計画は大事だが、未来を決めるのは計画ではなく目標設定だ [目標設定の原則](2)
今回は目標設定の話の続きです。
「パフォーマンスを向上したいなら計画よりも目標設定のあり方のほうが大切だ」
というのが前回の話でした。
言葉を足しながら、少し振り返ってみましょう。
期待は大きいのに事業成績が上がらず、幹部に見放されかけている組織、他社への遅れを挽回できずにいる組織は世の中には多いものです。
潜在能力は高いのに見た目以上に成績の悪い組織のことを、私は「パフォーマンスが低い組織」と呼びます。パフォーマンスの低い組織は、表面上の話では語り尽くせない深い闇を抱えているものです。
この “パフォーマンスの低さ” の原因(=闇)として真っ先に上がるのが “計画力の低さ” なわけですが、これですべてが解決するわけではありません。
そこで着目したのが “目標設定” です。
現状のパフォーマンスの低さが “計画倒れ” 、つまり設定した目標を達成できないことに起因するなら計画は大切です。しかし、そうでないなら、改善すべきは計画ではなく目標設定のほうです。
「設定目標が低すぎるのではないか?」
そう疑うべきです。
その上で、目標設定の方法を3つに分けて紹介しました。ボトムアップ型、トップダウン型、調整型の3つです。
私がお勧めするのは “トップダウン型” だとお伝えしたところで、前回は話が終わっていました。トップダウン型は、幹部が目標を設定し、現場は与えられた目標を達成するための手段を積み重ねるというやり方でした。
さて、ここからが今回の話です。
私が “トップダウン型” をお勧めする理由は目標設定の狙いにあります。
「何のために目標設定するのか?」
ここから考えましょう。
説明に入る前に、そもそも “目標設定” でいうところの “目標” とはなんでしょうか。
目標とは目的を表わす目印のことであり、目的とは目指す状況のことです。目標として数値や「あり・なし」を用いることが多いのは、目指す状況を実現できたか否かをはっきりと識別するためです。
これがわかれば、目標設定の狙いは自ずと浮かび上がってきます。
なぜ目標を設定するのか、その狙いは、目指す状況をわかり易く示すことで当事者たちのモチベーションを高め、努力を促すことにあります。この結果、目標を設定した場合は、設定しなかった場合に比べて目的を達成できる可能性が高まります。
そんなわけで、目標設定の狙いはこうなります。
目標設定の狙い = 目指す状況を実現できる(目的を達成できる)可能性を高めること
ボトムアップ型や調整型では、目指す状況を実現できません。なぜなら、目標と目的が合致しないからです。目指す状況を実現できるのは、目指す状況に整合する目標を幹部が設定できるトップダウン型だけです。
これが、私が “トップダウン型” をお勧めする理由です。
「でも、トップダウン型で無理な目標を設定したところで、目標を達成できないのではないか。それでは意味がないではないか」
そういう反論の声が聞こえてきそうですが、そんなことにならないように、私は目標設定の流れをこのように定義しています。
1. 目的を理解する
2. 目的と整合した目標を設定する
3. 目標達成に向けて手段を洗い出す
4. 手段の実現性を評価する
5. 手段の成果を積み上げることで目標達成できるかを評価する
6. 手段の実行状況を把握するための評価指標を設定する
一番のポイントは「3. 目標達成に向けて手段を洗い出す」です。
ボトムアップとは、手段を積み上げた合算値で目標を設定することで、これとは真逆です。
大切なのは、そうではなく、目標を達成できるまで手段を積み上げ “続ける” ことです。
日本の組織は現場が強いこともあり、まずは手段を積み上げる傾向があります。積み上げないまでも頭の中で想像し、達成できそうな目標を設定します。現状ありきで目標設定するわけです。これでは目指す状況を実現できません。事業であれば株主や投資家は離れていくでしょうし、プロジェクトであれば競争で敗れてしまいます。
「5」で手段を積み上げても目標を達成できないとなれば、「3」に戻って新たな手段を考えることになります。
この方法でパフォーマンスが向上する理由は、ひとえに当事者たちの頑張りや粘り強さを引き出せるからです。ボトムアップ型の場合は、当事者たちが、自分の現在の実力の範囲内で手段を積み上げます。このやり方ではいつになっても殻を破ることはできません。
ところがトップダウン型の場合は、当事者たちは、目標達成のための手段をとことん考え抜くことになります。そこに工夫が生まれ、新たな可能性が広がります。現場は高い目標を設定されるからこそ、殻を破ろうとストレッチするわけです。
パフォーマンスを向上するには新しいチャレンジが必要です。トップダウン型は、チャレンジ精神を引き出します。
私がトップダウン型を選ぶ理由は他にもあります。ボトムアップ型は部分最適に陥りやすいからです。企業や組織に総合力が求められる時代に、部分最適は避けなければなりません。
日本型組織の専売特許である調整型については触れませんが、これはお勧めできません。責任の所在が曖昧になるからです。そもそも “すり合わせ” は目標設定のときにやるものではなく、手段を実行に移す際に威力を発揮するものです。
次回は、目標設定について、さらに具体的に考えていきます。
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