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「計画の技術」を梃子に繰り返すことで計画力は鍛錬できる(1/2)

事業環境やプロジェクトが複雑化、大規模化した今だからこそ、私たちの計画力は実践の場で常に試されています。計画力のある人や、計画力のある人をたくさん抱え込んでいる組織が成功できる、私たちはそんな時代に生きています。
時代の流れを読むことに長けた世界中のビジネスマンたちは、計画力や概念化力の強化に余念がありません。

ところが、計画力と縁遠いところで成功体験を積んできた日本企業の“現場最優先”の価値観のもと、計画力を磨くのは簡単なことではありません。手本となる人がいないのです。

そうは言っても、日本の組織も徐々に計画力の大切さに気づき始めています。
彼らが先ず手を付けるのは、ガバナンスに働き掛けるやり方です。計画に必要な手順書やルール集を作成し、それらを現場に押し付けるわけです。
ところが、このやり方では計画力は定着しません。

日本のようなガバナンスの効かない組織でガバナンスを当てにした施策を打つことほど、ばかばかしいことはありません。

マイクロソフトに勤め始めたころの私は、このやり方、つまりガバナンスを当てにしたやり方で、多くの人たちの努力を無駄にしました。

苦い経験の後、私はガバナンスに頼らない方法を模索し始めました。


「事業計画で相談したいことがある」

あるIT企業の幹部にそう言われて呼び出されたのは、かれこれ10年以上前のことです。

私  「寒くなってきたし、そろそろ事業計画をまとめ始める時期ですね」
幹部 「そうです。ところが、そのデキが思わしくなんのですよ」
  「皆さん、事業計画を作るのが苦手なようですね」
幹部 「やはりそう思いますか… 新しさがないばかりか具体性にも欠ける。何をしたいのか意思が感じられない」
  「どんなチームで作成しているのですか?」
幹部 「事業部長が中心となって部長クラスや現場のキーマンを招集して作成しているみたいです」
  「事業計画に限らず、私は計画が苦手な人たちをたくさん見てきました」
幹部 「多くはプロジェクトマネージャとして研鑽を積んだ人たちです。計画は得意なはずです」
  「そうですね、プロジェクトマネージャといえば計画のプロです。しかし、事業計画とプロジェクト計画ではまったく要領が違いますから」

幹部の依頼で、私は事業計画の作成を手伝うことになりました。

このようなケースでは、コンサルタントはたいていガバナンスに働き掛けて問題解決を図ります。しかし、私はそうはしませんでした。苦い経験があったからです。

関係者を集めてこれまでの検討内容を共有してもらったとき、私は気付きました。
この問題の根底にあるのは計画力の不足でした。
検討内容にはまとまりがなく、根拠が曖昧なまま放置されていました。結論に辿り着くためのシナリオを尋ねても誰ひとり答えられませんでした。

要するに、無計画に事業計画していたわけです。

数ある計画分野の中でもプロジェクトマネジメントは計画手法が確立されている分野です。
特にPIMBOK(Project Management Body of Knowledge:プロジェクトマネジメント知識体系)ガイドが普及しているIT分野では、これをアレンジしたプロジェクトマネジメント方法論を具備した組織がよくあります。
彼らは優秀なプロジェクトマネージャでしたが、実績のある方法論や積み上げてきた経験でプロジェクトマネジメントをしてきただけで、計画力が身に付いていたわけではありませんでした。

今回、事業計画に参加した人たちがもし計画の達人だったとしたら、計画の対象が何であれ、これほどひどいことにはならなかったはずです。

ガバナンスに頼らないと決めた私は、時間がかかることを承知で、寄り添いによる計画力の底上げに取り組みしました。

「ひとりひとりに働き掛けて計画力をボトムアップで盛り上げる」

これが私のやり方でした。
幹部には事情を説明し、今回の事業計画はあきらめてもらいました。もちろん、翌年の事業計画を期待してのことです。

次回は「計画の技術」の話です。
計画力を強化するには、計画を繰り返して勘を養うのが一番です。ところが、何事もそうですが、当てもなく繰り返したところで進歩のスピードは知れています。繰り返すには柱となる手順が必要です。
「計画の技術」はその “柱” に相当するもので、恐らく皆さんの想像よりもはるかにシンプルです。
楽しみにしていてください。


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