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スノーボードがぼくにくれたもの


今回はさらっと書いてみよう。

今日、僕は朝寝坊した。ちょっと意図的な寝坊だ。
朝イチからウィスラーで滑り、午後からはバンクーバーに行こうと思っていた。
でもなんとなくのんびりした朝を過ごしたい気持ちもあったりして、起きた気分に任せることにした。

朝目を覚まし、隣で気持ちよさそうに寝ているパートナーの横顔をみて、
もう少しこのままベッドに入っていようと決めた。そしてそのおかげもあり、
今こうしてこの文章を書いている。

こうした瞬間もスノーボードがくれたものかもしれない。
というわけで、スノーボードが僕にくれたものについて少し考えてみたい。

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冬に本格的にスノーボードをするようになって5年がたった。
この「本格的に」というのは、「ライフスタイルとして日常的にスノーボードをするようになって」ということだ。

僕は決してスノーボードがめっちゃくちゃ上手なわけでもないし、スノーボードのカルチャーや歴史ついてよく知っているわけでもない。ただ単純に、スノーボードで山を滑る感覚がとても楽しいし、冬が以前よりもだんぜん愛おしくなり、スノーボードが僕にくれたものに感謝している。というだけだ。

始めてスノーボードをしたのは12歳の時だったけど、そのぐらいの時は年に1、2回家族旅行として行く程度だった。
大人になってからは旅やクライミングをする事が楽しくて、知らない土地へ旅をしたり、冬はおもに「暖かい」場所をさがしてのロッククライミング、もしくはたまにアイスクライミングにいっていた。冬の暖かい日差しの湯河原が懐かしい。


そんな中でスノーボードをたくさんする機会に恵まれたのは、5年前に仕事の関係でたまたまスキー場の近くに住んだのがきっかけだった。そこで人生で初めてのスキー場のシーズン券をゲットしたのだ。

その地方にあるスキー場はとても小さく、お世辞にも雪が豊富な場所とは言えなかったけど、仕事前に何か新しくワクワクすることをするには十分すぎた。
しかも、ありがたいことにその年は比較的、降雪量が多い年だった。

朝起きて、仕事前に数本滑って、スナックをかじりながら仕事に向かう。
そうして始まった日は一日中ワクワク、ソワソワした気持ちに溢れていたのを覚えている。次の日も楽しみで仕方がなかったからだ。

スキー場のシーズン券は僕の人生を変えてしまった、
と言ってもいいのかもしれない。

ここで言っておくと、僕は暗いうちに起きるのはどちらかというと苦手だ。
今もそれはあまり変わらないが、まだ暗い中早起きをして、スキー場に向かう時に見る朝焼けは神秘的で、早起きも悪くないなといつも思わせてくれる。
(といってもやっぱり何もなければ僕はのんびりした朝が好きなのだけど。)

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雪は僕たちに、静寂と白銀の別次元の美しさとも言える世界をくれる。

町や山が雪に覆われるだけで、なぜこんなにも違う場所に見えるのはなぜだろう。
日本語にある雪化粧という言葉は、いかに昔の日本の人が自然を身近に、肌感覚で捉えていたかを感じさせてくれる言葉だと思う。

始めてパウダースノーを滑ったときは、腹の底から喜びがこみ上げてきた。
なんとも言えない浮遊感と山での自由を感じたからだろう。空を飛んでいるようでもあるし、自分と重力との関係性が少し変わったようなそんな感覚。

始めてツリーランをうまくできるようになったときは、自分が少し野生動物になれたような気がした。森の中を素早く縫うように移動する、鹿たちの感覚を垣間見れた気がしたからだろう。雪さえあれば彼らと並走して森の中を走る事ができる。
そう思わせてくれる。

ひろーく開けた斜面を滑るときの爽快感を感じた時、僕は山の地形でサーフィンをしているような感覚になった。一つ一つの地形に意味があり、まるで僕が喜びを得るためにその地形が存在してくれているかのように感じたのだ。


あと、これまでのクライミングのコミュニティとは違う仲間にも出会えたし、
旅で訪れたくなる場所も、今までの選び方とは変わった。
雪国のチョイスが多くなったせいで、ひなびた温泉旅館や秘湯、日本酒、雪国郷土料理にふれるチャンスも増えた。おいしいお蕎麦も忘れてはいけない。


季節や天候の好みにも影響があった。
それまでの一番のお気に入りの季節は夏だったのだけど、冬も同じぐらい待ち遠しくなったし、秋には雨の多いスコーミッシュだけど、冬と夏が忙しい分、秋は少しスローダウンして、ヨガをしたり、サワードウパンを作ってみようとかという気にもなる。また、町の雨の日は山は雪なのでパウダースノーへの期待が高まり、町が晴れの日はどこでも清々しく、クライミングやただ散歩するだけでも気持ちいい。

つまり、スノーボードを始めたおかげでワクワクしない天候や季節がかなり減ったということになる。人生におけるギフトと僕には思える。


ーー

他にも変化はあった。
それは日本に生まれたことへの感謝の気持ちと誇りが芽生えたことだ。

というのも、カナダも含めウィンタースポーツが好きな人の間では、
実は「日本のパウダースノー」はとても有名だ。(通称 : Japowと呼ばれる)

ただ有名なのではなく、雪質、降雪量、スキー場の値段、温泉、日本酒、土着の文化などを含めて、憧れを抱かれる場所にもなっている。日本で一度は滑ってみたい、という人には本当によく出会う。日本のパウダースノーを味わうのが自分のスキー人生のゴールという人もいた。

北米の雑誌でも「世界におけるパウダースノーの首都!」と表紙にかかれたスキー雑誌もあったりして、Youtubeなどでも少し検索してみみれば、いかに日本以外の国の人たちが日本でスキーすることについてエキサイティングしているかがわかるだろう。

そしてそんなときに、そんな国にいつでも住むことができて、かつその国でしかはなされていない言語がわかることに、とても感謝を覚えるのである。


日本と日本文化、山と雪への感謝。腹の底からの喜び、野生的感覚、自由な感覚。
全天候型のジンセイ。

これがスノーボードがくれたもの、と言えそうだ。
とまぁあくまでもそれは、これまでの友人、旅やアウトドアの経験があってのものなんだけど。

今年もまだ国外には中々簡単には行けそうもない。
でも、その国外の人が憧れるものが日本にはある。あらためてそういったものを今追求してみるのも悪くないかもしれない。

今の僕が憧れる場所、それはまぎれもなく日本の冬だ。
いつまでも雪が降り続くことを祈りつつ、少し遅めの朝ごはんを食べるとしよう。

それではまた。







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