見出し画像

COVID-19を体験した後の社会での消費行動、あるいは中国でのライブコマースやデジタルシフトについて

仕事で中国のオフィスの方と話をする機会があり、中国におけるCOVID-19対策と収束、そしてそこからのリカバリーのうねりに(いい意味で)驚きを持ちます。

中国のCOVID-19 からの回復ですが、やはり速い。

BCGやマッキンゼー等の調査からは、4月の時点で、ビジネスは99%リオープンしていて、80%の工場が再稼働していて、深センの空港も70%以上の利用率まで戻っている。富裕層の購買が、COVID-19で買えなかったり、楽しめかなった分を取り戻そうと爆発している(リベンジ消費というパワーワードが出ている)とのことで、中国の経済の勢いは確実に戻ってきているそうです。

そもそも、感染拡大を受けた変化そのものがダイナミックだったなと思うこともあります。
もちろん、COVID-19 の影響で消費者も家での自己隔離を余儀なくされたため、家具・インテリア関連の消費が昨対+470%を記録したり、従来は家で料理を作って食べるという習慣が薄かったのですが家でご飯を作るというブームが一気にきて、冷凍食品が8倍以上売れたり、と、ある種一時的かもしれないトレンドもあります。

ですが、あわせてデジタル化が進展し、中国におけるコンシューマーの一日におけるオンライン利用時間は 7.2時間へと増加していて、ECでは、TaobaoもTmall も3月のイベントでは昨年対比で+90%近いセールスの伸び。また、これまでEC利用率が鈍かった50歳以上の利用率は昨対+15%ぐらいで増えているそうです。

売り手側も、物理的な店舗でのビジネスを制限されたために、一気にECサイトを立ち上げたり、Livestream Commerce によってとんでもなく顧客を集めて売上をあげる等、パラダイムが変わっていく地殻変動があるなと思うことしきりです。

例えば、COVID-19 が猛威を奮っていた、2月17日、上海ファッションウィークで、アディダスが、Taobao Live というLivestream Commerceで限定版スーパースターのスニーカー発表会を開催しています。消費者はホストとリアルタイムで交流し、Tmall でスニーカーを購入できるというイベントでした。ホストと仲が良いファンのような客を中心としてインタラクティブなコミュニケーションが発生し、その場でホストが商品の着こなしや他のアイテムとの合わせ方もすぐに見せてくれるというのが Livestream Commerce の醍醐味であり、今後、例えばAIスピーカー等の技術が発展してコマース機能を様々提供したとしてもなかなか代替できない価値です。人による接客の魅了とテクノロジーの利便性が組み合わさっているとも言えますが、アディダスのこのイベントは、223万人の視聴者を集め、わずか10時間で 2億元 (30億円) 以上の収益を上げたそうです。

このトレンドはやはり看過できず、有名ブランドのデジタルシフトも加速しています。以下は、3月末、ルイ・ヴィトンが中国で Livestream Commerce デビューしたという記事です。

こちらは、グッチやプラダが、Tiktok の中国本国ブランドである Douyin をマーケティングに活用しているという記事です。

4月中旬に、Vogue がファッションのグローバルリーダーを集めて、座談会によるWebinar を展開していたのですが、そこでもこのCOVID-19 パンデミックの中での中国のデジタルへと変わるダイナミズムに熱い注目が注がれていました。

日本語訳はこちらです。

モデレーターのアンジェリカは、このパンデミックを機に中国では新たな購買行動が生まれていると語る。例えば、セレブリティや著名人たちがWeChatやライブ配信などを通じて商品を販売するというような、かつてのテレビショッピングのような方法だ。最近開催されたあるライブ配信は、実に3,800万人もの視聴者を集め、600万ドル(約6億円)のロケットを含む1億ドル(約100億円)以上のセールスを記録したという。

このようにデジタルの勢いが強まっていること、実店舗での販売がダメージを受けたことから、高級ブランドのECアウトレットへの動きというのも始まっていて、Alibaba が今月、Luxury Soho というアウトレットプラットフォームのアナウンスをしています。

更には消費傾向の変化として、今回のパンデミックを受けたエコフレンドリーかつサステイナブルな買い物への流れが来ているそうです。これは、今回のCOVID-19 拡大が、近年、中国での加速度的な経済成長を追求してしまったがための環境破壊によってもたらされたのではないかという意見が背景に少なからずあるそうで、環境に負荷を与えない消費が大事だという考え方が広がっています。

このようなデジタルシフトや消費傾向の変化は、アフターCOVID-19 における経済の先行事例として様々なアイデアの種、取るべきアクションのヒントが眠っているように思います。日本はまだ8都道府県において非常事態宣言が解除されておらず、COVID-19 による経済への影響を受け続けている状況ですが、回復の先を睨んだビジョンを今から議論しておき、消費動向における本質的な変化もとらえながら進んでいけれればと思います。


中国での爆発的人気に加えて、韓国やアメリカでの動向も含めてライブコマースの記事を書きました。こちらもご覧下さい。

また、筆者が所属しているデロイトデジタルにおいて、COVID-19 の影響下および今後の回復期・更にその後について、企業としてどのようなアクションをとっていくべきか。特にデジタルの活用の文脈でのオファリングを提供しています。ご興味ありましたらこちらもご確認ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?