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【読書】表紙の雰囲気とテーマのギャップ~『烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ』(阿部智里)~

*この記事は2020年4月のブログの記事を再構成したものです。


平安時代風だけど、人が八咫烏に変身できるという異世界を舞台にしたファンタジーです。だいぶ前に書評を読んで、読みたいと思っていたのですが、なかなかタイミングがつかめず、この度ようやく取り掛かったのですが……。

↑kindle版


正直、読了するのがきつかったです。もはや指摘する気にもなれないほどの、矛盾の山、そして視点のゆらぎ。登場人物たちの視点と「神の視点」が変な風に混ざっているので、読みにくかったです。何よりも、登場人物たちの言葉遣いが汚すぎて、嫌でした。お姫様たちと、お姫様に仕える者たちの話だというのに……。


汚すぎるといっても、お姫様の一人である浜木綿を除き、あからさまに汚いわけではありません。恐らく著者は、ちゃんとしたきれいな言葉遣いをさせているつもりなのでしょうが、言葉の端々が庶民的なんですよね。だからかえって、汚く感じるのでしょう。はなから言葉遣いの汚い浜木綿の方が、よほどましです。どこが若宮の妃候補として育てられた、教養と作法を備えた姫君たちなんだろうと思いました。


そしてこれ、一種の推理小説なんです。途中で人が死に、その真相が終盤に明かされます。意表を突く結末だったのは確かですが、読者に明かされていない事実をばんばん出した末の謎解きって、推理小説としては反則ですよね。


これだけディスりつつ、それでも読み進めたのは、ただただ、「2巻からが面白い」という情報にすがってのことです。あと、表紙の雰囲気と違い、結構怖いテーマを扱っており、著者の視点が意外に鋭いなと感心したのもあります。不思議な題名の意味が判明すると、なるほどと思わされるし。これで2巻がつまらなかったら、どうしよう。まぁ、どうもしようがありませんが。


<追記>

噂にたがわず、2巻の『烏は主を選ばない』は面白いです! だから1巻で挫折してしまっては、もったいないですよ。


見出し画像には、「みんなのフォトギャラリー」から、烏の写真を使わせていただきました。


↑文庫版



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