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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説

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フリムンという言葉は沖縄の方言で、バカ・愚か者という意味で使われる。この物語は、日本最南端の石垣島に生まれ、後に全日本空手道選手権大会を制する田福雄市氏の空手人生、そしてフリムン…
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【自伝小説】第1話 幼少時代(1) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島  

【自伝小説】第1話 幼少時代(1) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島  

空手フリムンとは?

フリムンという言葉は沖縄の方言で、バカ・愚か者という意味で使われる。この物語は、日本最南端の石垣島に生まれ、後に全日本空手道選手権大会を制する田福雄市氏の空手人生、そしてフリムンな半生(または反省)を描いたノンフィクション作品である。
(記:月刊まーる編集部)

序章

 巨木がひしめく森で視界を遮られ、天を仰いだその視線の先から僅かに覗く星空に思いを馳せる。そんな表現が適切

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【自伝小説】第2話 小学校時代(2) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第2話 小学校時代(2) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

血ぃーごーごー事件

 突然、辺り一面に悲鳴がこだました。そこは某小学校のグラウンド。少年野球チーム、「武蔵」の本拠地だった。まだ5年生ながら、そのチームのキャプテンを務めていた少年。

その日は練習日ではなかったが、気の合う仲間たちと休日を楽しんでいた時に事件は起きた。

 当時、その学校のバックネットは、4m程の角材に緑色の網を縛り付けただけの即席ネットであった。そんな弱々しいバックネットに、

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【自伝小説】第3話 中学校時代(3)最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第3話 中学校時代(3)最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

実戦の定義いきなり始まった代表戦。二人を取り囲んだ敵側の仲間が、少年にのみ次々と罵声を浴びせてきた。

これ以上の恐怖は他にない。しかし、何もしなければフルボッコは確実だ。

少年は仕方なくジークンドー(李小龍が考案した武術)のサイドキック(足刀横蹴り)を繰り出した。

だが、いつもよりスピード、タイミング、角度までもがイマイチだ。

足がすくんでいるのだから当然だ。

直後、その空手野郎が「フシ

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【自伝小説】第3話 中学校時代(4)最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第3話 中学校時代(4)最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

警察故事「オワタ」
「完全にオワタ」

少年は心の中でそう呟きながら、人生初となるパトカーの後部座席に身を委ねた。

そして、署でおまわりさんにこっぴどく叱られた後、保護者に連絡を取るため自宅の電話番号を聞き出された。

時計の針は既に深夜を指していたが、寝ているはずの祖母の事を思いながら、泣く泣く電話番号をおまわりさんに告げた。

それから僅か数分後の事であった。

「いや…あの……」「〇×▼※

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【自伝小説】第4話 高校編(1)|最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第4話 高校編(1)|最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

FIRST LOVE(初恋)

何だかんだあった中学校生活(あり過ぎやっ)、

入試直前に「深夜徘徊」と「無免許運転」で補導されたにも関わらず、奇跡的に県立Y高に入学する事ができたのは、これが初犯であった事と、先生方へのウケが良かった事などが上げられよう。

昔からよくトラブルに巻き込まれてはいたものの、平和主義で揉め事が嫌いだった少年。それを先生方はキチンと見抜いてくれていたのだ。

ただ、そん

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