【読書】将軍も楽ではない~『骨は語る 徳川将軍・大名家の人びと』(鈴木尚)~
この本を読んだきっかけは、大学の時の人類学のプリントを、プチ断捨離の一環で見たことです。
目を疑ったのは、江戸幕府13代将軍の家定の最初の正室だった、天親院任子の頭骨及び頭部復元図。他の人の復元図にはない、髷を結っているような盛り上がりがあったのです。どうしても気になってしまい、それでこの本をわざわざ書庫から出してもらってまで、読んでみたのです。
結論からいうと、彼女の頭部には髪の毛が残っており、白木の櫛を芯にした髷が結われていました。分かってしまうと、何てことのない結果でした。
でもせっかくなので、全文読んでみましたが、いろいろ面白かったです。以下、備忘録代わりに抜き書きしておきます。
ちょっとこれ、意味深です。
将軍も楽ではないですね。毒見があるので、熱い料理はそもそも食べられないし。
あらま。
どれほど軟らかいものが供されていたのでしょう。
将軍の夫人や娘たちも、お庭に出ることもできないし、用便の時も女中を同伴して後始末をさせなければいけないし、不自由極まりないです。
驚いたのは9代家重が、頭骨から考えると美男子だったこと。ただ残念ながら歯ぎしりの癖があった上、髭剃りや整髪を嫌っていたので、そうは見えなかったのでしょう。「頭骨をもとにして復原された家重の顔つきと、徳川家に伝わる家重肖像との間にある不一致は、後者が、絵師により、お側近くでスケッチされた、現実の家重の姿と推察されるだけに、眉を寄せ顔をしかめているのは、たとえば脳性麻痺による病的表情があったためと理解されるのではなかろうか」(p.58)。
将軍に共通する特徴として、「一般に当時の庶民と現代日本の平均よりも大型の頭をもち、したがって脳の容積も大きい。(中略)身長はむしろ低」(p.81)かったとか。中でも12代家慶は頭が大きい上に身長が低かったので、「辛うじて6頭身に達したかどうかが疑われるほど」だそうです。
正室や側室にも共通する特徴がありました。
将軍やその配偶者、そして大名に共通する特徴は、「当時とすればまだ未来型であるべき現代日本人の形質を、さらに近代化させた、いわば超現代的とも理解されるもの」(p.200)ということになります。
ということは、時代劇で将軍などの役を現代風の顔のアイドルが演じても、実は顔立ち的には問題がないということになります。まぁ現代のアイドルは、基本的には大願面でも低身長でもないので、その点は問題がありますが。
この貴族化は結構急速に進むようで、例えば「仙台藩主の伊達家は外様大名の中では大藩であるが、初代政宗は中世庶民的形質を多分に残していたのに対し、2代忠宗、3代綱宗と広大になるほど、急速に貴族化が進み、綱宗にあっては後期将軍と余り違わない形質をもっていた」とか。
見出し画像には「みんなのフォトギャラリー」から、ガイコツのイラストをお借りいたしました。
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