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反逆児Nameweeにみる、マレーシアの多文化共生とその裏側

マレーシアは、マレー・中華・インドの『異なる人種と文化が共生する国』と言われますが、過去には人種間の大きな抗争も。その話題に触れるのはある種タブーとされているそうです。

そんな自国の“背景“ に敢えて挑んだマレーシアの反逆児ラッパー、Namewee(黄明志/Wee Meng Chee) の最新映画「BABI」が話題を集めています。


Nameweeって誰?という人も、この歌とビデオに見覚えありませんか?(笑)
日本人訛りの英語の特徴をよく捉えていて、以前マレーシア日本人界隈で話題にもなりました。

他にも、日本のAV女優さんをミュージックビデオに起用して意味深な(下ネタ満載の)歌を出したり、政府批判と判断される曲で逮捕されたり、とかく話題に事欠かない問題児ラッパーなのです。(個人的にはとても好きです!)

●マレーシアでは上映禁止だが世界では高評価

そんなNameweeの最新作『BABI』は、マレーシア政府から「人種差別的な内容を含む」と言う理由で上映が禁止されていますが、国際的には大きく評価され、4つの国際映画祭で監督賞と主演男優賞にノミネートされました。

“この映画は2000年に起きた実話に基づいて製作され、ベルリン国際映画祭、バンコク国際映画祭、トロント国際映画祭、金馬賞にノミネートされています。

この映画が上映されず、金銭的な見返りもないことは最初からわかっていました。だから、マレーシアができることを世界に示すために、そして『ナシ・レマ Part 2』の撮影へのウォームアップとして、撮影を急ぎました。

しかし驚いたことに、台湾にはこの映画の上映を希望する会社があります。内心、チケットの売れ行きを心配していますが、私たちにとってはこれはチャンスなのです。(上記Malay Mail紙より)

●マレーシアの高校を舞台に起きた抗争

映画の内容が気になり、予告のYouTubeと映画のメイキングドキュメンタリーを観てみました。それによると、

2000年にマレーシアのセカンダースクール(中高)で実際に起きた、人種差別や人種間の対立と抗争。暴動が起こり生徒が死亡するなど事件はエスカレートし、隠蔽するために政府当局が関与。

という内容の様です。

英語・中国語の字幕付き予告編👇映像だけでも雰囲気は掴めます。タイトルの「BABI」はマレー語で「豚」の意で、中華系マレーシア人コミュニティを軽蔑して指す時に使われるそう。

こちら👇はメイキング映像。
Namewee氏が映画にかける想いや、制作に至った背景を語っています。なんとプロの俳優ではなく、未経験の素人さんを起用してるそうです!迫真の演技でプロにしか見えないのでビックリ。 

●警察から「イメージを汚す」と報告が

下記紙面によれば、警察から「BABI」に対して「マレーシアのイメージを汚す人種差別の要素がある」と報告が入っている様です。

“マレーシア芸術家協会(Seniman)は、マレーシア通信・マルチメディア委員会(MCMC)がその内容を評価できるようにするために、映画『BABI』に対して苦情を提出するよう求められている。

MCMCは声明の中で、マレーシアのイメージを汚す人種差別の要素があるとされるWee Meng Chee(Namewee) が監督したこの映画に対し、昨日Senimanが警察から報告を受けたことによる要請であると述べた。“(上記Malaymail紙より)

●最後に

マレーシアでは上映できない、収益も見込めない、と分かりながら製作された映画。これは余程の信念と目的が無いと作れませんよね。非常に気になります。観たいです。

“寛容“とイメージされがちなマレーシアですが、メディア関連の検閲は厳しく海外メディアの自国批判にも敏感です。

マレーシアに住む場合、こんな「多文化共生の裏側とその背景」を知っておくのも大事かなと思っています。





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