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小西大樹「就職したら親戚が増えました」邂逅編

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小西大樹と杉崎基、杉崎葵の出逢い編です。凄く長い話なので、短編として一つずつまとめてみたいのです。宜しくお願いします。 同時に、小説を何故書こうと思ったかの経緯を書きました。が、…
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2020年8月の記事一覧

私が小説を書こうと思った話①

正確な日時は分かりません。就職してからだから、20年……いえ30年も前からかもしれません。

頭の中に、ふとした瞬間に、眠る間際や列車内、歩いている時に、ちらほらマンガとリアルな画面を足して2で割った様な画面が現れる様になりました。
こういう画面(場面)は、小説を読んでいる時にも見えますが、不思議な事に無の状態で見えていました。

最初は,「こんなマンガ昔読んだっけ?」「あまり読まない本だけど、こ

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私が小説を書こうと思った話④

このままでは腱鞘炎まっしぐらだ!どうしようかな?手書きは辛いぞ?かと言ってパソコンは無いし。去年の1月にガラケーが壊れてスマホになり、9ヶ月目になろうとしていました。その時、やっとの事で出来る様になった……スクショが脳裏を僅かに掠めたのです。

ん?スクショするのは良いが、どこに入力するの?自慢では無いが機械オンチである。因みに職場の医療事務用パソコンは、今年の3月までリナックスでキーボードは五十

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私が小説を書こうと思った話②

私は子供時代から、文章を行き当たりばったりで書いていました。今でもそうです。殆ど推敲という行為をしておりません。頭の中に浮かんだら同時に文章が出来ているから同時に書く、入力しております。言葉もそうなので、頭の中で良く考えて話しなさい、文章を書きなさい、と言われても、瞬時に浮かぶものを頭の中に留めておける?忘れてしまう。子供時代からこんな感じです。頭と口と手は同時進行です。今!現在でも!(笑)

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小西大樹「就職したら親戚が増えました」#13 邂逅編 お礼とお詫びと⑤

コーヒーの香りに惹かれ、本日のケーキセットを自分でも知らない内に夢中で完食した大樹は,やっと本来の目的を果たそうと、立ち上がった。

「ごちそう様でした。とても美味しかったです。……あの、それで……後になってしまいましたが、その。」
「小西君のお口に合って良かったわあ。……え?何?」

大樹は傍らの手提げ袋を葵に差し出すと、
「あの、先日は大変お世話になり、ご迷惑をお掛けして、申し訳ございません、

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小西大樹「就職したら親戚が増えました」#12 邂逅編 お礼とお詫びと④

本日のケーキセットは、チーズケーキとブレンドコーヒーであった。

大樹は,、不思議そうに首をかしげながら、ケーキを一口、コーヒーを一口、代わる代わる口に運んでいた。

おかしいな?コーヒーを一口飲むと、ケーキが欲しくなる。で、ケーキを一口食べると、今度は直ぐにコーヒーが飲みたくなる。で、コーヒーを飲むと……エンドレス?

「ふ……ぶはっ!」

「えっ?」

真剣な面持ちで首をかしげながら、それでも

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小西大樹「就職したら親戚が増えました」#11 邂逅編 お礼とお詫びと③

薄いグレー系でテーブルセットやスツールを統一された店内は、照明の明るさをワントーン落ち着かせている。深緑色のブラインド、薄いミントグリーンのカーテンも落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

ほっとできそうなカフェだなあ……。あまり混んでなかったら、ゆっくりしたいかも……。

大樹が店内を見回していると、八十代と見られる男性客が大樹を見て、笑顔になった。

「あれ、俺の貸切かと思ったら、珍しい事もある

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小西大樹「就職したら親戚が増えました」#10 邂逅編 お礼とお詫びと②

〔カフェバー 岬〕は、道路沿いの住宅地の中で隠れ家の様にひっそりと営業している。
外観は普通の民家の様に見える。小さな看板が入り口付近にこじんまりと添えてある感じで、バス停から5分以内で到着出来る好条件であるのに、売り上げは大丈夫なのか?と疑問を抱くほど、開店状況を前面に押し出してはいない。

であるから、初めて店に訪れる客は、八割~九割方口コミで来店している。
「あそこにオカマの店長がいる」

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小西大樹「就職したら親戚が増えました」#9 邂逅編 お礼とお詫びと①

就職して初めてのゴールデンウィークが、思わぬアクシデントにより呆気なく味気なく終わってしまった。
大樹はカレンダーを眺めながら、軽いため息を吐いた。

「ゴールデンウィークってこんなに短かったっけ?」

〔カフェバー 岬〕に連休前日から、30日の夕方まで滞在し、オーナーの基や店長の葵に世話になっていたので当然である。
但し、本人は約一日半の間、基の部屋で眠り込んでしまったので記憶が抜けている。

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小西大樹「就職したら親戚が増えました」#8 邂逅編 空白の一日②

ゴールデンウィークに入って2日目の昼。
ブランチを基に用意して貰い、さあ食べよう、という時、

ピンポーン……とインターホンが鳴った。

その時、基が低く「チッ」と舌打ちをした。
大樹は(どうしたのかな?)と、今までにこやかに話していた基が一瞬で表情を崩した事に驚いていた。

「あっら~眠りの国の王子様はお目覚めになったのねえ?良かったわ~!」

(店長さんだ!)声を聞いて、大樹は倒れる寸前の記憶

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小西大樹「就職したら親戚が増えました」#7 邂逅編 空白の一日①

……今、何時だろう。

大樹はベッドの中で、寝返りを打ちながらぼんやりと思った。

なんだか身体がスッキリしている様な気がする。ぐっすり眠れたのかな……もう起きる時間かな……?

ベッドのヘッド部分に置いてある、小さな目覚まし時計を取ろうと、目は瞑ったまま、右手を伸ばした。

あれ?……無い?落っことしちゃったかな。
もう一度手を伸ばし、何となく違和感を覚える。

ヘッド部分が変だ。っていうか、高

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小西大樹「就職したら親戚が増えました」#6 邂逅編 予期せぬ出来事

「重要書類良し、名刺良し、身だしなみ……多分、良し。」

小西大樹(こにし ひろき)は、初めてのおつかいの様に緊張していた。

(この重要書類をお得意先の〔カフェバー 岬〕のオーナー様にお渡しすれば、明日からゴールデンウィークだ!)

深呼吸して、ドアを開ける……が、鍵が掛かっていて開かない。

「あれ?今日は営業されているはず……それとも、入口が違うのかな。」

営業課長の本橋和弥(もとはし か

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小西大樹「就職したら親戚が増えました」#5 10日前

 いつもの様に手早く食事も後片付けも済ませると、基は翌日の食材の確認に入り、葵はメモ帳を前に腕組みをして再び悩み始めた。

「そんなに考え過ぎなくてもいいだろう。呼ぶのはお前の兄弟とかでいいんじゃないか。」
厨房から基が手元の食材をチェックし、控えを取りながら葵に言った。

葵の父が社長をしている杉崎商事(株)北関東支社。そこに葵の従兄弟がそうとは知らずに入社してきた。本人は全く知らない。伯父が社

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小西大樹「就職したら親戚が増えました」#4 10日前

「基(もとい)、和(かず)兄から連絡が来たわ。調査結果が出たそうよ。」

葵(あおい)がエプロンを取りながら珍しく深刻な面持ちで調理場へやって来た。

「和兄(かずにい)って、たまにウチの店に来てくれるお前の従兄弟の本橋和弥さんか?」
「そうよ。支社の営業課長なのよ。連絡は父から来ると思ってたら違ったわ。」

基は洗い終わった食器類を乾燥器に入れてから、翌日の準備作業に入ろうとして手を止めた。

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小西大樹「就職したら親戚が増えました」※あらすじ

 主人公の小西大樹(こにし ひろき)は、大学を卒業し、自宅近くの杉崎商事㈱に就職した。近場で自宅通勤で楽だと思っていたら、新人研修の後に北関東支社へ転勤する羽目に。

 転勤先で秘書課勤務になり、初めての社外任務が「重要書類を取引先の〔カフェバー岬〕へ届けること」になった。

 大樹の両親は、2人とも身寄りの無い施設育ちなはずであった。しかし、就職してからは本人の与り知らない場所で話が大幅に進んで

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