自分より優れた人材を育成する
リーダーの究極の目標
自分より優れた人材を育成する
人はいつか老いて消えゆくものである。従って「自分の理念を後世に伝えたい」、つまり「自分の会社・店舗を存続させたい」と願うのであれば、それを受け継ぐ事の出来る人材を育成しなければならない。子が親を越えていくように、会社・店舗でも世代交代は必ずやってくる。つまり、『自分より優れた人材を育てる』事は、飲食店経営者にとっては当然の事である。もはや義務であるといってもよい。金銭欲や名誉欲よりも、会社の理念、即ち己の社会的意義のある人生哲学を優先させる志の高い崇高な人間性を持った飲食店経営者にとっては、切っても切り離す事の出来ない使命であるとも言える。従ってこの本では、『自分より優れた人材を育てる』を飲食店経営者にとって究極の、そしてまさに最終的なゴールと定義づける事にする。
ここで一つ、中国の偉大なる哲学者『老子』の、「最高のリーダー像」についての言葉を紹介しよう。
『太上(たいじょう)は下(しも)これあるを知(し)るのみ』
〈訳〉
最も優秀なリーダーは、自分の働きを人民に知らさない。人民は、ただそのリーダーがいる事を知っているだけだ。次に優れたリーダーは、人民に親しまれ褒め称えられ愛される。それより劣るリーダーは、人民に対して厳しくし恐れられる。一番駄目なリーダーは、人民に馬鹿にされ軽蔑される。リーダーに誠実さが欠けていれば、人民からは信用されなくなる。リーダーが人民を信じなくなると、言葉や規則ばかり作って、人民を管理しようとする。
最高のリーダーは、治める事に成功したら後は退いて静かにしている。すると人民はその成功を、「自分達の手で作り上げたのだ!」と思うようになる。
これが老子の自然に基づく政治であり、会社でも家庭でも同じ様に通じる事である。これに似た様な話で、中世のヨーロッパの将軍が自分の息子に言った言葉に、このような言葉がある。
「息子よ、もしおまえが最高のリーダーになりたいのであれば、他の誰よりも優れた知識と武力を身につけよ。しかし、決してそれを家臣に知らせてはならぬ。さすればおまえは、最高のリーダーとなるであろう!」
これらの教訓によると、リーダーが最良の結果を生む為には、自らの職務(社会的に意義があり、人々にとって魅力的である理念を持ち、一貫して明確で分かり易いビジョンを用いて人々をゴールへと導いていく仕事)において、誰よりも卓越した能力を身につけるべく、ありとあらゆる情報を可能な限り自らの知識に変換するために、常に脳のアンテナを張り巡らし、常に学習し、精神的にそして人間的に向上していかなくてはならない。
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