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【音楽連載】旅する輪ちゃんドタバタ劇場 vol.3|音楽と文:輪(りん)@石垣島|「あのこ」

前回の広島のライブでふと出てきた言葉「私が歌うことで世界が平和に近づくわけはないけれど、今、目の前にいる人たちと今ある幸せをかみしめられたらいいなあ」。

そうそう、歌う意味ってそんなことだった、と再確認した旅する輪ちゃんです。

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今回は30歳で初めてのアジアの長旅に出た時の話。
神戸から上海に向けての片道切符で船に乗ったのだった~。

中国人だらけの船に乗り込んだら、さっそく異国だった。
まる二日間の航海中、同じ部屋の中国人のおばさんがとても親切に中国語を教えてくれたり、船を降りた後も、駅まで連れてってくれたりした。
中国の人たちって一緒に居合わせた同士すぐに仲良くなって、電車のボックス席でトランプやったりしてるんだけど、聞いたら初対面だということでびっくりすることがよくあった。
私もその仲間に入れてもらったり、バスの移動中に、お菓子が私に向けてたくさん回ってきたり(鶏の足の酢漬けみたいのもあったなぁ)と、笑っちゃうことがいっぱいあった。
それから電車の中でゆで卵食べてたり、おじさんはかばんに爪切りのキーホルダーをぶらさげていたり、きれいなお姉さんのバッグから大容量のひまわりの種(もちろん食べる用)が出てくるとこなんかおもしろかった。

日本人の私に対してとても友好的だし、興味津々のようだった。日本にいると中国に対してなんとなくネガティブなイメージがあるけど、現地に立つと、ガラっと覆されるので、行ってみるのおすすめです。
もちろんごはんは美味しいしね。

ユースホステルの洗面台でカメを飼ってる人がいたのは驚きでしたが、、、固定概念覆されます!

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そんなこんなで目からウロコで刺激的な中国を抜け、ラオス、ベトナム、カンボジア、タイ、マ レーシア、インドネシアと陸路で移動。
バスの中で知り合ったヨーロッパの人たちと仲良くなって部屋をシェアして数日一緒に過ごしたり、現地の同年代の女の子と仲良くなって家に泊めてもらったり、大学に連れて行ってもらったり(あ、その子が関わっているスラムの子たちのとこで歌ったりもした)。
トレッキングツアー会社の事務所に住まわせてもらいながらボランティアで壁に絵を描いたり、リフォーム中のゲストハウスに安く泊めてもらいながら、壁のペンキ塗りを手伝ったり。
まあ、日本にいたら起り得ないようなことがたくさんあった。

ひとり旅だからこそ、いつも誰かと一緒にいて、バイバイして・・・のくりかえし。ここまでが3か月間。いろいろあったけど、さささと進んで、今回 お話したいのは、タイでのこと!

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海外旅行保険も3ヵ月しかかけてこなかったし、お金も底をついた(どうやらどこかで盗まれたらしいが、ぼーっとしている私には定かではない)。そろそろ帰ろうかな~、っと思っていたころ。
怪しげなおっちゃんが教えてくれた猫臭いバンコクの安宿(当時350円)。にて、日本人でサムライ姿の流し(居酒屋に突然来て歌ってチップで収入を得てる人)に出会ってしまったのです。

そこからは流しの仕事に付いていきながら、毎日の歌の特訓がスタート。
気付けば「私もやってみたい!」と浴衣姿でギターを持って、居酒屋の戸を叩いたのでした。「これが出来たら世界中どこでも生きていける!」と思ったのが動機でした。

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そうそう、この旅はね、ギターを持たずに始まった。
というか、 しばらく歌う気になれない時期だったんだけど、旅の途中、仲良くなったオランダ人の男の子二人組に、英語で気持ちが伝えられないもどかしさに、ええい歌ってしまえーとなり、おもちゃみたいなギターを買って歌い始めたのです。
その後、タイ人のミュージシャンと出会い、お古のギターを売っても らった。そのギターで流しを始めました。
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初出勤の日、浴衣姿にばっちりメイクで、行きのタクシー代だけ持ち、稼がないと帰って来られないところまで自分を追い込み、タクシーに乗り込んだ。行き先は日本人の駐在員やお金持ちのタイ人が集まる飲み屋街。選曲はみんながよく知っている中島みゆきやユーミン、意外とタイ人が知っている曲も多く「昴」や「涙そうそう」なんかも。それから大ウケだったのは、日本のアニソンメドレー(一休さん、ちびまる子ちゃん、クレヨンしんちゃん、ドラえもん)。

タイ人て若い子からおじさんおばさんまでノリがよくって、一緒に歌ったり踊ったりしてくれてとっても楽しかった。ぼったくってくるので有名なトゥクトゥク(三輪タクシー)のおじちゃんが ただで乗せてくれるという信じられないことが起こったり、夜遅くなり知らない人の家に泊めてもらったり、夜の街にひとりでも、怖いものなしだったなあ。

タクシーの運ちゃんは英語が喋れないことが多いから、タイ語も覚えたし、昼間はひたすら歌の練習。夜には本番で、お客さんが喜んでくれた分だけ、チップとなって返ってくるから、評価がわかりやすい。
そうして毎日、今日はこれをやってみよう、とタイの曲を覚えたり、自分のオリジナル曲をタイ語に訳して歌ったり・・・
お金もなかったし、誰も自分のことを知らない土地だから、失うものは何もなくて、今日食べるためのお金を稼ぐ、という綱渡りの日々は、「生きてる!」って強く実感出来て、まさに遅くきた青春だった。

最初はドッキドキだったけど、飛び込んでみるといつも、世界は温かく迎えてくれて、みんな喜んでくれたんだ~。



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それから場所を変えて、南のほうの島でも、マーケットの特設ステージで歌ったり、北のチェンマイでは毎週、バーやホテルで歌わせてもらったりした。そんなこんなで長くなっちゃったのでいきなり終わりますが、実は、チェンマイのほうで開催されている音楽フェスに、今年、出られることになりました!
そんなわけでこの記事がアップされてすぐ、タイに飛びます。

来月号はもちろんそちらのレポートを。お楽しみに!

曲は、10年前のお宝映像(?)。バンコクであった日本人が企画したお祭りで、タイの民族衣装を借りて着ました。今聴くと下手くそですが、オリジナル曲『あのこ』を一部タイ語に訳して歌っています。


この記事を書いた人

旅する輪(りん)ちゃん

神奈川県出身。東南アジア、インド、ヨーロッパの旅の末、沖縄県石垣島に流れ着く。自分自身と世界に「こんにちは」を言うために。旅、ふるさと、身近な自然と内なる自然をテーマにしたオリジナル曲の他、金子みすゞや谷川俊太郎の詩に曲を付けたり、色んな国の歌を歌う。各種音楽配信サービスで、石垣島でレコーディングした2ndアルバム『渡り鳥のうた』が聴けます。2022年から自宅ガレージを改装したお店「なずな文庫」で自分にちょうどいい働き方を模索しながら、「楽しい」「わくわく」「大好き」をひそかに発信しています。


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