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歌った話

10月に人生初の弾き語りをしたのだと友人に話した。久しぶりの電話だった。
「えー、動画送って、送って!絶対やで」
まぁいっか、と思い、電話を切った後、LINEに送ってみた。すぐに返事がきた。
〈なんか、すごいな、びっくり。違う人みたいで照れる〉
照れる、は何となくわかる気がした。わたしも自分で聴いていて照れる。
まさか人前で歌う日があろうとは。わたしが一番驚いていると思う。
わたしの声はお世辞にもいい声ではないし、歌声も細い。地声はコントロールが難しくて、音程も不安定になりがちだった。
それでもやろうと思えたのは、ボイトレの先生が「失敗してもいいからそういうのはどんどんやったほうがいいよ」と背中を押してくれたのもあるし(やらないほうがいいとは言わんだろうが)、わたし自身も「やってみるかぁ」と素直に思えるようになったからだった。
発表会に出ると決めたときは1ヵ月を切っていた。今から歌詞覚えて、歌を練習して、ピアノ練習して・・・ええ?
世間で弾き語りしている人は本当にすごいと思う。弾いて歌うなんて、とんでもなかった。(歌って踊る、も同じく)
人生、何があるかわからない。5年前のわたしに「あなた弾き語りするんだよ」と言っても絶対に信じなかっただろうと思う。
びっくりする友達にわたしは言った。
「でもさ、わたし、ずっと歌いたかった」
そうだった、と思った。憧れていたのだった。いつでもわたしは憧れに突き動かされている。この衝動がいいのか悪いのかわからないけれど、昔も今も変わっていないのかも、と思ったりした。
ボイトレを始めたころ、「口が全然開いてない」と言われて、毎日お箸を横向けにくわえてたのを思い出した。これアナウンサーとかがやるやつやん、と思いながら、それでも何とかしたくてやっていた。
決して粘り強い性格ではない。
ただ、憧れる気持ちは強い。
現実を見られていない、とも言える。
こんな生き方しかできない。
来年も歌えたら、と思った。

*写真はみんなのフォトグラフィーからお借りしました

#エッセイ #歌 #歌う #憧れ #弾き語り

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