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不安と、その先の仕事への愛と

映画『素晴らしき映画音楽たち』を鑑賞した。

ハリウッド映画史を彩るすばらしき名曲たち
『007』『荒野の七人』『ロッキー』『E.T.』『スター・ウォーズ』『バットマン』『グラディエーター』… ハリウッド映画を彩る映画音楽の名曲の数々。大ヒットした主題歌やメインテーマ曲など、映画史に輝く幾多のメロディがどのようにして生まれたのかが、いま紐解かれる。映像からイメージされた最初のシンプルな旋律が、やがてオーケストラ演奏によるダイナミックで感動的な楽曲へと変貌を遂げていく。映画音楽が誕生して観客に届くまでの知られざる制作過程について、豊富な作品群を題材に描いた貴重な音楽ドキュメンタリー!

映画への愛に溢れた掛け値なしに良い映画だった。”映画を作る”過程そのものすら映画になってしまうなんて、なんて懐の深いメディアなんだろうね。

名作映画のカタログのようでワクワクしたのはもちろん、働くという事について印象に残ったシーンがいくつもあった。

デッドラインは想像の母

映画音楽が生まれていく現場は、オフィスや工場とは大きく異なっている。多くの職場はマンドリンの音色が響いていたり、子供用ピアノの処分に困ったりすることは、まず無いと思う(あるいは僕が無知なだけで世の職場はそうだったら教えてください)。

しかし、仕事に対する普遍的なスタンスには共通する部分があり、個人的には不思議な安心感を抱いた。オフィスワーカーも芸術に携わる人も、同じことで苦しむんだな、だなんて。

特に、締め切りに追われる恐怖、不安、緊張感はどんな仕事にも共通するようだ。

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仕事は常にデッドラインとの追いかけっこであり、デッドラインがなければあらゆる仕事は停滞する。

とどのつまり、デッドラインが僕らを想像的に、行動的に、積極的にしているとも言える。締め切りは想像の母だ。

劇奏を録音する際にオーケストラを雇うのにはお金がかかるため、フィルムを撮り終えたあとで期日を決めて一気呵成にやってしまうのだという。

そのため彼らが職場へ通う頃には、すでにその映画のポスターは街中で見ることができる

未完成なまま「2週間後をお楽しみに!」と謳う広告たち。これがプレッシャーでなくてなんだろう。

だがそんなギリギリのラインで、芸術が生まれ多くの人を感動させている。

仕事で自分を曝け出せているか?

『ダークナイト』や『インターステラー』など、クリストファー・ノーラン作品でお馴染みの売れっ子作曲家ハンス・ジマー氏。(特に『インセプション』は超良い映画です。)

劇中インタビューで、彼はこう述べます。

「楽しいおしゃべりなら何時間でもできる 言葉の裏に本当の自分を隠せるから だが音楽では自分を完全にさらけ出している だから聴かせるときは不安だ それでもこの仕事を愛している 恐怖で妄想にかられたり 死ぬほど悩むこともあるが 辞める気はないよ」

仕事で剥き出しの自分を曝け出すことは確かに恐ろしく、それが不安に繋がることもある。誰だって批判も注意もできれば避けて通りたい。

だけど、そこを飛び越えていかなきゃ良い仕事はできない。安全圏での小手先の仕事を覚えしまうより、長い目で見れば自分のキャリアを広げてくれる。なにより、たぶん、仕事を愛することはできない

本作で出てくる作曲家たちの多くは、とても楽しそうに自分の仕事を語っていた。そこに嘘偽りが感じられないのは、彼らが死ぬほど悩んで不安になった過去を乗り越えているからではないだろうか。

今日も勇気を出して、デッドライン前の仕事に当たっていきましょう。

それがきっと自分の仕事を愛することに繋がるから。



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