34. リメイク版映画「West Side Story」｜鶴巻敬

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2022年3月6日 22:15

鶴巻敬

０｜映画「West Side Story」を観てきました。

この映画、元々は名作ブロードウェイミュージカルです。
以前にも映画化されて超々大ヒットしました。
映画といっても私も生まれる前の、1961年公開の映画です。
かなり前の映画なので、前作を見たことが無い人も多いかもしれません。

それを今回は、巨匠スティーブン・スピルバーグがリメイクしました。
5年の歳月をかけて脚本を練り上げた、満を持しての製作です。

公開前は、映画好きな人たちがこぞって「なんで今さらリメイク？」と思っていましたが、いざ公開されたら、全力で拍手して「参りました！」と言った映画です。（少なくとも、私は言いました(笑)）

1丨舞台は"ニューヨーク / ウエストサイド"

ポーランド系移民のジェッツと、プエルトリコ系移民のシャークスが縄張り争いをしていたウエストサイド。人種の違いから争いが起きている、という設定です。

主人公トニーはジェッツで、恋人のマリアはシャークスのリーダー・ベルナルドの妹。運命に逆らい、社会の分断を乗り越えようとした“禁断の愛”の物語。元々は「ロミオとジュリエット」をベースにした物語です。

この名作を、スティーブン・スピルバーグがリメイクし、（スピルバーグはミュージカル映画は初めてとのこと）見事に前作に負けず劣らず、素晴らしい映画に仕上げています。

リメイク版「ウエストサイドストーリー」ぜひ観てほしい！
本当は映画に限らず色んなものを観てほしいですが、まずはこのリメイク版「ウエストサイドストーリー」だけでもすぐさま観てほしい！
いくつかの視点でご紹介します。

⑴ 指導者との“共通言語”ができる。

この映画の音楽は巨匠レナード・バーンスタイが作曲しました。
名曲ぞろいです。2時間半の映画ですが、聞いたことがある曲ばかり。
オーケストラでも演奏されることがありますが、色彩豊かで迫力もあり、吹奏楽・マーチングで使用されることが非常に多い作品です。
ウエストサイドストーリーの名曲の数々を、皆さんの指導者の方々はほぼ間違いなく前作を観ていると思います。

- この曲が素晴らしい
- こんなニュアンスで演奏したい
この映画を通して、指導者の方々と"共通言語が増える"ことでしょう。

⑵ 単純に素晴らしい出来！

曲はもちろん前作と変わりません。
しかし、前作は歌の部分は吹き替えでしたが、今作はそのまま歌っているとのこと。ダンスも迫力があり素晴らしく、ミュージカル映画として非常に素晴らしい出来だと思いました。
映像としても、影の使い方やカメラワーク・構図の取り方も見事です。
動き（ダンス）と音楽の調和性が高いミュージカル映画はマーチングの審美眼を養うのにピッタリでしょう。

⑶ スピルバーグのメッセージ

様々な意味が込められている今作。
いくつかの視点から感じられることがあります。

① リタ・モレノ

前作ではアニータ（ベルナルドの恋人役）を演じてアカデミー助演女優賞を獲った彼女が、今作ではバレンティーナという新しい役を演じています。バレンティーナは、前作で出てくるドク（薬局のおじいさん）の奥さんという設定。既にドクは亡くなっており、その店を続けています。

ドクは白人男性で、バレンティーナはプエルトリカン。
つまりこの夫婦が「人種を越えて結ばれて」いる象徴的な存在です。そして、演じるリタ・モレノも本当にプエルトリコ出身の女優。彼女は、その出自から、本当に苦労してきたそうです。人種差別も大きい時代でしたから、そのリタ・モレノ自身の歩みを重ね合わせると心が震えます。

彼女は以前、性的虐待も受けたと告白していますが、ジェッツのメンバーに言う「レイプのようなことをするなんて恥を知れ」というセリフが彼女の心からの叫びにも聞こえます。
ちなみにリタ・モレノは、プロデューサーにも入っています。
製作としてもこの作品に加わったことは、作品が持つメッセージ性を強くしたように感じます。

② 設定の違い

前作ではあまり語られなかったのですが、ジェッツのメンバー達が無職だという設定が出てきます。（クラプキー巡査の部分で歌われます）
移民の『仕事がない』という貧困問題にも焦点を当てていますが、この設定は現在世界中で起きている移民問題にも通じます。

③ 2022年今現在、ロシアがウクライナへ侵攻しています

いつまでも対立をやめることが出来ない世界への、
"スピルバーグなりの平和へのメッセージ"
とも思えます。
世界が分断しているこの状況だからこそ。
是非とも皆さんに観てもらいたい作品です。

２丨前作と本作を比べる楽しみ

何かと話題の多い本作（リメイク版）。
注目されるだけの理由が豊富にあるというのも、本作の大きな特徴です。

✔︎ なぜこれほど注目されるのか
✔︎ 前作との違いは何か
✔︎ ミュージカルと映画との表現方法の違い
✔︎ スピルバーグ監督の意図したもの
✔︎ 当時の世界情勢
✔︎ "レナード・バーンスタイン"とはどのような人物だったのか etc…

こうした点から調べたり、知識を得ることで、この作品の観え方がガラリと違ったものになります。
- 多角的に
- 多面的に
作品を楽しんでみる機会としてもお勧めします。