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映画/ドラマレヴュー

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観た映画やドラマのなかから興味深かったものについていろいろと。
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#韓国

『梨泰院クラス』は古びた社会構造を打ち破る爽快なドラマだ 初出:wezzy(株式会社サイゾー) 2020年4月26日

 筆者がたびたび寄稿していたウェブメディア『wezzy』が、2024年3月31日にサイトの完全閉鎖を予定しているそうです。そのお知らせの中で、「ご寄稿いただいた記事の著作権は執筆者の皆様にございます。ご自身のブログやテキストサイトなどのほか、他社のメディアでも再利用可能です」とあるため、こうしてブログに記事を転載しました。元記事のURLを下記に記載しておきますので、気になる方は閉鎖前に覗いてみてく

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失望の中でも光を見つめようとする凛々しさ 映画『同じ下着を着るふたりの女』

 『同じ下着を着るふたりの女』は、キム・セイン監督の長編デビュー作にして、今年日本で公開された映画の中では傑作のひとつに数えられる作品だ。スギョン(ヤン・マルボク)とイジョン(イム・ジホ)という母娘を通して描かれる、暴力や共依存に塗れた関係性は綺麗なものではない。家族の繋がりや良妻賢母といった安易な理想化を巧みに避けながら、冷徹な眼差しに基づく社会批評と母娘の成長を描いているからだ。

 そうした

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映画『楽園の夜』



 韓国の映画監督パク・フンジュンは、ノワール作品を得意とする男だ。組織という仕組みの力学を描いた『新しき世界』(2013)、韓国にまつわる政治的利害を物語に取りいれた『V.I.P.』(2017)など、作品ごとに新たなアイディアを示し、批評面のみならず商業的にも成功を収めてきた。

 だが、その『V.I.P.』は多くの批判も寄せられた。女性キャラクターに執拗な暴力を振るう描写が女性蔑視だと指摘さ

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映画『夏時間』



 『夏時間』は、2020年に韓国で公開された映画。監督を務めたユン・ダンビにとって初の長編作品ながら、見どころが多い内容だ。

 物語はオクジュ(チェ・ジョンウン)の視点を中心に進んでいく。父・ビョンギ(ヤン・フンジュ)が事業に失敗し、金銭的に厳しくなったため、オクジュは父や弟・ドンジュ(パク・スンジュン)と共に、祖父・ヨンムク(キム・サンドン)の家に引っ越す。ドンジュは新たな環境に馴染むまで

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映画『野球少女』



 『野球少女』は、2020年に韓国で劇場公開された映画。主演はイ・ジュヨン、監督/脚本は本作が長編デビューとなるチェ・ユンテだ。
 物語は《天才野球少女》と呼ばれるスイン(イ・ジュヨン)を中心に進んでいく。野球にすべてを捧げる高校生のスインは、プロ野球選手になるため多くの努力を重ねるが、女性というだけで入団テストさえも受けさせてもらえない。周囲の人々も夢を諦めるようプレッシャーをかけてくる。

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映画『#生きている』



 『#生きている』は、今年6月24日に韓国で公開されたゾンビスリラー映画。公開初日に20万人以上を動員したヒット作だ。
 今年9月8日には、ネットフリックスを介して全世界配信もスタートした。世界35ヶ国のムーヴィー・チャートで1位を獲得するなど、ワールドワイドな注目を集めている。

 ジュヌ(ユ・アイン)とユビン(パク・シネ)が中心の物語は、ある日突然ゾンビが出現し、人々を襲いだすところからは

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