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どんなに準備をしても覚悟をしても、現実はまったくその通りにならないという当たり前のことが、ベテラン暗殺者をとても人間臭く見せていた『ザ・キラー』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:145/161
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:アメリカ
  製作年:2023年
  製作国:日本
   配信:Netflix
 上映時間:113分
 ジャンル:サスペンス
元ネタなど:グラフィックノベル『The Killer』(1998-)

【あらすじ】

※MOVIE WALKERと公式サイトの文章を元に記載。
孤独で冷徹、几帳面で良心の呵責もない暗殺者(マイケル・ファスベンダー)。だが、とある任務の失敗により岐路に立たされることに。

世界中で追跡劇を繰り広げる彼は、それが敵討ちであっても目的遂行に個人的な感情を持ち込まないよう自分自身と闘い続けるが……。

【感想】

SNSで評判がよかったので観てみました。キャラクターの描き方はすごくよかったのですが、個人的には世間で言うほどにはハマらず。。。(笑)暗殺者を主人公にした映画ではあるものの、アクションシーンははあんまりなく、デヴィッド・フィンチャー監督らしいサスペンス色の強い作品でしたね。

<誰にでもミスはある>

この映画で印象的だったのは、やはり主人公である暗殺者のキャラクターです。彼はものすごくプロ意識が高いんですよ。「すべては準備次第。抜かりなく徹底して無駄を省く」と、自分でも言うように、入念に準備を行い、コンディションを整え、いつでも任務をこなせるよう万全を期しています。

ところが、である。まさかのミスを犯し、ターゲット殺し損ねてしまうんですよね。確かにターゲットの側には第三者がいて、標準を合わせづらい状況ではありました。とはいえ、ここまで真面目で完璧主義者であるような人物からしたら、たったそれだけのことでミスをするとは思えませんし、ましてやそれを失敗の言い訳にするような人でもありません。このことから、どんなにベテランでも単純なミスはあるという、世の中に完璧な人なんていないというメッセージを感じました。

で、この失敗のペナルティなのかはわかりませんが、暗殺者の恋人が報復を受けてしまうんですよ。そこで暗殺者はその復讐にと、仲介人や実行犯、元の依頼人などを追っていくってのが本作の流れです。

<人生うまくいかないことこの上なし>

ここからがこの映画の面白いところです。手練れの暗殺者って血も涙もない殺戮マシーンのようなイメージがあるじゃないですか。でも、この映画における暗殺者はむしろその逆で、矛盾だらけの言動に凄まじいほどの人間臭さを感じるんです。

彼はしょっちゅう自分に言い聞かせます。「計画通りにやれ。予測しろ。即興はよせ。誰も信じるな。決して優位に立たせるな。対価に見合う戦いにだけ挑め。感情移入はするな。感情移入は弱さを生む」と。しかし、実際はどうでしょうか。仲介人や実行犯を追っていく過程で予測不能な事態に陥り、臨機応変な対応が求められ、私怨で動いているため報酬すらもありません。そもそも、恋人が襲われた仕返しをしている時点でメチャクチャ感情移入してるじゃないかって思います。まあ、彼が言う感情移入とは殺しのターゲットに対するものだとは思いますけど、それでも先に書いた自分に言い聞かせている言葉のほとんどを守れていないじゃないですか。さらには、マクドナルドでメシを食い、Amazonでセキュリティを破る道具を購入するほど身近な存在にも感じられます。これほどまでに人間臭い暗殺者をかつて見たことがあったでしょうか。そこには、冷徹な殺戮マシーンとはまるで異なる存在がいるんですよ。そこはある意味コミカルにも感じられるんですが、それをシリアスなサスペンス長に仕立て上げているデヴィッド・フィンチャー監督の手腕はさすがだなと感じましたね。

<そんなわけで>

暗殺者モノではあるものの、アクション映画ではないので、やや好みは分かれるかなーと思いました。僕もゴリゴリのアクションを期待していたので、少し拍子抜けだったことは否めません。それでも、キャラクターの描き方はよかったですし、サスペンスが好きな人は楽しめるかもしれません。


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