マガジンのカバー画像

Markover 50 の読んだ本

242
Markover 50の読んできた本の読書感想文を収めています。
運営しているクリエイター

#毎日note

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を読む

本日は、三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書2024)の読書感想文です。 半身社会のススメ本書はベストセラーになっている一冊で、タイトルも気になっていたので購入し、松本へ帰る電車とバスの中で読了しました。 乱暴に纏めると、「働きながら、本を読める社会をつくろう。仕事や家庭など何か一つに全身全霊を傾けるのではなく、バランスをとる半身社会でやっていこう。」というのが、著者である三宅氏の(自身の経験も踏まえての)主張になるかと思います。その主張に到達する

『フランス三昧』を読む

台風一過で快晴になりましたので、出掛けたくてうずうずしていた息子を誘って、首都圏電車旅に出掛けてました。父の真の思惑には、昨夜から読み始めて面白くて止められなくなった、篠沢秀夫『フランス三昧』(中公新書2002)を読みたかったという裏目的がありました。 毎週観ていたクイズダービー毎週土曜日の19:30-20:00に『巨泉のクイズダービー』(TBS系列 1976/1/3-1992/12/13)という番組があり、少年〜青年時代に割と真剣に観ていました。司会兼プロデューサーは、大

『点と線』を読む

本日は、自宅の本棚に大切に並べていた本格長編推理小説の古典的名作、松本清張『点と線』(新潮文庫1971)の読書感想文です。何度目かの再読です。 松本清張の文体に惹かれて本作は、後に大人気を博すようになる社会派推理小説というジャンルを開拓したとされる記念碑的名作です。1957(昭和32)年2月から1958(昭和33)年1月まで、雑誌「旅」に連載されたこの作品は、時刻表を使った巧妙なトリックの斬新さが評判を呼び、著者の松本清張氏(1909/12/21-1992/8/4)の名声を

『日本の歪み』を読む

本日は、養老孟司✖️茂木健一郎✖️東浩紀『日本の歪み』(講談社新書2023)の読書感想文です。 三賢人の鼎談集本書は、2023年発売の比較的新しい本です。 鼎談(ていだん)とは、 の意味なので、コロナ禍も去ったので、三人が同じ場所に集まって会話した内容を、ライター(今岡雅依子氏)の方が手際良くまとめて単行本化したものになっています。養老氏(解剖学者)、茂木氏(脳科学者)、東氏(批評家)という著名で影響力があり、世代の違う三者が、日本を巡る諸問題について様々な意見を酌み交わ

『集中講義 織田信長』を読む

本日は、小和田哲男『集中講義 織田信長』(新潮文庫2007)の読書感想文です。 今考える織田信長の功績数多い戦国武将をランキングした場合、人気と実力を兼ね備えた武将のトップ3には確実に入るのが、尾張から天下統一に王手をかけていた、織田信長(天文3年5月12日-天正10年6月2日)だと思います。明智光秀に本能寺を攻められ、49歳で果てた信長のとしての資質は輝くばかりです。稀代の風雲児の一生と人物は、保守気質の強い私にとっても憧れる存在です。 戦国時代研究の第一人者、小和田哲

『はじめての構造主義』を読む

本日は、橋爪大三郎『はじめての構造主義』(講談社新書1988)の読書感想文です。 お気に入りの論客の一人本書は、著名な社会学者(理論社会学、宗教社会学、現代社会論)である橋爪大三郎氏が、東京工業大学助教授に就任される直前、39歳の気鋭の研究者だった頃に書かれたもので、以来何度も重版化されている定評のある一冊です。 現代人のモノの考え方、社会の捉え方に深く根付いている「構造主義」を、初心者にも理解できるよう丁寧に解説してくれている良心的な書だと感じます。この本が、長年読まれ

『凱風館日乗』を読む

本日は、内田樹『凱風館日乗』(河出書房出版2024)の読書感想文です。週末プチ旅の移動の合間に挑みました。読了して、今の自分が漠然と考えているようなことを、クリアに表現されているフレーズに次々と出会うことができ、腹落ちするとともに、とても幸せな気持ちに包まれることができた一冊でした。 丁寧に語りかける論客最近、内田樹氏の著作を読む機会が急激に増えてきました。読む本の選択を、著者の好き/嫌いで判断するのはできるだけ避けたいと思いますが、自分の関心時についてどう考えているのか、

『女のいない男たち』を読む

家族旅行二日目は、雨が降る生憎の天気でしたが、筋金入りの『晴れ女』である妻の強運のおかげで、天気のトラブルに見舞われることなく過ごせました。前半で簡単に旅の総括をした後は、村上春樹『女のいない男たち』(文藝春秋2014)の読書感想文です。 家族三人が一緒にいるだけで幸せ昨夜は早めに風呂と夕食を済ませていたので、夜は早目に休みました。普段は夜更かし気味の息子も早起きして疲れたのか、ベッドに入るとすぐに眠りに入りました。 今朝は8時過ぎまで寝て、昨日訪れた赤倉観光ホテルのカフ

『世界は経営でできている』を読む

本日は、岩尾俊兵『世界は経営でできている』(講談社現代では新書2024)の読書感想文です。 売れている一冊本書は、売れているらしい、面白いらしい、という口コミを耳にして、ミーハー気分で購入しました。確かに、ネット上で抜粋記事を目にしていたし、書店に行くと何冊も平積みされていて、人気があるらしいことが伺えました。売れる本には、必ず理由がある筈なので、興味を持って手にしました。ただ、購入したのが確定申告作業をやらなければならなかったり、読書全般への気力が減退していた時期だったの

『チューリップ』を読む

本日は、早逝した米国の詩人・小説家、シルヴィア・プラス(Silvia Plath 1932/10/27-1963/2/11)の『チューリップ Tulips』という詩についての所感です。死後の1965年に出版された『アリエル Ariel』の中に収められています。 偶然辿り着いた作品私は、昨日までこの『チューリップ』という詩の存在も、シルヴィア・プラスという米国生まれの女性詩人の存在も知りませんでした。出会いは偶然で、知的好奇心を発揮して縁を紡いていった先で遭遇しました。 彼

『サル化する世界』を読む

昨日はお酒の酔いのまわりが酷くて、頭が全然働かず、身体の自由も効かず、部屋に戻って早々にベッドに倒れ込んだ為、またしても『毎日note』の連続投稿記録がストップしてしまいました。また、振り出しに戻るですが、気分一新で進めていこうと思います。本日の内田樹『サル化する世界』(文芸春秋2020)の読書感想文から、再開です。読了しておらず、特定の部分を抜き出しての感想です。 定期的に意見を拝聴する論客著者の内田樹氏(1950/9/30-)の著作はよく読んでおり、自分に許している本の

『仕事の辞め方』を読む

本日は、大阪へ向かう高速バスや息子との電車旅の隙間時間で読み終えた、鈴木おさむ『仕事の辞め方』(幻冬舎2024)の読書感想文です。 潮時で仕事を辞めるのは最高の贅沢放送作家・脚本家として長年一線で活躍してきた鈴木おさむ氏が、2023年10月12日に、2024年3月31日で放送作家業・脚本業を辞めることを発表しました。以来その言動や行動は注目され、最後に手掛けたテレビドラマの仕事は注目されました。本書も売れているようです。 1972年4月5日生まれの鈴木氏は現在51歳で、自

『アイヒマンと日本人』を読む

本日は、山崎雅弘『アイヒマンと日本人』(祥伝社新書2023)の読書感想文です。 日本人が気になる人物本書で取り上げられているオットー・アドルフ・アイヒマン(Otto Adolf Eichmann 1906/3/19-1962/6/1)は、ナチスドイツの親衛隊中佐であり、第二次世界大戦中にナチスによって遂行されたホロコーストの実務遂行において重要な役割を担ったとされる人物です。 アイヒマンは、戦争犯罪者としての罪を逃れる為に偽名で潜伏していたアルゼンチンのブエノスアイレスで

『日本人の精神と資本主義の倫理』を読む

昨夜の時点では、アクティブな一日にすると意気込んでいましたが、ここ数週間の疲れや睡眠不足もあったのか、起きたら昼前になっていました。その現実に気持ちが萎えてしまい、そのまま家でダラダラ過ごすことに決めました。 ベットに寝転んだままamazon Prime videoで『トップガン・マーヴェリック』を観た後に手にしたのが、先週東京に出た際、神保町の古書街で購入したまま積ん読状態になっていた 波頭亮・茂木健一郎『日本人の精神と資本主義の倫理』(幻冬舎新書2007)です。読み始め