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[ポエム] 好転

友人がだしぬけに僕にこう言った。

[僕が間違っていた]と。

[僕は大馬鹿者だった]と。

[僕は考えることが得意なのだ]と。

実際彼は[自分を信じ過ぎていた]のだ。

出た結果。

それは揺るぎない真実。

不動で絶対的。

それを信じて損ずることはない。

いや却って僕を気楽にしてくれる。

とそう信じていた。

狂信していた。

それはまがいもない真実であると。

錯誤すると例外なく人は。

[疑念から自分を恨んでしまう]と。

そして何よりも。

彼は、[流動的なもの]を恐れていた。

本当のところそれが彼の間違いであった。

彼はどうやら先程旅の支度をしていたらしい。

そして彼は無鉄砲にそれをしていたらしい。

しかし、どうやらその時に。

彼はある何かを頼りにしていた。

それは、[流動的なもの]だったのだ。

彼は本当に、[流動的なもの]を恐れていた。

取り止めのないそういうものを。

彼は、[面倒で危険なもの]と。

彼はまたそう狂信していた。

しかし彼は気付いた。

それはまさしく神託のようであった。

自分は小心者だった。

そう思った。

それに気付いてしまった。

がしかし、何も[彼は愚か]だ。

とそう言いたいのではない。

そんな軽易なつまらぬことなど言いたくない。

僕はただ彼は[利口な臆病者]であった。

とそう言いたいのだ。

彼は今狂喜しているようだった。

必死に喜びを制止しているようであった。

彼のそれとは何か。

すなわちそれは。

[自分を好きなになった]という。

純粋な自尊なのであった。



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