全てのクリエイターがセカオワを見習うべき5つの理由
伸び悩んでしまうクリエイターやアーティストは、いったい何が問題なのでしょうか。
原因として挙げられるのは、「軸」「ストーリー」「ファンコミュニケーション」「発信」「自信」などの要素ではないか、と思っています。
そして、同時にそれら全てをしっかり押さえている、と感じるアーティストが、セカオワことSEKAI NO OWARI。
今や音楽に限らず様々な分野に活動の幅を広げ、ファンも世界中で増えつつあるセカオワから見習うべき理由について、5つの要素に分けて解説してみましょう。
◆①自身の世界観を明確にしている
クリエイターやアーティストに重要なのは、まずもって世界観です。
これは個人でもグループでも同じなのですが、そのクリエイティブの背景にどのような世界観があるのでしょうか。
セカオワでいうとまず着目したいのは、そのグループ名です。「世界の終わり」というグループ名(海外で活動する際はEnd of the World)はVo.深瀬さんが付けたようですが、意味として「世界が終わったような生活を送っていた頃に残されていたのが音楽と今の仲間だったので、終わりから始めてみよう」ということなのだとか。
世界が終わって残されていたのが音楽と今の仲間、ですよ。
じゃあどんな音楽なのよ?って、気になってしまいますよね。
さらに、名前だけでなくグループの雰囲気も作りこまれていて、曲やステージに合わせたお揃いの衣装にDJ LOVEさんのピエロのマスクが映えるわけです。
曲自体にも、それぞれに世界観が明確に設定されています。
例えば『RPG』。
国民的アニメ「クレヨンしんちゃん」の映画版でも主題歌に起用されましたが、アニメの曲ということもあって、隊列を組んだ旅人たちが行進しているかのような「楽しさ」が伝わってきます。歌詞についても『RPG』という通り、ゲームの主人公が1人で旅を進んでいきながら成長を重ねている様子が描かれています。
そして『スターライトパレード』は、「幻想的」な世界が際立つような言葉が散りばめられ、パレードを彩るキラキラとした様相のメロディが奏でられます。
セカオワを一躍有名にした「ドラゲナイ」こと『Dragon Night』も、行進曲の様なテンポとメロディです。「戦争」と「休戦」がテーマになっている楽曲ですが、歌詞やMVにもそういった雰囲気が内包されているのです。
それぞれの作品単体にも分かりやすい世界観を打ち出していますし、ライブではステージも作りこまれています。(かなりお金を掛けているとか)
そうなると、受け手はその世界に没入しやすくなるわけです。没入したいからこそ、喜んでお金を払うと。
自分が何かを作り出す場合は、そのクリエイティブで打ち出したい世界観は何なのか。客観的に見直してみると良いかも知れません。
◆②ストーリーがある
優れたクリエイティブにはストーリーが内包されていることが多くあり、セカオワも例外ではありません。例えば、前述したグループ名。
「終わりから始めよう」という理由から付けたバンド名でしたが、途中で英語名称に改名しています。
これは、「SEKAI NO OWARI」とすることで「NO OWARI」、つまり「終わらない」という意味を強調するためとも言われています。
また、英語名称にすることで「SEKAI NO OWARI」→『NO WAR』という意味を含ませたのではないか、などといった解釈も想像されています。
さらに、2011年8月17日発売されたトリプルリードシングルに『INORI』がありますが、これは「SEKAI NO OWARI」から略称である「SEKAOWA(セカオワ)」を引くと「INORI(祈り)」になるぞ!などと話題になりました。
このように、グループ名ひとつとってもクリエイティブにストーリーを内包させることで受け手は様々な想像を膨らませて楽しむことになるわけです。
また、ストーリーと言えば、セカオワは曲を作る際にその過程を公開することがよくあります。例えば、レコーディングの様子とか。
曲を制作している様子も動画でも見せています。
そしてこれは、妊娠中のsaoriさんに代わってNakajinさんがピアノを練習している様子の動画。
こういったことは非常に重要なアクションだと思います。制作過程や練習風景などの裏側を公開することで、受け手は届けられるクリエイティブを立体的に捉えることができるようになるからです。
さらに、上のTweetに対してsaoriさんがその続きをTweetしていますが、これも1つのストーリーと言えるでしょう。
ただ単に「テレビに出ました」「ライブやりました」ではなく、「saoriさんがテレビに出れないからnakajinがピアノを練習している。そして番組で無事にピアノを弾き終えてsaoriさんに褒められてる」というストーリーがある。そしてリスナーはそのストーリーも一緒に楽しんでいる、というわけです。
◆③ファンとの交流を積極的に行っている
私は以前に「ぼくりり」の優れた思考をnoteにまとめて書いたのですが、そのなかでも“昨今のクリエイティブはプロダクト(作品)さえ良ければいいという訳ではない”ということを書きました。
作品以外の重要な要素として、「ファンとの交流」を挙げています。
Twitterアカウントがあってもファンと全く絡むことのないアーティストも多いなか、セカオワはファンに対して引用リツイートをすることがあります。
例)自分が紹介した曲(サザン)でAppleMusicでエラーが出るというフォロワーに引用リツイートで返信するNakajinさん
Fukaseさんはあまり浮上しないのですが、たまに質問を募集して、飛んできた質問に答えることも。
こうしてファンと交流すると、何が起きるか。
ファンは嬉しくなってリプライやリツイートの画像をキャプチャして保存したり、Twitterのヘッダー画像に貼り付けたりするのです。
もともとTwitterはコミュニケーションツールですから、公式サイトのようにインフォメーションを垂れ流しにして終わるのではなく、ファンとの交流に積極的に使うべきでしょう。セカオワですらやっているのですから、私たちのような凡人はもっと手を動かさなければいけない。
これ、人気YouTuberの多くは当たり前のようにやっていて、暇さえあればファボり、引用リツイートをしているのです。そういったマメなコミュニケーションが、ファンを維持しながら拡大していくうえでは重要になってくるのだと言えます。
AKBグループなども利用する仮想ライブ空間として「SHOWROOM」があります。その会社の代表である前田裕二さんの著書『人生の勝算』の中でも、「“偶像”と“身近”を行き来する」という表現が出てきます。
芸能人がテレビに出たりコンサートをすると、ファンからすると手の届きにくい「偶像」になります。しかし、その人がTwitter上でリプライを返してくれたりすると「身近」になるわけです。セカオワを含む昨今の人気アーティストや人気YouTuberはこの「偶像」と「身近」を上手に行き来している、というわけなのです。
◆④媒体を駆使してコンテンツを出し分けている
先ほど「Twitterではインフォメーションを垂れ流しにして終わるべきでない」「ファンとの交流に積極的に使うべき」と書きました。
いまの時代、SNSの種類も多いのでファンとの接点も増えていますし、会員制のサイトなども増えています。
大事なのは、こういったチャネルを単に増やせばいいということではなく、「コンテンツを出し分けする」ということだと言えます。
極端な例でいうと、ある企業のホームページで書いてあるリリース情報が、メルマガでも飛んできて、Facebookでも書かれ、インスタでも書かれ、Twitterでも流れてきて、LINE@でも飛んでくる。そうすると、受け手は辟易するわけです。
「どれも同じ情報じゃねえか!」と。
チャネルによってユーザー層も違ったりするわけですから、提供するコンテンツはチャネルに合った形に変えるべきだということです。
セカオワは、公式Twitterでこそインフォメーション中心ですが、各メンバーはインスタを中心に更新を続け、前述したようにTwitterでも情報を発信。
さらに公式ファンクラブも2種類用意されており、そちらでも独自コンテンツを発信しています。
①「R.A.I.N.S」
会員証や会報誌が届く手触り感のあるファンクラブで年会費5800円。
②「S.N.O.W.S」
ブログやPodcast、アプリなどデジタルを中心としており月会費300円。
それぞれでコンテンツを出し分けているのです。
※詳しい違いを知りたい方は下記のブログなどをご参照いただければ。
ちなみに「S.N.O.W.S」というのはSekai No Owari World Staffの略なのですが、「RAIN」という曲も出していたりして、ファンクラブの名称に「SNOW(雪)」「RAIN(雨)」をもってくるあたり、①でも書いた「世界観」がしっかりしていますよね。ブレていない。
と、話を戻しますが、クリエイターはSNSやブログなどで全く同じ情報を出していても仕方がないわけです。
チャネルに応じてコンテンツを出しわけることで、受け手は自分に合ったチャネルを選択しながら楽しむことができるのです。
◆⑤自信があり、楽しんでいる様子が伝わる
「世界の終わり」というグループ名を初めて見た時には、正直デスメタルでもやっている危険なバンドなのかと思いました。
しかし、途中で英語名称の「SEKAI NO OWARI」に変わり、グループのことを良く知っていくと、非常に温かみのあるバンドであり、ポジティブなメッセージを発していることが分かっていきます。
しかも、大事なのはメンバー同士の仲が良いこと。一緒に住んでいたというのは有名な話ですが、オンライン上でも何かにつけて感謝の言葉やお互いのリスペクトが感じられる。楽しげな雰囲気が伝わってくる。実はそこにファンは喜ぶわけです。
例)Nakajinの誕生日のsaoriさんのTweet
これはジャニーズのトップアイドル、嵐でも同じ。
アラシック(嵐ファン)に話を聞いていくと大体「メンバー同士が楽しそうで仲の良いところが魅力なの」と口を揃えて言います。
何かグループで創作活動をする人たちは、自分たちが楽しむことはもちろん、「仲の良さ」もコンテンツとして発信すると良いかも知れません。
そして、個人のクリエイターの場合は楽しむこととポジティブを意識すると良いでしょう。クリエイティブでは、作り出すものがネガティブなメッセージを含む場合もあるでしょう。失恋の曲とか、悪者がヒーローの漫画とか、暗い小説とか。
ただ、仮に曲がネガティブであっても、描く漫画のテーマが暗かったとしても、書く小説の物語が重かったとしても、そのクリエイター自身が発信するメッセージはポジティブであるべきだと思うのです。
それと、これは持論ですが謙虚である必要もないのではないかと思います。
「僕なんて大した作品を作ってませんから」
「私事でつまらない本を作りましたがお読みください」
「ライブはあまり面白くないかも知れませんが」
などといった言葉はクリエイターやアーティストから聞きたくないわけです。日本人らしい“謙遜”とか“謙虚さ”なんていりません。
人は誰しも、自信を持っている人に惹かれるものです。
こと、クリエイティブに関しては自信過剰なぐらいがちょうどよいのではないでしょうか。
そういった振る舞いこそが「アーティスト」と呼ぶにふさわしいのではないかとすら思えます。
クリエイターやアーティストの皆さま。「セカオワなんて自分とは違いすぎる」だとか「別格だ」などと思わずに、自分にできることを少しでも意識しながら取り入れてみてはいかがでしょうか。
自戒を込めて。
頂いたサポートは私が新刊を書く際の取材費に使わせていただきます。新刊はあなたのサポートによって出すことができますです。