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喫茶ランドリーの憲法|6ヵ条:働くこと、共に生きること、あなたらしくいること、幸せになること、そのために必要なことをギュウっとまとめてみました!

喫茶ランドリーを考えはじめた当初、数多くカフェを運営されている方に何が一番大変ですかと聞いたところ、「それは人間関係ですよ」と答えて下さいました。むろん、そんな答えを聞いても、人一人雇ったことのなかった私たちには、何一つイメージが沸きませんでした笑。

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そのような中で、気が付けば独自のお店をづくりをしてきたのだと思います。これまで喫茶ランドリーが、お客さんにとっても、また働くスタッフたちにとっても、他の場・お店にはない居心地を実現してきた背景には、人間らしい圧倒的な信頼関係があるからということは言うまでもありません。

ところが、人間は常にエラーを起こす生き物で、日常生活のできごとが、天気の移り変わりのように起伏ある感情を起こさせます。さまざまな掛け違いが衝突を誘発し、時として人と人がぶつかることが生じます。

もちろん、私たちオーナーは対応します。しかし、私たちもこれまた人間ですので、その対応は完璧には程遠く、エラーだらけだでうまくおさめることができないこともあります。そして、オーナーでさえぶつかることが生じます。

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きっかけや種類の差はあれ、どのお店でも、いろいろなことがあり、その度に悩み考え続けてきました。まぁ、どれもどの職場にも普通にあるようなことだと思います。

一般的な職場では、あなたのこれはダメです、改めてくださいとその都度、伝えるのことが多いのかもしれません。でも、私たち喫茶ランドリーのオーナーは、それが相手を1ミリでも萎縮させてしまうようなことは、できるだけ、極限まで避けたい、本当に最後の手段にしたいと考えています。

それがどんなミスであったとしても、注意するくらいなら、別の秀でたところを応援してあげる。その方が人がより生き生きとしますし、結果的にそこにあった問題を覆い被してかつ、新しい良い空気を満たしていくからです。

喫茶ランドリーには、働くスタッフにマニュアルもなければ、お客さんに対しても禁止事項の指示ひとつもありません。定例会議も一切ありません。むろん、今後もつくるつもりはありません。だからこそ、それと引き替えに、人が人に疑問を持つことも生じる。これは当然のことなのです。

しかし、そこで生じる人と人と衝突を一般的な概念でおさめようとしてしまうと、喫茶ランドリーはすぐにでも、ただのカフェ、ただの喫茶店になってしまう可能性があります。これは私たちにとっては、最も避けたいこと。もはや、やる意義がなくなってしまいます。

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そこで田中と話す中で、「喫茶ランドリーの憲法」みたいなものがあればいいのかねぇ、ということになりました。喫茶ランドリーで幸せに過ごし続けるため、生き続けるための考え方の方向性、というわけです。オーナーもスタッフもお客さんも、ここはこうだよね!と立ち戻れるきかっけになるものとなる。

また、今、喫茶ランドリーグループとしては、グランドレベルが運営する森下・両国座間のホシノタニ団地の喫茶ランドリー、ティップネスが運営する宮崎台の喫茶ランドリー、そしてフレンドリーショップ・スペースが帯広や清澄白河、福岡にあります。

それぞれの場所のほとんどのスタッフは、喫茶ランドリーの本店での体験勤務を通して、喫茶ランドリーの理念を学んできました。でも、これから先はその場で、新しく人を雇っていくこともあるでしょう。そんなときにも、この文章が有効に指針になっていければ嬉しいです。

(また、喫茶ランドリーに関わりのない方も、今の働き方や生き方と照らし合わせて、考えるきっかけになれるのなら幸いです)

どうかどううか、喫茶ランドリーのような「場」が、できるだけ永く続いていきますように!!

それでは、喫茶ランドリーの憲法|6ヵ条です。

1.どんなひとにも、「自由」なくつろぎ

喫茶ランドリーを立ち上げるとき、田中と共に考えたコピーです。お店のロゴにも添えられています。普通、店名にはコピーなど添えませんが、私たちはこのコピーにすべてを込めました。

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「どんなひとにも」には、「あなた」が含まれている一方で、それ以外のすべての「他者」も含まれています。つまり、「あなたの自由」が許されることと同時に、「すべての他者の自由」も許される場であるというわけです。

私たちは、気付かないうちに、ある同類の人たちの中で生きてしまっているものです。だから、普段接しない部類の人たちと接すると、色眼鏡をかけて見がちです。でも、どんな人もすべて同じ「人間」です。だから、まずは信頼から入っていかなくてはいけません。それは、たとえば障害を持った方が、浮浪者のような方が来店されても、同じです。

この「どんなひとにも自由なくつろぎ」については、ずっと考え続けていかなくてはいけません。「どんなひと」とは何だろう?「自由なくつろぎ」とは何なのだろうか? その都度悩むこともあるでしょう。でも、その先にのみ、喫茶ランドリーが喫茶ランドリーであり続けられる大切なことがつまっているはずです。

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2.ひとりの「人間」として居てください

どうか、●●さんのままで、ひとりの「人間」として居てください。仕事場の肩書きや、家庭内の役割、いろんなものを背負って、人間は生きているものです。でも、せめて喫茶ランドリーの中では、お客さんも、そして働くスタッフも、ひとりの人間で居てほしいと思うのです。

赤ちゃんは赤ちゃんらしく泣いてほしい。大人もそのときどきの正直なままで居てほしい。そして、スタッフは決してプロフェッショナルにならなくていいのです。プロ以前に、人間のまま、あなたのままでいることが大切です。目の前のお客さんをひとりの人間として見て、接して下さい。きっとお客さんも、一人の人間としてコミュニケーションを交わし、返してくれるはずです。

人間同士の対等な関係を構築できれば、相手がお客さんでも、一緒に働くスタッフでも、嬉しいときは「ありがとう」と喜びを分かち合い、ミスをしたときは「ごめんなさい」と互いを許し合う、そういう人間的な秩序を生み出すことができます。

ここを掛け違えてしまうと、行き着く先はクレームモンスターの客だらけのお店、店長がスタッフを叱りつけているようなお店です。喫茶ランドリーが目指すのは、その対極にあります。

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3.自分は他者に「許されている」という謙虚さを

働き方には、マニュアルもルールがありません。オーナーが各スタッフに伝えることがあるとすれば、基本、得意なことを積極的やってくださいということだけです。それは逆に、不得意なことはやらなくていいよということでもあります。

それでもお店はまわりはじめます。最初はかみ合わせの悪いギアも、少しずつ互いが綺麗におさまりながら、まわりはじめます。一見これはチームワークと表現できるかもしれませんが、実はその裏で互いが想い合っている結晶だ、と表現するほうが正しいと考えています。だから、どのお店もやれていることそのものが、とても愛おしくすばらしいことなのです。

でも、時が経っていくと、人間ですから、他者と自分を比較してしまう瞬間が訪れます。私はこうしているのに、あの人はどうして?あれは何? でも、そんなときほど、また立ち戻らなくてはいけません。

喫茶ランドリーは、マニュアルをなくし、人間らしく居られる環境を追求したい。だからこそ、それと引き替えに、たくさんのエラーが起こるのです。その無数のエラーに接したときこそ、私たちは「想い合う」こと「許し合う」ことで、喫茶ランドリーの結晶が保たれていることを思い起こさなくてはいけません。

「あなたの自由」と「すべての他者の自由」が許される場。そんな相反するようなふたつを同居させるためには、「想い合う」こと「許し合う」がどうしてもはずせないからです。

オーナーの田中は、よく言います。「私たちはみんな凸凹です。でも、それを互いが受け入れる。あなたには良いところがたくさんある。それを存分に出してほしい。一方あなたにはダメなところもたくさんある。その多くは隣の他者がいつもすべてを許してくれているから大丈夫。」

そう、その「許されている」という謙虚さを常に持っておく。自分が正しいと思うまえに、自分が許されていることを自覚し続けるようにしましょう。

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4.他者の「問題化」から全力の応援へ

喫茶ランドリーは、お客さんの「小さなやりたい」の実現を、許可ではなく全力の応援によって実現しています。それはベビーカーのママがクラフトビールを一人で飲むことから、大きなイベントごとまでさまざまなレベルのことに言えます。

これまで何百、何千とさまざまな物事を、あたり前のように実現してきましたが、これが他の世界ではうまくいかないことが多々あります。そのほとんどが、「小さなやりたい」が表出したときに、大丈夫?と「問題化」することではじまります。それによって「小さなやりたい」の実現は、みごとにつぶされていきます。

スタッフ同士でも同じことが言えます。スタッフの「小さなやりたい」が表出したときに、あれはどうなの?と、他者を問題化させてしまうことがあります。問題化したとしても、きちんと相手との素直なコミュニケーションで解決されれば、確実にレベルアップするのだから、それは最高です。

ところが、問題化された問題を対象の人に直接伝えられず、その裏で「愚痴」となって増幅しはじめると、もう手を付けられなくなります。

喫茶ランドリーを成り立たさせている土台が大きく崩れはじめ、同時に、スタッフそれぞれが持つ「小さなやりたい」の実現も崩壊しはじめます。それは最も避けるべきことのひとつです。こんな料理をつくりたい、こんな風にお客さんと接したい、お店をこんな風に彩りたい、子どもたちにこんな風に過ごしてほしい... 自分以外のスタッフも、お客さんと同じ。そういったあらゆるスタッフの「小さなやりたい」も、どうか淡々と全力で応援してあげてほしいのです。

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もうひとつ。気に掛かることがあっても、自分の正義は押しつけない。心理学者のアドラーさんは、自分の幸福のためには、他者の課題には踏み込まないことだと言いました。問題化してしまったとしても、そこからひとつ距離を置く。それは同時に許す、受け入れる、全力で応援することいつながります。このことは、実は表裏一体なのかもしれません。

そういう環境を保ちながら、スタッフ個々の「小さなやりたい」でさえも、無限に実現させ続けていきたいのです。本人がやりきって、すばらしかったら、おめでとう!と抱き合おう。もし、あなたが心配した通りに目の前の人が失敗してしまったとしても、それを抱きしめてあげてほしいのです。

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5.「まち」に想いを馳せ続ける

喫茶ランドリーをはじめた当初、イベントごとに合わせて子供たちが遊べるコーナーをつくりました。その影響でイベント後も親子連れがたくさん来て下さいました。でも、それではいけないと、そのスペースを撤去しました。「どんなひとにも」が、実現できなくなると考えたからでした。

ベビーカーを押しているママにも、サラリーマンにも、学生さんにも、おじいちゃんおばあちゃんにも、気軽に入っていただくためには、外から見てお店の中に、常日頃いろんな世代の方々がいる状況を作り出さなくてはいけません。

それには、店頭の看板、写真、文言、デザイン、色使い、植栽、看板の置き方、自転車の置き方、軒先のベンチの位置、店内の配置、照明、雑貨、そしてスタッフの立ち振る舞い… すべて「まち」側からどのように見えてくるかにかかっています。

でも、唯一の答えはありません。これだと、おじさんは入りづらいかな?これくらいだと子連れのママは入りやすいかな?考えトライし続けていくことが必要です。

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私たちが、喫茶ランドリーをつくるひとつのきっかけとなった、コペンハーゲンで入ったランドリーカフェ。そこには、赤ちゃんから大学生、高齢の方まで、まさにあまねく人々がその同じ空間に居て、そのことに感動しました。喫茶ランドリーもそのような場所、あるいはそれ以上に仕立て上げることができました。とても嬉しいことです。

でも、どこまでひらけているのかということに対して、現状に満足してはいけない、と思っています。

それでもなお、目の前のマンションで今日自殺している若者がいるかもしれない、隣には引きこもっている老人がいるかもしれない、今目の前の通りを歩くサラリーマンが死ぬほど思い悩んでいるかもしれないと。

おおげさのように感じるかもしれないけど、それが日本の現状です。

もちろん、直接的に喫茶ランドリーが何かを施せるということでなはいかもしれません。ただ、それくらいに「まち」に対して想いを馳せなくてはいけないということなのです。その意識を持ち続けていけば、必ず地域の人を少しでも救うことができる場に成熟していくはずだからです。

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6.「世界平和」と自分はつながっている

世界平和を目指していると、オーナーの私たちはよく話しています。でも、平和って何なんでしょうか。喫茶ランドリーにいて、平和だなぁ、と感じるのは何故なんでしょう。

争いがないから平和? それは違います。あまねく人々それぞれが許され、自由にふるまい憩い合える、賑やかなようで整然としている秩序そのものに、人間は別格の「愛」を感じる生き物なのです。それがここには存在するからだと思います。たまに海外からいらっしゃる方でも、大興奮して「すばらしい場所だ!」と言って下さる。それはつまり、この感覚が世界共通だということを物語っています。

ここで何が言いたいかというと、あなたのここでの振る舞いは、お客さんやスタッフだけではなく、地域の人々や、あなたの家族、そしてグーンと飛躍して、実は「世界平和」というところまで地続きだということなんです。極論、アメリカで暴動が起きていたり、世界中で戦争が続いている。そのことにも実は、つながちゃっているということ。

で、実はここまで話してきた5つのことも、すべてが「世界平和」に近づくのか、それとも遠のくか、という基準でジャッジをしていくと、自然と選択できることでもあるのです。おい! 話がでかすぎるよ!! なんて言われるかもしれないけど、この基準は自分にとっての幸せな判断ができる可能性が大きい。だからぜひ、自分と世界平和がつながっているという意識を持つことにトライしてみてください。

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さぁ。というわけで、喫茶ランドリーの憲法|6ヵ条でした。

喫茶ランドリーという場所に関わる人々の人生が、ここを介して、さまざまな人や物事、想いと出会い、山有り谷有りながらも、これからも予想も付かない幸せな正のループが起き続けるものに成熟していきますように。それが、私たちがつくったこと、この場に関わっていただけることの最大の喜びです。

というわけで、今日はこの辺で。

1階づくりはまちづくり

※1回目更新:2020年6月9日|2020年5月18日に執筆したものをアップ


大西正紀(おおにしまさき)

ハード・ソフト・コミュニケーションを一体でデザインする「1階づくり」を軸に、さまざまな「建築」「施設」「まち」をスーパーアクティブに再生する株式会社グランドレベルのディレクター兼アーキテクト兼編集者。日々、グランドレベル、ベンチ、幸福について研究を行う。喫茶ランドリーオーナー。

*喫茶ランドリーの話、グランドレベルの話、まだまだ聞きたい方は、気軽にメッセージをください!

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