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すべてに感謝の運動会

昨日、弟の運動会が無事に終了した。小規模園で、園舎も小さい弟の幼稚園は、近隣小学校の校庭を借りて運動会を催している。雨の日は体育館で行う手筈になっているので、延期はない。兄の入園から7年が経つが、予定日に開催できないケースはなかった。

だが、週始めに発生した台風によって暗雲が立ち込める。思いっきり東京に向かってくる予報だった。警報が出れば、予定日は諦めざるを得ない。けれども、延期になっても小学校のスケジュールとの兼ね合いがあり、延期日の予定は簡単には立たないだろう。どうする!どうなる!で、保護者たちがすったもんだしていた金曜日。突如、台風が南に大きく曲がるという、魔法のような進路予想が発表され、年長の母親たちは心から喜んだ。

春はそもそも登園ができず、もちろん親子遠足は中止。夏はいつもの受け入れ先にNOを突きつけられ、お泊まり保育が中止になった。幼稚園最後の行事、秋こそは叶えたい。祈ることしかできなかったが、台風が南に曲がるなんて滅多にないことだ。2011年ぶりらしい。祈りというか念力というか、みんなの思いが空に伝わったとしか思えなかった。

設営のため、1時間半前に会場入りしたときは、まだシャワーのような小雨が降っていた。校庭か体育館か、先生と悩みに悩み、校庭に賭けることに。すると設営を進めるにつれ、どんどん天気は回復し、子どもたちが競技を始めるころには薄日が差してきた。ありがたいとしか言いようがない。みんなの徳の積み方スゴイよ。

そうして無事に運動会は執り行われた。そもそもコロナを意識し、お弁当なしの短縮型だったので、9時から12時に雨が止んでくれたらそれで良かったのだ。まさにドンピシャの雨上がり。ありがたい。本当にありがたい。

年長の運動会の演目は、毎年、同じ内容である。障害物競争、棒体操、クラス対抗リレー。年少、年中と応援していくうちに、年長にしかできないこの3競技に出場することを誇りに思うようになる。3年越しの出場目標、気合いの入りようはなかなかのものだ。

体を動かすことが好きで、負けず嫌いの弟は、特に気合いが入っていた。ミスしたくない、1番になりたいと豪語していた。競技中にハプニングが起きたら、こりゃ泣くな…と案じていたのだが、それが現実になる。棒体操という、1m程の棒を持ち、体操や陣を作って団体で動く遊戯。その終盤に行う棒を投げてキャッチするという場面で、弟は棒を落としてしまったのである。

園の練習でも、家で広告を丸めて作った棒で練習していたときも、一度も落としたことがなかった。棒の左右についた玉の中には鳴り物が入っていて、落とすとカッシャーンといい音がする。弟の列の子どもたちは全員キャッチに成功していたので、余計に目立ってしまった。

弟は半泣きになった。こういうとき、いつもなら目に溜まる涙をこぼさないよう何度も手で顔を拭うのだが、演技が続行中で手が使えない。少し下を向き、グッと歯を食いしばって涙が流れるのをこらえていた。次の動作は、棒の左右を両手で持ち、頭上に持ち上げるというもの。弟はパッと棒を掲げると、凛と立ち、しっかり前を見据えていた。

堂々としたその姿に、今度は私が涙をこらえることになった。自分の思い通りにならないと、すぐに半ベソをかくかわいい弟。ひとりで耐えて、目の前のことを全うすべく真剣に取り組んでいる。幼児から少年になりゆく様を観たような気がした。

障害物競争では、跳び箱をポーンと跳び(3段だけど)、会場から歓声が上がったことに大満足。リレーは同じクラスの学年最速の子がごぼう抜きしてくれて、トップに躍り出たところで走順が回ってきた。すべてのお膳立てがなされた中、トラックを思いっきり飛ばして走る顔は真剣そのもの。後続を大きく引き離し、弟のクラスは1等を勝ち取った。ガッツポーズを3回もする弟の姿がビデオに収まっている。よっぽどうれしかったのだろうな。総じて良い形で、幼稚園最後の運動会は幕を閉じた。

私は撤収の手伝いがあったので、一足先に夫と帰宅の途についた弟。道中はどれだけできていたか、どれだけスゴかったか、自分褒めのオンパレードだったらしい。オイオイどんだけだよ、とは思ったが、こんな時期に人生最良の思い出の1ページが作れたのは喜ばしいことだ。よかったね。

運動会が開催できたすべての人モノコトに感謝。私にとっても忘れられない日になった。

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