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「不快」が生み出した革新

UNDER ARMOUR(アンダーアーマー)というスポーツメーカーが好きで、スポーツや運動をするときはアンダーアーマーのウェアをよく着る。通勤リュックもアンダーアーマーだ。

今でこそ、アンダーアーマーはスポーツ用品量販店や各地のアウトレットモールで手軽に購入することができるが、初期の頃は入手が難しいモノだった。



アンダーアーマーはアメリカ発で、フットボール選手だったケビン・プランクによって生み出された。彼は汗をかくと重くなってしまうコットンのTシャツに嫌気がさし、祖母の家の地下室で研究し、機能的なアンダーシャツを生み出したのだ。生地が汗を素早く拡散して蒸発させることで、不快感を軽減する仕組みを備えたものだ。

汗をかいても重くならないアンダーウェアがユニフォームの下でその効果を発揮するということからUNDER ARMOUR(ユニフォームの下の鎧)と名付けられた。現在はTシャツやシューズ、パンツなど数多くのラインナップがあるが、元々はその名の通り、アンダーシャツメーカーとしての出発だった。


私がそのアンダーアーマーを初めて知ったのは中学1年生の頃だ。野球中継や雑誌を見ていると、一部のプロ野球選手が体にピタッとフィットするアンダーシャツを着用していることに気が付いたのだ。

部活で野球をしていた当時の私は、野球選手はもちろん、彼らが身に付けているメーカーやアイテムにもとても興味があった。当時、アンダーアーマーを使用しているのが確認できたのは阿部、井川、福留、多村あたりだったと記憶している。

「あのピッタリフィットするアンダーシャツのメーカーは何なのか?」「一部の選手が着用している手袋のメーカーはあのアンダーシャツのメーカーのロゴだ」ということに気が付いた。調べるとそれらがアンダーアーマーというメーカーだということが判明した。

そうなると、同じものが欲しくなるが当時(2009年ごろ)は今ほどアンダーアーマーの日本での知名度はそれほど高くなかったように記憶している。また、取り扱っているお店もあまり無かった。ネットショッピングも当時はあまり信頼していなかったので、使用するのを躊躇った。入手するにはわざわざ遠くのアウトレットまで行って購入する必要があったのだ。

だが、2010年ごろからはアンダーアーマーがよく店に売られるようになって、知名度も爆上がりした。スポーツ用品店で簡単に買えるようになり、アンダーアーマーのアンダーシャツを着用するチームメイトも出てきた。

アンダーアーマーが流行りだすと、多くの球児やプロ野球選手が長袖のアンダーシャツを着用するようになった。例えば、高校野球の中継で球児たちが熱い時も長袖のアンダーシャツを着用している姿を目にすることがあるかと思う。

春の甲子園ならともかく、夏の甲子園の炎天下の中でどうして長袖のアンダーシャツを着るのかと疑問に思われる方も多いかもしれない。いくつか理由はあるが、やはり直射日光から肌を守るためである。強い日差しは肌に当たって、体温をあげて、どんどん体力を奪ってゆく。

それが長袖を着用しているとかなりマシになるのである。最近は日焼け対策などでアームスリーブや長袖を着用する方も多いとは思うが、直射日光を遮るだけで、体力が奪われずに済むことが実感できるだろう。ポリエステルで作られたアンダーアーマーの登場によって革新が起きたのである。

それまでの生地では、厚すぎて熱がこもってしまっていた。また、汗がなかなか乾かない。昔の野球選手の映像を見ていると多くの選手が半袖を着ているのはそのためだ。当時は暑いときに長袖を着る方が都合が悪かったのだ。

また、他にも腕から流れ落ちる汗を生地が吸うのでボールが滑りにくいということや、マニアックな理由では投手が長袖を着用することで、腕の筋の動きから球種を読まれないようにするといったものまである。


とにかく、アンダーアーマーの登場は私にとっても、多くの人にとっても衝撃であった。夏に長袖の着用ができるくらい軽くて薄い生地は今までにないカッコよさと機能性を感じたものだ。ポリエステルの生地はかいた汗を素早く拡散してすぐに乾燥させ、不快感を感じさせない。以前までのアンダーシャツでは一日に何度も着替える必要があったが、アンダーアーマーのアンダーシャツはそんな必要はない。

中学生の頃にどこでアンダーアーマーが手に入るのかを考えていたことが懐かしい。今や、アンダーアーマーは多くの人が着用し、多くの店やネットショッピングで手軽に買える、ごく当たり前のメーカーの一つになった。また、多くの人の快適さを生み出したのは、開発者の不快だったということも興味深い。世の中の発明は不満や不快さから生まれたものも少なくはないのかもしれない。

アンダーアーマーの登場は様々な点で「革新」であった。イチファンとしての私はそう信じてやまない。

ドライでサラサラ

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