやステッチがアクセントとなっている。X型の脚部は鏡面仕上げ塗装にこだわり、周囲の景色が映り込んで空間に美しく溶け込むよう計算されている。また、ソファの中材には樹脂などを原料とした新素材を用い、心地よい弾力のある掛け心地とパブリックユースに耐えうる高い復元力を実現した。
資料の閲覧や検索を行うインフォルームのソファは、真鍮の壁面を引き立てるシンプルな佇まいを重視しながら、さりげないパイピングを施した。サイドテーブルはナラ材にオリジナルのグレー塗装。内装材やソファのファブリックと相まって、絶妙な色のグラデーションを表現している。
カフェのソファは変形の少ないフォーマルな掛け心地のシートで、メンテナンスのしやすい人工スエードを使用。台輪には床材と同じテラゾーを用い、上部にはパイピングの意匠を取り入れるなど細かなこだわりを詰め込み、機能性と上質感を両立した。
          (美術館設計デザイン、ソファ・テーブルデザイン TONERICO:INC.)

arflex

ベンチなどはarflexの特注製品。
デザインはなんとTONERICO。
ついでに言うとそもそもアーティゾン美術館の内装全般を手がけているのもTONERICO。
そしてTONERICOの代表は米谷ひろし氏。
つまり椅子から内装から全て米谷氏率いるTONERICOの手によるものなのだ。



他の美術館なら間違いなく展示作品として触れることすらできないような時価数千万円の超貴重な倉俣作品を、ここアーティゾン美術館では触れるだけでなく座ることができてしまう。
その他、オリジナルの椅子や什器のみならず空間そのものにもこだわりまくっている。
本当に素晴らしい美術館だと思う。

石橋正二郎氏の「世の人々の楽しみと幸福の為に」という言葉は伊達ではない。
かの東京国立近代美術館もなんと建物は石橋氏が新築寄贈を行うという偉業ぶり。
まさに神。

石橋財団の懐の広さに深く感謝。
我が家の自転車はブリヂストンの「bikke」を使わせていただいております。
中学生の時に買ってもらった憧れのロードレーサーはブリヂストンの「RADAC」でした。
もう車のタイヤは「REGNO」、スタッドレスタイヤは「BLIZZAK」しか使いません。
これからもお布施し続けますので引き続き良質な展覧会をどうぞよろしくお願いいたします。



【美術館の名作椅子】まとめマガジン ↓



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