他者と生きる リスク・病い・死をめぐる人類学 磯野真穂【読書メモ】
個人主義的人間観と統計的人間観の協同により生まれる「生物的に長く生きることが大事」という価値観に対して、関係論的人間観を対比させ、関係を多く(深く?)持つ人生が、実際は長く生きることだと主張している。
これは、人生は深く(濃く?)生きることが大事という価値観など、日常の直感に近い。
関係論的人間観では、人と人がかかわる(お互いに期待?/予測?を投射しあう)状態でのみ「時間」が「ある」(生まれている)と考える。このため、実際の時間が「ある」長さは、関係論的人間観では、生物的長さに依らないといえる。
偶然が人生(私)を作る。物語としての人生をほうふつとさせる。偶然が時間を伸ばす(葛藤なども含め様々な物語を生むことで、深みを作るということか)。この帰結は、事故で若くなくなった人が、100歳まで長生きした人より長生する可能性を拓くということ。
広く広がる統計的人間観、個人主義的人間観による画一的な価値観に対して、それ以外の視点ももつことは、(おそらく「個人」の人生にとって)、重要だという作者の主張は、その通りだと思った。
また、本書では、全体の流れが読みにくいが、私なりには、一章で「死や病」というビビットな切り口から世界認識について語り、二章で「自分らしさ」をキーワードに自己認識について語ったうえで、終章で、それらに時間を加えて立体的に「人生」を語っていると思った。
なんとか自分は上を読み取ったが、各所に刺激的な視点がちりばめられていて魅力はあるのだが、全体を通して読んだ時のストーリーラインが取りにくいのはややもったいないと思った。