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『日本の歪み』を読む

本日は、養老孟司✖️茂木健一郎✖️東浩紀『日本の歪み』(講談社新書2023)の読書感想文です。

三賢人の鼎談集

本書は、2023年発売の比較的新しい本です。
鼎談(ていだん)とは、

三人が向かい合いで話をすること。その話。

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の意味なので、コロナ禍も去ったので、三人が同じ場所に集まって会話した内容を、ライター(今岡雅依子氏)の方が手際良くまとめて単行本化したものになっています。養老氏(解剖学者)、茂木氏(脳科学者)、東氏(批評家)という著名で影響力があり、世代の違う三者が、日本を巡る諸問題について様々な意見を酌み交わしているだけでも貴重な一冊だと言えるでしょう。最近、読書から遠ざかっていたので、読み進めるのが新鮮でした。知的好奇心を刺激される内容を読むことで、錆びつきつつある頭が多少は活性化される効果が期待できそうです。

アメリカの属国から中国の属国

最終章にあたる第◯章で地震がテーマに扱われています。考えたくない気の重いテーマですが、今後30年の間に確実に起こると言われている南海トラフ地震や関連して発生する可能性がある富士山大噴火の天災によって日本国土が壊滅状態になるリスクは想定しておかねばなりません。また、台湾有事や朝鮮半島騒乱が飛び火して、戦争に巻き込まれる可能性もゼロとは言い切れません。

養老氏は、本書の中心テーマである日本の歪みを解消するには、「天災」を経験する他ない、という主張を随所にしています。衰退を続ける今の日本には、大規模な地盤沈下に直面したら、地力で復興するだけの力が乏しいのが実情です。そうなると、隣国の中国が介入して属国化を狙ってくる可能性がある、というのが本書の見立てです。あながち荒唐無稽とも言えないシナリオです。現在が米国の属国なのだから、価値転換が起こらざるを得ない状況になります。個人的には避けたい未来です。

常識を疑う

三人は、「常識」とされている考え方や通説を疑い、耐えず疑念を持って物事の本質を考える、という共通点がある、という特徴がありそうです。また、頭だけでなく、身体性(肌感覚など)を重視する姿勢も、私の好きなスタイルです。歴史を紐解きながら、テーマの議論を追っていく作業はなかなか面白い体験でした。

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