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『仕事の辞め方』を読む

本日は、大阪へ向かう高速バスや息子との電車旅の隙間時間で読み終えた、鈴木おさむ『仕事の辞め方』(幻冬舎2024)の読書感想文です。

潮時で仕事を辞めるのは最高の贅沢

放送作家・脚本家として長年一線で活躍してきた鈴木おさむ氏が、2023年10月12日に、2024年3月31日で放送作家業・脚本業を辞めることを発表しました。以来その言動や行動は注目され、最後に手掛けたテレビドラマの仕事は注目されました。本書も売れているようです。

1972年4月5日生まれの鈴木氏は現在51歳で、自身が言い始めた『ソフト老害』という造語が話題になっています。本書では、仕事を辞めるということを論理的・説得的に語っています。比べることではありませんが、私が28年半勤めた会社を辞め、サラリーマン生活に別れを告げたのも51歳の秋でした。そういう行動を起こしたくなるお年頃なのかもしれません。

本書を読むと、私が「仕事を辞める」という結論に辿り着いたのと似た思考や感覚を随所に発見することができ、大変嬉しく思いました。自分の意志で仕事を辞められるのは、最高の贅沢だと思っています。

場所を空けることの大切さ

邪魔者、厄介者扱いされるまで組織や地位にしがみつかないこと…… を、私は意識していました。40代後半くらいから、働くことや成長を追い求めること、他者と競争することへのモチベーションが明らかに落ちていて、この環境に居てもどうあがいても全力では頑張りきれない、心底仕事や人間関係を楽しめない、という感覚が日に日に強くなっていました。組織から本当に必要とはされていない、大切にはされていない、という空気感も感じ取っていましたから、仕事を辞めることは、前向きな転換でもあり、後ろ向きな撤退でもありました。

鈴木氏も、第二章で、自分の「代わりはいる」という簡単には受け容れたくない事実を堂々と書かれています。この指摘は100%正しくて、素直に受け容れなくてはならない現実です。後進の為に自分が座っている場所を空けるのは、至極真っ当な判断だと思うのです。辞めることに過剰なマイナス意識を持たないことも強調されていて、その見解にも深く同意します。

仕事術、人生術としても

仕事術、人生術としても読んでおいて損はない本のような気がします。私は40代の過ごし方については、鈴木氏とやや見解を別にします。私には、自分自身は「十分な成功や恩恵を受けられない運命」という割り切りがあったので、時間を味方につけての「逃げ切り」を目指し、50代からの人生後半戦、せこく蓄えた資産を元手に人生後半の約20年間は、状況を「愉しむ」ことに徹すると決めています。100歳まで生き延びてやりたいことがある訳でもなく、長く生きているだけの恥さらしの人生は真っ平御免です。

知名度も実力も人脈もある鈴木氏には、まだまだやりたいことがあるようです。おそらく今の仕事を辞めても、各所から引く手あまたでしょう。引退して足を洗うのは放送作家業と脚本業だけで、他の分野では自分のペースで精力的に活動していくことでしょう。数年後には、しれっと復帰する可能性もありそうです。陰から趨勢を見守りたいと思います。

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