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奇跡を生むやわらかな眼差し

何の気なしにFacebookをスクロールしていたら、この映像が目に飛び込んできた。(ごめんなさい。今日はなぜかリンクがうまく貼れない...)

https://youtu.be/AUX40ygrtrk

井上陽久先生、通称「イモニイ」の自然体で輝く姿が、私の心を捉え、次の瞬間には、この本まで辿り着いていた。​

子供に関わっていてもいなくても、教育に関わっていてもいなくても、生きとし生けるものと接する以上、彼のようなやわらかな眼差しを自分の中に育てたいと切に願うと共に、決意させる。そんな素晴らしい内容だった。

中には、「当たり前」と思われることもたくさん書いてある。ただ、それを真摯に実践している人の真剣さ、熱量、はかり知れない愛情の深さには圧倒される。しかも彼の場合、その裏に、真理を知ってしまっているが故の苦しみや葛藤から辿り着いた、一種の諦めに似た冷静さが、しっかりと根をおろしている。だからこそ、彼は徹底して「心をかける」。急がずに、じっくりと、丁寧に時間をかけて生徒に向き合い、無条件の愛を目指して奮闘する。その姿はリアル、本物だ。

井上先生は、いい悪いを判断する前に、そのエネルギーの質をしっかりと捉えているように感じる。根拠のない「正しさ」や、エゴと紙一重の「責任感」のはらむ危険性を身をもって痛感した彼は今、その状態が「普通」のものさしでどうであろうと、その瞬間のその場にしかない状況を、彼の研ぎ澄まされた感性で「奇跡」に導いていく。誰かを「変える」のではなく、そのエネルギーを一緒に信じてあげて見守ってあげる。極限まで諦めずに考え抜く力は、究極、優しさになるのだと教えられた。その安心感は、何よりもの応援になる。

子供はもともと自由なんだけれど、成長に伴って社会化していくなかで、たくさんの思い込みを身に付け、不自由になっていく。それは仕方がない。だからこそ、自由になる方法を身に付けてほしい。自分で奇跡を起こせるひとになってほしい。(本文より)

小学校高学年になった頃くらいだっただろうか。結果と効率化を求めるあまり、自分でウンウン唸って考えずに、答えをひたすら覚えていくような勉強方法をしていた。答案用紙を書き終えた瞬間に、ボロボロと覚えたことが床に落ちては消えていく。残念ながら、その時に一度頭に入れた知識は見事に抜け落ちてしまったが、練習時間を確保しながら勉強をするには、それが限界だった。

ただ幸いなことに、私は演奏家として「考える力」を少しは養ってこられてきたように思う。昔から何かがどうしてもうまくいかなくてスランプのようになると、表面的に直すというよりは、土台から建て直すタイプだった。何度も何度も、自分の基礎から変えていった。しばらくうまく弾けない時期があるのだけれど、結構そういうのを楽しんでいたように思う。

話は少し逸れてしまったけれど、私は井上先生の「変態さ」(この言い方はキーワードのように文中に出てくるのだが) を極める姿勢が、たまたま少し早く生まれてきた者としての、次の世代の幸福感まで見据えている大きな愛のメッセージのように感じてならない。とても深いところを見つめているのにこちらが軽やかにそれを感じられるのは、彼がいつだって等身大の自分でいてくれるからだ。


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