題名通り、今巻の主題は家康の伊賀越えです。ちょうど「どうする家康」でも伊賀越えの回を観たばかりなので、取ったルートや解釈の違いが面白かったです。
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1巻冒頭では喧嘩で人を殺してしまった茂兵衛が、こんな風に言われるようになるとは……。
この直後にあるように、「抹香臭いことを考え」るようになった茂兵衛ですが、この「無垢な若者」というのは、例のごとく本多平八郎から体よく押し付けられた少年です。でもその子に褒めて伸ばす教育を与える茂兵衛は、相変わらず教育者向きでもあります。
この段階で16時間以上歩き詰めの茂兵衛には気の毒ですが、このくだり、何だかおかしかったです。心身共にフラフラなのに、それでも威厳を気にするとは……。
人にはそれぞれ活躍できる場があり、その場さえ見つかれば、活躍できるということでしょう。花井くんも、とりあえず素直なのは確かなので、どこかで大化けできるかもしれません。
これ、ちょっと興味深いです。
相変わらず抹香臭い茂兵衛ですが、内陸の国が海を目指す思いが、私も分かった気がしました。しかし武田家滅亡から三ヶ月後に本能寺の変が起きていると思うと、その展開の速さにはびっくりです。
「こういう景色」がどういうものかは、ネタバレになるので書けませんが、本当にささやか、かつ貴重な景色です。
しかしまぁこの巻も、前巻に引き続き「走りずくめ、戦いずくめの日々」(p.239~240)で、読んでいるこちらも疲れました。そんな中、第三章終わりの「あの人」との対決シーンは、真剣ながら、ある意味おかしかったです。その対決の果てに、以下の感想を持ってしまう茂兵衛は、やはり抹香臭いです。
見出し画像は、浜松城の天守閣です。
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