関係からはじまる―社会構成主義がひらく人間観 ケネス・J・ガーゲン
「我つながる、故にわれあり」
心を個人という枠でとらえるのではなく、関係性の中にあると捉らえることで現在の多様な問題への解決となるという主張が中心テーマとなっている。
地球を中心に太陽が回っているのではなく、太陽を中心に地球が回っているコペルニクス的転回に類する転換である。
デカルトから始まる従来異的な個人観である「境界画定的存在」に対して、「関係規定的存在」としての人間像を示される。また、関係性(コンテキスト)の中で人は変わるという「変幻自在的存在」としての生が示されている。心は個人の「内的な」状態ではなく、関係性の状態?(協応行為)として描かれる(この意味でも従来的な認知心理学とは大きな見直しを図ることになる)
また、心の存在を関係性として描いたとしても、自他の境界が自身が所属するコミュニティの内と外にシフトするだけという課題の発生について、善の問題として取り上げている。この点については、ロールズから始まる正義論の議論を軽くなぞっているレベルに感じた。
また、その「善そのもの」については、本書では、「(どうやっても?)わからないため、いったん留保して実践から考えよう」という結論。実践として紹介される企業、セラピー、社会などの事例において、この個人、チーム、コミュニティの境界をなくす、融合させる取り組みについて丁寧に挙げている。これらについては、社会心理学者としての著者の強い課題意識を感じた。
全体内容は、他書で見聞きしたととがあることが多く(こちらが本家かもだが)、あらためて丁寧に説明、整理されて事例があるなどわかりやすく記載されているが、自分は新しい示唆としては得ることは少なかった。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?