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つぼみ

実を結ぶために、
花を咲かすために、
つぼみの私はあるはずなのに
その身体を強(こわ)ばらせて動くことができない。

太陽を浴びても
水や肥料をもらっても
この生命を動かすことができず、
ぎゅっと締め付けてたたずんでいる存在だった。

そんな日だったのに、
あなたがずっと声を掛けてきた日から変わってきたの。
最初は怖くて、いつもより固く心を閉じていたのに
だんだんと頬が緩んできた。
楽しくて嬉しくて、心が暖かくなって
咲かないと思っていた花(わたし)は咲いて、よりさらに美しく咲きたいと望むようになった。

名の知れぬ花の私だけど、
一瞬一瞬をあなたに綺麗な私を見てほしくて
小さな恋が私に意味を持たせてくれた。

だから、他の花に寄り道しないでね。
私に恋させたあなたは、ちゃんと責任は重いんだから。

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