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言葉は揺れる

今日は言葉の話です。国語を教える者として9月26日付日経新聞に載っていた文化庁の調査の記事を面白く読みました。noteのライターの皆様にも興味があるお話かと思い、取り上げてみました。

この調査の正式名称は令和元年度『国語に関する世論調査』というもので、23ページにわたって発表されています。前半は若者言葉や外国人と日本語について。今回は後半の敬語、常用漢字、言い回しに絞って考えてみたいと思います。まずは敬語から見ていきましょう。

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さて、あなたがもし調査を受けていたらどう答えましたか?
(1)先生は講義がお上手ですね。

目上の方を評価したり「ですね。」と友達言葉で話しかけるでしょうか。気にならない人が62.9%もいるのですね。うーん。

一番気になる人が多いのは
(4)規則でそうなってございます。

です。規則でそうなっております、で十分ですよね。

(8)こちらで待たれてください。

にも違和感を抱く人が多いようです。これも丁寧なつもりで話しているのでしょう、たまに耳にします。


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こちらのページは新しく常用漢字に追加された漢字の表です。字が細かくて見づらくて申し訳ないです。

萎縮、語彙、憂鬱、歯牙、楷書、俳諧、火蓋、毀損、錦秋、危惧、右舷、禁錮、憧憬、払拭、凄惨、羨望、詮索、遡上、未曾有、破綻、緻密、進捗、補填、汎用、隠蔽、浄瑠璃、賄賂、山麓と並んでいます。クイズ東大王のようです。

なんと画数の多い字が多いこと。確かにひらがなで書くより漢字の方が意味がつかみやすいものがほとんどですが読めても書けないものが多い?大丈夫でしょうか私、先生なのに…あとで書いて練習しよう。

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最後は慣用句です。

「手をこまねく」は本来「何もせず傍観している」という時に使われていましたが今は「準備して待ち構える」と思っている人が上回っています。また、「敷居が高い」は「不義理などをして行きにくい」が「高級すぎて入りにくい」になってきています。

「新規まき直し」「新規まき返し」は拮抗していますが本来は「まき直し」でした。「雪辱を晴らす」「雪辱を果たす」はどちらをつかいますか?リベンジする、というような意味ですが、今は「晴らす」を使う人の方が多いのですね。天候つながりでこうなるのかしら。

このように言葉は使う人によって変化していきます。パソコンの登場で「書く」ことは「入力する」ことにとって代わられ、スマホの登場で文はより短くなりました。世代間の違いはびっくりするほど。義母は新幹線に乗ると東京から名古屋までラインに書き続けます。長ーい一段落です。ごきげんママ♡はスマホだと長くとも三文から四文くらいで段落を変えたり区切ったりします。子ども世代は「おけ」と「ありがとー」とか?文でなく言葉のことが多いです。

時代の流れはネットの影響で急激に早くなりました。万葉から平安や江戸、また明治の文学から昭和と変わってきたように、否それ以上のスピードで日本語は変わっていっているのでしょう。

この調査ではどれが正解どれが間違いなどとは書かれていません。使う私たちこそが主体なのです。無理に難解な言葉を使う必要はないけれど語彙が多い方が思考や感性やひいては人生まで豊かになる気がします。

美しい日本語が使われなくなることは寂しいです。一方で吉本ばななさんの本を読むと易しい言葉でも素晴らしい世界が広がっています。こちらも興味深いです。

この調査を通してこれからの日本語を作っていくのは私たちだということを感じました。言葉について考えるきっかけになると幸いです。

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