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【美術館の名作椅子#14】京都国立近代美術館

京都国立近代美術館

設計:槇 文彦
開館:1986年(新館)



・1 FAUTEUIL DOSSIER BASCULANT(LC1)

デザイナー:ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアン
発表:1928年 
メーカー:Cassina
価格:¥605,000(2024年7月現在)

MoMAにも収蔵されている20世紀を代表する名作椅子。
コルビュジエの文脈で上野の国立西洋美術館にも導入されている。
個人的感想としては座り心地はそれほどよくない。
背もたれがグラグラ動くのと座面に角度がつきすぎなのがしっくりこない。
肘置きのレザーが次第にびろびろに伸びてくる。
だが名作椅子の真価はそういうことではないのだ。
我が家にも一脚あるがほぼ観賞用としてリビングに鎮座している。
それだけで場の空気が変わり空間が華やかになる。
生活や心が豊かになる。
約100年前のデザインに今もなおそんな力があるなんて本当に素晴らしいではないか。



・Cab 412 Chair

デザイナー:マリオ・ベリーニ
発表:1977年
メーカー:Cassina
価格:¥264,000(2024年7月現在)

アーム付きの413とともにMoMAにも収蔵されている名作椅子。
413は東京国立近代美術館東京国立博物館法隆寺宝物館でも採用されている。

我が家のダイニングではこのCab412とアーム付きの413を愛用している。
美しさ、佇まい、座り心地、机との相性など全てお気に入りの逸品。
我が家のものはCab35周年記念の2012年限定シボ革仕様。

2012年限定モデルの《Cab_C》

この革は汚れや傷に強いのでデイリーユースにとても良いが、ノーマルタイプに比べ柔らかく若干伸びやすいのが玉に瑕。

テーブル



・SECONDA Chair

デザイナー:マリオ・ボッタ
発表:1982年
メーカー:Alias(Cassina ixc.で取扱い)
価格:¥319,000(2024年7月現在)

ザ・80年代といった感じのデザイン。
監視員用の椅子として用いられていたが、いつも用いられているわけでなく展覧会内容によって使ったり使わなかったりとのこと。
今回は特別展の倉俣史朗に合わせたようだ。
確かに80年代の雰囲気は倉俣史朗と親和性が高い。
マリオ・ボッタ建築は日本だと唯一ワタリウム美術館がある。



・PALUDIS Chair

デザイナー:ジャンドメニコ・ベロッティ
発表:1984年
メーカー:Alias
価格:¥63,800(2024年7月現在)

MoMA収蔵のスパゲッティチェアの進化形ともいわれるPALUDISチェア。
スパゲッティチェアがPVC製コードを用いているのに対し、こちらはペーパーコードを用いているため、座り心地は程よく硬めで重量は軽い。
こちらも80年代デザインで建物と同時代のデザイン。



・No.18 Chair

デザイナー:ミヒャエル・トーネット
発表:1876年
メーカー:TON
価格:¥39,900(2024年7月現在)

THONET社の旧オーストリア帝国(現チェコ共和国)の世界最大最古の曲木工場であるビストリッチェ工場で今日も製産される由緒正しい曲木チェア。
ビストリッチェ工場は時代の変遷や国の独立や分裂に伴い紆余曲折を経て現在はチェコ共和国の民間企業TON社となっている。
ザ・ヨーロッパという感じの社歴だ。
撮影禁止の展示室内監視員用に置かれたものだったが、椅子だけならよいと許可をいただき撮影した。
THONET社のものかTON社のものかはたまたコピー品かはパッと見では判断つかなかったので座面裏ラベルをチェックしTON社のものと確認。



・くじら No.11 きょうと ベンチ

デザイナー:藤江 和子
発表:1986年

1982年に槇文彦に声をかけられて慶應義塾大学三田図書館に設置されたというくじらシリーズ第一号から数えて11作品目。
ここ京都国立近代美術館にも置かれているのはやはり槇文彦繋がりだからか。
老朽化が進んでいるのでぜひ修復作業をしていただきたい。



・Splash Chair

デザイナー:ホルヘ・ペンシ
メーカー:AMAT-3
価格:¥50,600(2024年7月現在)

「AMAT-3」。
聞き慣れないが1944年にスペインで誕生したメーカーとのこと。
全く気にしていなかったけれども実はここのだったのでは?という場面が多々ある、そんなちょい役的な立ち位置の椅子(メーカー)か。
(私が知らなかっただけで実はメジャーなメーカーだったりしたらすみません)



京都国立近代美術館は1階ホールのLC1とCab412チェアが印象的だった。
どちらもCassinaの歴史的名作椅子だ。
建物は1986年竣工なので館内には80年代の雰囲気が色濃く漂っており、監視員用に多数設置された同年代の椅子たちがその雰囲気をさらに濃くする。
特にマリオ・ボッタのSECONDA Chairは秀逸。
建物も椅子も80年代デザインが1周回って逆にレトロフューチャーな感じでとてもカッコいい。



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