見出し画像

筋肉の張り解消法ー上行路の仕組みその1


下行性鎮痛システム 

筋肉の張りを和らげる方法は、体内にも「下行性鎮痛システム」と呼ばれる仕組みがあります。筋肉の張りの情報は脊髄に入り、脳に伝達する途中に「脳幹」にも情報伝達します。脳幹は脊髄の上にあり、脳の方から「中脳」」「橋(きょう)」「延髄」に分かれています。
 中脳には脳脊髄液が通る水道管があり、この周辺にはたくさんの「神経核」(神経細胞の集まり)があります。ここを「中脳水道周囲灰白質」(Periaqueductal gray: PAG)と呼び、筋肉の張りの情報で活性されたならPAGは橋(きょう)に位置する「青色の」神経核を活性させます。この神経核を「青斑核」(Locus coeruleus)と呼び、青斑核は「ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)」を放出します。ノルエピネフリンは「エピネフリン(アドレナリン)」に変化し、脳内の意識レベルや記憶、感情の調節に関係していることから「脳内調節」(Neuromodulator)とも呼ばれています。ノルエピネフリンは「ドーパミン」にも変化します。
 PAGは延髄に位置する「大縫線核」(Nucleus raphe magnus)も活性します。大縫線核は「セラトニン」を放出します。青斑核からのノルエピネフリンと大縫線核からのセラトニンは、筋肉の張りの情報が入る脊髄に「下行」します。ちなみに脳から脊髄への回路を下行、脊髄から脳への回路を上行と呼びます。
 ノルエピネフリンとセラトニンの下行神経は脊髄で介在神経に接触し、筋肉の張りの情報を抑制します。ノルエピネフリンとセラトニンによって活性した介在神経は、「GABA」(抑制伝達物質)でなく「脳内オピオイド」を放出し、シナプスの活動電位を抑制します。脳内オピオイドは「エンケファリン」「エンドルフィン」「ダイノルフィン」があり、シナプス前抑制だけでなくシナプス後抑制にも働き、つまりシナプス全体の伝達を抑制します。

ここから先は

1,695字 / 2画像 / 1ファイル

スポーツの試合の後、肩や腰、でん部などの筋肉が張り、動くどころか起き上がることもままならないことがあります。 シーズン中なら次の試合のスケ…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?