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『少年と花と少女』

少年は恋をしました。

毎日通る通学路。
その途中に小さな花屋がありました。
その花屋で毎日働いている女の子がいました。
少年よりも少し年上かもしれません。

毎日、花屋の前を通る時に流れてくる素敵な香り。
思わず中を覗き込みます。
すると、花から顔を上げた彼女と目があったのです。

毎日彼女と目を合わすのが楽しみでした。
彼女と目が合わなかった日は、早く寝ました。
早く寝れば、早く次の日になるからです。

ある時、小遣いを溜めて花屋に入って行きました。
「その花をください」
そう言うのが精一杯でした。
彼女が手にしていた、名前も知らない花を買いました。
それでも、初めて言葉を交わしたことが嬉しくてたまりません。

それから、小遣いが溜まると花を買いました。
少しずつ会話が増えていきました。
彼女の名前もわかりました。
彼女も名前を覚えてくれました。

しかし、それ以上どうしていいのかわかりません。
少年の部屋は花で埋め尽くされそうです。

ある日、花屋に入ろうとすると、彼女は店の表で待っていました。
いつもと服装が違います。
綺麗な帽子をかぶっています。
小さなハンドバッグも下げています。
「ねえ、お花を何回も買うよりも、勇気を出してわたしをデートに誘ってみない? お小遣いももったいないしさ」

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