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[計画の技術] 問い掛ける(query) ~問い掛けは計画にリズムを与え、うまい問い掛けは計画に奥行きを与える~

私は計画のポイントを「ODISQ(オーディスク)」と表現します。

O 俯瞰する(overlook)
D  決める(determine)
I  想像する(imagine)
S  構造化する(structure)
Q 問い掛ける(query)

O、D、I、Sについてはすでに説明しました。


今回は「問い掛ける(query)」を深堀します。

複雑に絡み合った事態を紐解くには頭の中を整理する必要がありますが、どこから手をつければいいのかわからないことはよくあります。そんなとき、機知に富んだ問い掛けは効果的です。問い掛けは考える起点を提供するからです。
周囲の人たちから自分に向けた問い掛けでも、周囲の人々の間で交わされる問い掛けでも、はたまた自分自身に向けた問い掛けでも構いません。

例えば、ビジネスシーンでこんな問い掛けがありました。

「お客様は、本当に最先端であることを望んでいるのでしょうか?」
「お客様が望んでいるのは低価格ですか? それとも費用対効果ですか?」
「社外から調達するというのは難しいですか?」
「私たちの強みは本当に技術だけなのでしょうか?」

どれも、新商品開発のための大切な会議の場で出された問い掛けです。
この直前までは単調な議論が続いていました。ある有力者の「わが社は最先端技術で他社を打ち負かすしかない」という発言に迎合して、参加者の意見はひとつの方向に向かっていました。
そんな最中、若手リーダーたちの問い掛けは、過去の成功体験に凝り固まった幹部たちに気づきをもたらし、考えの幅を広げ、議論の方向性に変化をもたらしました。

会議冒頭の「わが社は最先端技術で他社を打ち負かすしかない」という幹部の発言が彼らの自尊心に火をつけた結果、議論は先端技術開発の方向に一直線に向かっていました。
ところが、現実は甘くはありません。議論すればするほど限界が見えてきます。
彼らは、技術力に勝る競争相手を前に意気消沈していました。
そんな矢先、ひとつの問い掛けで議論は一変しました。

「お客様は、本当に最先端であることを望んでいるのでしょうか?」という問い掛けは、競争力の源泉が技術力だけではないことを参加者に気付かせました。
続いて出された3つの問い掛けは、参加者たちに新たな可能性を気付かせるには十分でした。

「仮に圧倒的な技術力を手に入れたとして、私たちは、最先端を維持するために投資を継続しなければなりません。どう考えても、それは厳しくないですか?」
「新製品は、昔ほど、マーケットにインパクトを与えられません。売り上げの伸びは一瞬です」

暫く議論が続きました。

「それで、本当に儲かるのか?」

CFOのこの問い掛けに、参加者は全員「ノー」と答えました。
若手リーダーはもとより長老幹部たちまでもが「ノー」と答えました。
縮小しつつある上位市場にしか向いていなかった幹部たちの目が、すそ野を広げつつある「心の豊かさ」を追求する新市場に向いた瞬間でした。

彼らが出した結論はこうでした。

「私たちは業界標準の技術に積極的に取り込み、これまで培ってきた運用ノウハウを武器に、費用対効果と実効性で他社を差別化する」

会議の結論を受けて作成された事業計画は、これまでとはまったく違うものでした。
事業計画には、彼らの意志がありありと表われていました。

プロジェクトマネジメントのシーンでは、こんな問い掛けがリカバリーの選択肢を広げました。

「開発済みの機器を組み合わせたのではダメですか?」
「ベンダーに依頼できる作業はないですか?」
「試験の順番を入れ替えることはできないのですか?」

問い掛けを持たない計画者の計画は表層的で、すぐに化けの皮が剥がれてしまいます。
しかし、そうは言っても問い掛けが苦手な人はいます。周囲の人たちの中に問い掛けの達人がいるとも限りません。
どうやれば、問い掛け上手になれるのでしょうか。

答えは、皆さんの日常にあります。
常日頃、見聞きすることに疑問をもち、自分なりの考えを巡らすことが大切です。それが、問い掛け上手になる近道です。

さらに、効果的な問い掛けを手に入れるには、情報収集も欠かせません。収集した情報の整合性を評価し、不整合を感じたときに問い掛けは生まれます。この問い掛けがきっかけとなって、更なる情報収集が始まることもあります。

皆さんの問い掛けは、得体の知れない対象物のプロフィールを際立たせてくれるはずです。
優れた計画者は、観察力と柔軟な発想を背景に、たくさんの問い掛けを持っているものです。
がんばりましょう。


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