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音楽レヴュー 2

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2020年11月の記事一覧

fromis_9(프로미스나인)「My Little Society」



 プロミスナイン(프로미스나인)の最新ミニ・アルバムは「My Little Society」と名付けられた。直訳すれば〈私の小さな社会〉と読める言葉だ。
 まず目を引いたのは、彼女たちの楽しそうな様子を映したジャケット。インスタグラムの〈いいね!〉みたいなハートマークの使い方など、SNSが一般的になった現在を滲ませる。一方で、ポラロイドカメラのフィルムを模したレイアウトは、レトロな雰囲気を醸す

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Al Wootton『Witness』



 イギリスのデッドボーイは、2000年代後半から良質なダンス・ミュージックを作ってきた。ダブステップ、ハウス、UKガラージなど、レパートリーは実に豊富。
 彼の作品で特にお気に入りなのは「Blaquewerk」だ。2013年にリリースされたEPで、スペーシーな音像が光るエレクトロ・ディスコ“On Your Mind‎”、ダークな電子音が全身を包みこむUKガラージ“Black Reign”など、

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Weki Meki(위키미키)「New Rules」



 韓国の8人組グループであるウィキ・ミキが最新ミニ・アルバム「New Rules」をリリースした。今年6月発表の3rdミニ・アルバム「Hide And Seek」以来の作品で、タイムスパンの短さに筆者も小さくない驚きを感じた。

 オープニングはリード曲にも選ばれた“Cool”だ。自分のことは自分で決める、あなたもそうしてみない?と私たちに歌いかける歌詞は、誰にも媚びない主体的人間像を描く。彼

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Everglow(에버글로우)「-77.82x-78.29」



 韓国の6人組グループ、エヴァーグロウ(에버글로우)。2019年3月18日にシングル・アルバム「Arrival Of Everglow」でデビューして以降、グローバルな人気を着実に高めてきた。“Adios”(2019)と“Dun Dun”(2020)はビルボードのワールド・デジタル・シングル・チャートでトップ3を獲得するなど、商業面も申し分ない。

 そんな彼女たちの作品に、筆者は戸惑いを感じ

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Trillary Banks「The Dark Horse」



 トリラリー・バンクスはイギリスのレスターで生まれ育ったラッパー。2007年から音楽活動を始め、ゆっくりと着実に地位を築いてきた。
 活動当初はレディー・スケングと名乗っていたが、しばらくするとピンキー・ゴー・ゲッタ名義で秀逸なフリースタイルを残すようになった。その後トリラリー・バンクスに改名し、現在に至る。

 彼女は3つの名義を使い、これまで多くの作品を作りあげてきた。なかでも、トリラリー

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Kylie Minogue『Disco』は本当のLove & DISCO



 シンコペーションが効いたベース・ラインから生まれる肉感的グルーヴに、4つ打ちのキックを執拗に反復する中毒性が高いリズム。2020年はそうしたディスコ色が鮮明な作品と出逢う機会に恵まれた。

 たとえばサウス・ロンドン出身のジェシー・ウェアによる『What's Your Pleasure ?』は、カッソやナンバー・ワン・アンサンブルといったイタロ・ディスコの艶かしくもラフなビートを取りいれたア

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Cherry Coke(체리콕) 『Every Flower You Gave Me』



 韓国のシンガーソングライター、チェリー・コークを知るキッカケは『Here』だった。2016年にリリースされたミックステープで、彼女の創造力を紹介というには十分以上のクオリティーが詰まっている。太いキックが印象的なビートは、影響を受けたと公言するR&Bやヒップホップ要素が色濃い。とはいえ、夢見心地な音像と幻想的な彼女のヴォーカルの組みあわせはドリーム・ポップとも言えるサウンドだ。ひとつひとつの

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Inner City『We All Move Together』



 ケヴィン・サンダーソンはダンス・ミュージック・シーンのレジェンドだ。ホアン・アトキンス、デリック・メイと共にデトロイト・テクノのオリジネイター(いわゆるベルヴィル・スリー)として知られ、インナー・シティー名義では“Good Life”(1988)や“Big Fun”(1988)といったワールドワイドなヒット・ソングを生みだした。

 ホアン・アトキンスやデリック・メイを含め、デトロイト・テク

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