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夜の隙間

仕事は思ったより進まず、予定よりも遅くまでかかってしまった。自分の手際の悪さにイライラ。

職場から真っ直ぐに家に帰る気分じゃなかった。この日私は、どうにもこうにも虫の居所が悪くて、一人は嫌なんだけど、あんまり喋りたい気分じゃなくて、でもまだ家に帰りたくない、そうしてフラフラここに来るのだった。ご機嫌ナナメでアイスドリップを飲む。友人から来たlineも素っ気なく返してしまった。ごめんなさい。カウンターに座って、いつも何のためにもならない話をベラベラとご機嫌に喋っているのだけれど、今日はギャグの一つも浮かばない。私いつまでこんななのかしら、考え始めると急にシリアスになって、何もかもつまらなくなる。

それでも夜中にコーヒー3杯くらい飲んでいたら、いつの間にか笑い始めていて、帰るときには少し元気になっていた。箸が転がっても笑っていた。

何があっても、いきなりガタガタ言わずに、ちょっとだけ耐えて、コーヒーと一緒にグッと飲み込むことにしよう、それはそれで美味いということを知ったから。

夜中の風は冷たかった。何の備えもない半袖の私に、友人は羽織を貸してくれた。夜の隙間は綺麗に埋められたのだった。

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