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夏目漱石「こころ」

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夏目漱石の「こころ」を1話ずつ丁寧に読み、解説していきます。
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記事一覧

夏目漱石「こころ」について~先生神話の崩壊

先生、お嬢さん、Kそれぞれの家族の確認。 先生は両親を伝染病で失い、叔父の裏切りから故郷…

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私
5か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十六(本文最終回)「あなた限りに打ち明けられた私…

「殉死という言葉をほとんど忘れて」いた先生が、「妻の笑談(じょうだん)を聞いて始めてそれを…

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私
5か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十五「記憶して下さい。私はこんな風にして生きて…

この先生の自殺の理由の説明を聞いて、納得できる人はどれほどいるのだろう。 「死のう死のう…

私
5か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十四「私は死んだ気で生きて行こうと決心した」

「その内 妻(さい)の母が病気になりました。医者に見せると到底 癒(なお)らないという診断でし…

私
5か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十三「たった一人で淋しくって仕方がなくなった」

「書物の中に自分を生埋(いきうめ)にする」とは、読書・勉強によってKの幻・罪の意識から逃れ…

私
5か月前

夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十二「告白を抑え付ける力」

「私の亡友に対するこうした感じはいつまでも続きました」 前話で先生は、「私の幸福には黒い…

私
5か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十一「私はとうとうお嬢さんと結婚しました」

先生は、さまざまな人から、「Kがどうして自殺したのだろうという質問を受け」、「もう何度となくこの質問で苦しめられていた」。Kの友人、奥さん、お嬢さん、Kの父兄、通知を出した知り合い、彼とは何の縁故もない新聞記者。すべての人が、「必ず同様の質問を私に掛けない事はなかったのです。」 周囲の者からすれば、Kは、実直に勉学に励む青年と見られていただろう。多少堅物ではあるが、その精進する姿に偽りはない。従って、彼が自殺する理由が、周囲の者には思い当たらないのだ。だから、とても素直な質問

夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十「雑司ヶ谷に葬られるK」

「私は奥さんに気の毒でしたけれども、また立って今閉めたばかりの唐紙を開けました。」 Kの…

私
5か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書四十九「奥さんの顔には驚きと怖れとが、彫り付けら…

「私は突然Kの頭を抱えるように両手で少し持ち上げました。私はKの死顔が一目見たかったので…

私
5か月前
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夏目漱石「こころ」番外編「Kの告白」~俺が死んだ理由を教えてあげようか?

友人は、変わらぬ毎日を過ごしている。 いまだに俺には何の説明もない。 俺は自分を正直に友人…

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私
6か月前
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夏目漱石「こころ」上・先生と私二十二「先生が干した椎茸なぞを食うかしら」

「母は不承無性に」以降の部分は、実家の母親がする態度と言葉だ。この言葉は、それを聞いた息…

私
6か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書四十八「Kの死とたくらみ」2

前回の続きです。 なぜふすまは開いていたのか? なぜランプは暗く点(とも)っていたのか? こ…

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私
6か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書四十八「Kの死とたくらみ」1

「奥さんがKに話をしてからもう二日余り」というのがなかなか微妙なのだが、婚約成立の四日後…

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私
6か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書四十七「善人による意図せぬ悪」

「私はそのまま二、三日過ごしました。」 お嬢さんとの婚約が決まってからの「二、三日」が、「そのまま」何もせずに「過」ぎたということ。 「その二、三日の間Kに対する絶えざる不安が私の胸を重くしていたのはいうまでもありません。私はただでさえ何とかしなければ、彼に済まないと思ったのです。」 「Kに対する絶えざる不安」・「何とかしなければ」とは、「私とこの家族との間に成り立った新しい関係を、Kに知らせなければならない」こと。しかしこれは先生には、「胸を重く」する「至難の事」だった。