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アートから社会を見つめなおす:田村綾海さん 【Color Full カラ・フル ~私が描く未来の色々~ #2】

 突然ですが、ヘッダー画像↑のこの絵画に使われた絵具は何から出来ているか分かりますか?実は鹿の角から出来ているんです!廃材から絵具をつくる「エコアート」。田村さんは廃棄されるものに新たな価値を見出すエコアーティストとして活動されています。廃材から作られた絵の具があたり前に使用される社会を目指したい。同時に、「どうして廃棄されてしまうのか?」アートを通してその裏にある社会にも目を向けてほしい。そう話す田村さんが表現するアートに迫ります。

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田村 綾海さん ECO ARTIST
廃棄されるはずだったものに目を向け、廃棄物に新しい価値を創造するエコアートアーティスト。旅が好きで、旅の先々で廃棄物になるはずだったものを譲ってもらい、絵の具に変えてアートを制作している。アートを通して、素材を提供してくれた企業さんや地域を盛り上げる活動をしている。
〈経歴〉
1996 長崎県出身
2019 グループ展「Made in Japan」NYチェルシー
2020 絵画公募展 銅賞
2021 個展「エコアート展」麻布十番


ーー今ご自身で取り組まれていることをお話頂けますか?

 アートとエコが共生できる社会を目指し、廃棄物をエコアートを通して新たな価値を見出す活動を行っています。様々な社会課題を知って、「地球環境に良いアートができないかな?」と思いました。そこで着目したのが廃材だったんです。廃材が出ている背景には様々な課題があります。例えば、下の壁画もシカの角で描かれています。今、シカの獣害が問題になってますよね。シカが大量に増えているのは、猟師が減っていること、地球が温暖化していることなど様々です。廃材をアートにすることで、廃材が生じてしまっている社会課題の原因そのものを考えるきっかけになればと思っています。

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ーー素敵な取り組みですね。どのような経緯でエコアートに?きっかけは何だったのでしょうか?

 もともと小学校の時から絵が好きで、中学、高校も美術部でした。あるとき、沖縄を訪れ、白骨化した珊瑚を見たのです。「白骨化した珊瑚は新しく生えず、誰にも止められない」という専門家の意見を聞いて、地元の方が悲しそうな顔をしていました。何か自分も地元の人たちのためになることができないのか?自分にできるのは絵を描くことで、そこに接点があるのではないかと考え、画材に着目しました。白骨化した珊瑚も絵具になるのではないかと。


ーーエコアートがもっと広まっていけばと思います。

 エコアートが世の中に広まるためには、アーティストの活動が不可欠です。ですが、アーティストとしての活動のしづらさを感じています。私は2年前にアーティスト一本で生きていこうと思ったのですが、そのためにはどうすればいいのか分からなかったです。SNSで発信すればいいのか、コンテストに応募すればいいのか...これからアーティストとして生きていこうという人が自分のように迷わないように、アーティストを支援する活動も行っていきたいと思っています。

ーー田村さんがアートで表現したいもの、これから目指していきたいアーティスト像を教えてください。

 アートにしか表現できないことがあると思い、模索しています。自分のなかでもその答えはまだ見つかっていないのですが...。最初は絵を見た人が「きれいだ」と思ってもらえる絵を描いていました。そう思われる絵は、実は廃材からできている、という温度感を意識してたのです。ですが、それだとただのきれいな絵で、広まりが薄いのです。もっと社会を考えさせるきっかけになるアートを目指しています。

ーーとても強いメッセージ性が感じられます。中にはアートというもの自体に壁を感じる人もいるのかもしれませんが...

 アートは一つの発信だと思っています。私は、長崎県の出身です。長崎には原爆が投下されたことがあり、毎年たくさんの千羽鶴があつまり、それが大量に廃棄されている。私の友人はそれを燃やした灰で、線香をつくっています。戦争については重く繊細な問題なため、商品化が難しかったのだそうです。
 私はアートで、起きている現状を正しく表現し、発信したいと思っています。現状に改めて目が向けられ、考え直す。私のアート作品が人の想いと人の想いの緩衝材のような役割にならないかと考えています。
 アートに対して壁をつくらないでほしいです。目に見えている部分がアート作品という形になっているだけで、作品にはいろんな想いがつまっています。私のエコアートは作品作りの他にもやらないといけないことがあります。地域の課題を知るために現地に聞きに行ったり、目で見たりします。そしてその社会課題を知った上で、課題に適した形で自分なりの「アート」を作ります。発信していくことも大切です。
 皆さんは自分が関心を持つ社会課題をどのように発信しますか?私は得意な絵画で発信していますが、他にもたくさんの手段があり、「皆さんの得意なことを活かしたアート」という発信手段もあるのではないでしょうか?それはみんなで一緒になってできることだと思います。


ーインタビューを終えてー

 アートとは何だろう?ということを改めて考える機会になりました。絵や彫刻であったり、目に見えている部分がアートだと考えていましたが、その奥に秘められた思いや表現にアートがあるのではないかと思いました。そう思うとはアートは多様な表現があり、きづいていなくてもアートをつくっていると言えるのではないでしょうか。インタビューに協力頂いた田村さん、ありがとうございました!

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「Color Full カラ・フル~私が描く未来の色々~」に込められた願い
 自分のやりたいことができる=「自分が自分の色で輝ける」人がいっぱいいる未来を創るサポートをしたい!そんな思いでこの記事を書いています。自分が描きたい未来を創ろうとする人との出会いが、皆様の「やってみよう」という思いにつながれば誠に幸いです。

前回の記事のご案内
人と森が心地よく育ち、共存する社会を目指す:一場哲宏さん 【Color Full カラ・フル ~私が描く未来の色々~ #1】はこちら

編集者
「まなびたいわ」事務局スタッフ岸野奏。
Green Innovator Academy1期生。

まなびたいわ」とは?
学生・社会人問わず、多様なバックグラウンドを持つ人々との「対話」や「ディスカッション」を通して、自身の「ありたい姿」「なりたい自分」に気づき、それを仲間(和)で実現させるコミュニティです。

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