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l Love You and Yours【お気に入り保存箱】

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また読み直したいものを勝手に放り込んでゆくところです。 勝手に入れますが、御容赦ください。
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#詩のようなもの

眠れる椅子

眠れる椅子

もうこの脚では
人間たちの苦悩も
憂鬱も支えられないからと
粗大ゴミとして
収集場所で寝転んだ日
椅子は初めて
空の青さを知った

これで安らかに眠れる
本当に美しいものを
目の当たりにして
心に何の澱みもなく
終わりを迎えられる

椅子の脚が
ほんの少しだけ震えているのを
隣に立て掛けられた
ハンディ掃除機は見ていたが
そっとしておいてやる事にした
存分に働いたんだ
椅子にだって夢見る権利はある

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【詩】夢の跡

色とりどりの喧噪が
数多沸き立つ空間で

たった一つ
心に届いたあなたの声に
そっと寄り添う夢を見た

届く言葉の
人恋しい切なさに
そっと甘える夢を見た

差し出す手の
温もりの誠さに
そっと安らぐ夢を見た

夢と知って夢を見た

覚めると知って夢を見た

今どうしていますか

【詩】霧氷

【詩】霧氷


枝に寄り添う霧氷が
眩しそうに輝きながら
溶けてゆく

散りゆく姿の可憐さに
そっと沸き立つ微笑みの
響き渡る暖かさ

いつしか笑顔は
するものになっていた
型にはまった笑い顔
奥底が冷えていく

綺麗なだけではない日々で
そういう時は
心が喜ぶものを探して

男の子ってバカみたい

ちんちんが付いているのは
恥ずかしい事でもなんでもないのですよ、と
シスターはロッテに語ったが
彼女は納得しなかった

どうしてこうも
美しくデザインされた人体に
こんなにも不恰好な角が
取り付けられなければならなかったのか
神を模して作られたはずの形の
なんという欠陥

ロッテの不満が
神への不信の域にまで達しようとしていた頃
隣ではイサークが鼻水を垂らしていて
彼女はハンカチで丁寧にそれを拭い

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春雷

春雷

薄曇りの街を引き裂いて
季節はめくられていく
眠っていた赤ん坊が
火のついたように歌い出す

明日の雨さえ幸福へ繋がっているのだと
渡り鳥は語った 強い眼差しのまま

アナトミー

アナトミー

詩の
内臓に触れてみる
生暖かく
まだ脈打っている

こんなところでお前は
言葉を繋げていたんだね

蝿が
残躯に寄り添う
彼もまた
詩人だった

【詩】路地

【詩】路地

あの角を曲がった路地は
名残り道

心澄ませば
灯る記憶のまぶしさに
歩が緩まる 名残り道


ずっとずっとが無いように
あの先からは一人道

夢から覚めて振り向けば
足跡だけはついてくる

あの頃があるから今がある
そういってずっと続いてくる

【詩】月の跡

【詩】月の跡

待つ夜に 残るは 消えゆく 月の跡


軋む心に流れるは
今では雫となった笑い声

舞うリズムに弾んだ言葉も
過ぎた夜更けの露となり


あの日の月は もう昇らない
それでも夜はやってくる

約束の時間
今でも 見えない月を見る

詩 「生きるってもどかしい」

詩 「生きるってもどかしい」

眠りたいより

眠りたくないのほうが

眠れる

帰りたいより

帰りたくないのほうが

帰れる

おなかペコペコより

おなかまあまあペコのほうが

食べられる

がんばってより

がんばらないでのほうが

がんばれる

会いたいより

会いたくないのほうが

会える

ヤバそうより

ヤバくなさそうのほうが

ヤバい

エロそうより

エロくなさそうのほうが

エロい

休みたいより

休みた

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詩 「わけわからん」

詩 「わけわからん」

なんだコレ 
わけわからん

どの角度から眺めても 
わけわからん

でも 
なんでしょう

この胸の 
ときめきは

こころの 
ざわめきは

わけわからんものが
わけわかるようになったら
ちょっとさみしい

わけわからんものが
わけわからんかった頃の
自分が懐かしい

わけわからんを
さがして生きていくのだ
どこまでも

詩 「いま、なにしてる」

詩 「いま、なにしてる」

いま、なにしてる?とか
来週の金曜、暇?とか

まずは
きみが何をしているのかを
言ってくれたまえ

または
その日に何をしたいのか言いなさい
きみが先に言いなさい

きみはわたしが暇だと知ったら
何を言い出すつもりなんだね

それとも
きみとわたしで
何してるかな問答でも
はじめるつもりかね

しかし
まあ
声をかけてくれたことは
ありがとう

しかしだな
わたしが何をしているか
言うつもりはな

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