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【エッセイ】石垣島の食べ物や飲食店は美味しいのか?|柔術家/歌手/海人の独り言 |文:渡辺直由@石垣島

今回はなかなかストレートには書きづらく、しかしよく話題に上がる
《石垣島の食べ物や飲食店は美味しいのか?》についての私見と持論を展開しようと思います。

私の友人知人から聞く感じでは
ざっくりで7割〜8割が「美味しい」で
残りが「美味しくない」でした。

ちなみに私は忖度なしで、平均したら全体的に美味しいと思います。

まず《美味しい不味いに完全な正解は無い》を前提として
それでもなお客観的に私なりの正解を探してみたいと思います。

美味しい/不味い←には先入観や期待しているモノがかなり関係している話

今回のテーマとその答えに既にお気付きの方もいるかも知れないと思いますが、まず何かを食べたいと思った時に私達はその食べ物を想像します。

そしてその食べ物の味が想像と大きく外れていた場合や「焼肉を食べよう!」と思っていたらお店が休みでイキナリ中華料理に変更になった場合など、もう脳内や舌が焼肉になってしまい
どんな高級で美味しい中華を食べてもガッカリして美味しさが半減する…なんて経験は皆さんなかったでしょうか?

そんな感じで誤解と先入観で行き違いが生じることほど双方にとって勿体ないものはないで、私はこの《誤解を無くすため》にこの記事を書きました。

島の人と内地の人の感覚の違い

去年の夏、ある決定的な出来事がありました。

内地から観光で来島したある先輩が
島の人が経営するマリンレジャーに参加し、その時にあるお店を紹介されたそうで「凄く美味しいお店があると聞いたからナベちゃんも行かない?」と言われたので予定もなかった私は二つ返事で先輩との待ち合わせ場所に行きました。

「この辺の筈だけどな〜、ナベちゃんわからない?」と聞かれましたが
この辺にいわゆるご馳走と呼べるようなお店はなく、、、。

スマホのGoogleマップとにらめっこしながらウロウロする先輩が「おお、ここだここ!」と言った場所
…そこは、、、
私はちょっと驚くと共に焦りました。

確かに、このお店は美味しい!

しかし美味しさの種類が先輩が私に語る(イコール観光客が期待する)種類のお店ではないのです。

そこのお店は毎週とか、週に3回とか食べたい類の日常的に通いたい系の美味しさであり、たまーに旅先とか特別な日に食べたいようなモノではなかったのです。

尚且つ内地にもある形態のお店やメニューで
数日間しか島にいない人が求めるタイプのスペシャルなお店ではありませんでした。

先輩は「まあ島ではこれくらいのお店しか無いんだろうな〜…」と。

僕は凄く残念でした(涙)

「いや、違うんです先輩、この店もめちゃめちゃ美味いんだけど、先輩が今日、この日、この瞬間に求める類の美味しさとのギャップなんですよ」と言いたかったです。
※後日説明したら納得していました。

これは誰が悪いわけでもありません。

島に12年住む私にはそのお店の美味しさや価値はめちゃめちゃわかりますし
島の人の感覚からしたら絶対にオススメします。

しかし内地の先輩からしたら旅先に来て期待する食べ物とは違うわけです。

こういった誤解、お互いの感覚の違いから「石垣島のご飯は美味しくない」と思われてしまう事が確かにあるのです。

これは本当に勿体無い事であります。

だって本当は石垣島のご飯は平均したら凄く美味しいのに。

先入観や期待するものによって味の感じ方が違うと思い始めた話

少し遡りますが
私がそれに気付き始めたキッカケの話をします。

とある昔から島の人に人気のラーメン屋さんがあります。

正直私はそこの何が美味しいのかサッパリわかりませんでした。

でも島の先輩たちによく連れて行かれるので仕方なく食べていたのです。

で、話は少し飛びますが
私には究極の山羊汁を作ってくれる島の先輩がいます。

この山羊汁は良い意味で臭くて濃くて最高でして
他にもその先輩が作る鍋や汁物の出汁は最高なのです。

ある日その先輩が「◯◯のラーメンよ、まーさん(美味しい)さ!あの出汁よ、あんなそばの出汁わん(俺)にも作れんど!あの出汁にそば入れたら最高さ」と言っていて「へ?あの舌の肥えた◯◯にーがあのラーメンが美味しいなんてまさか…」と思い
次にそのラーメン屋を訪れた時に
「もしこれがラーメンではなくて八重山そばだったら」を想像しながら食べたら
確かに美味いかも!と思えたのです。

内地の美味しいラーメン像を追い求めて食べたそのラーメンは確かに美味しくないですが
八重山そばを基準に考えたその出汁は凄く美味しいのです。

あとは刺身ですね。

内地の人は沖縄の魚の刺身を不味いと言いますが
これも先入観と、あとは“食べ方の違い”ですね。

内地では基本的に刺し身は数切れしか食べないので脂っこかったり味が濃いものが好まれます。

しかし私は沖縄のサッパリした魚やマグロを山盛りにして
醤油だけでなく酢醤油やマヨネーズ
島唐辛子などなど
味変して沢山食べるのが好きで
内地の魚の刺身はちょっとしか食べられないので実はあんまり好きではない…と言うか、どうしても物足りなさを感じてしまうのでした。
※焼き魚は内地の魚の方が好きです。

ご馳走と日常的なご飯

私は石垣に来る前は華やかな業界にもいたので
いわゆる“ご馳走”的なものは結構食べてきました。

対して石垣に来てからは見習いレベルの漁業者をして来た期間が長かったので稼ぎも少なく、あまり高級店には行っていませんから
正直わかりませんが
多分、一夜限りのご馳走に関しては東京の方が美味しいお店が多いです。

あれだけの人口がいるのですから当たり前ですよね。

しかし日常的に食べられるご飯の美味しさに関して石垣島は大都会にも全く負けていません。

これは凄い事だと私は思っています。

例えば私は
人生の最後に卵納豆を食べたいくらい
卵納豆が好きですし
卵納豆は世界一美味いと思ってますが
卵納豆は値段も安いし希少価値がないので《ご馳走》とは呼べませんし
先輩にご馳走連れてってやると言われて
卵納豆が出てきたら凹みますし
初デートで卵納豆だったら
その女の子との次は無いでしょう(笑)

でも卵納豆が凄く貴重なモノで
1杯3万くらいしたら
高級焼肉や高級寿司と並ぶかそれ以上のご馳走にもなるし
デートで卵納豆もありな世の中になると思っています。

だからそんな人間が決めた価値や常識には私にはあんまり意味がなくて
たまたま希少価値やご馳走感は薄くても
本当の本質的な意味で
石垣島には牛そばや八重山そばや島の伝統料理や近年出来たオリジナル料理など
素晴らしいものが沢山あるので
内地のリッチな方々が求めるグルメとの温度差を埋められたら
石垣島はグルメの聖地として今まで以上に栄えると確信しております。

数年前に出来たウシノカドデさんの石垣牛あぶらそばや
一休食堂さんや新川食堂さんを始めとした八重山発祥の牛そば
平良商店さんのソーキそばなどは
内地の友達を連れていくと高確率で中毒になってしまうほどで
東京にいる時も毎日思い出してしまいます(笑)

そうそう
あと海神祭の時期にハーリー屋でふるまわれる本マグロの頭を使ったそば。

あれは地球上で最も美味いもののひとつで1杯30,000円でも50,000円でも食べる価値があると思います。

要はそれをブランディングして宣伝するかどうかではないでしょうか。

石垣島のグルメはまだまだ先入観で気付かない部分や、固定観念により封じ込められていて掘り起こされていない金脈があると思うので
島の人と内地の人
そしてその間にいる私のような人間でアイデアを出し合えば、もっともっと大ブレイクしそうな予感がします。


この記事を書いた人

渡辺直由(柔術家/歌手/海人)
1975年8月4日生まれ。東京都出身。19歳でメジャーレーベルから歌手デビュー。2004年に盟友早川光由と共にトライフォース柔術を創設。柔術世界選手権や欧州選手権、プロの舞台でも活躍。2011年に現役を退き憧れの八重山に移住。電灯潜り漁師(現在休業中)を経て2022年6月に美崎町にカラオケ&弾き語りバー《アームバー》をOPEN。現在も代表としてトライフォース石垣島支部で柔術クラスを持ち、後進の育成に努めている。


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