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夏目漱石「こころ」解説

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夏目漱石の「こころ」を1話ずつ丁寧に読み、解説していきます。
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記事一覧

夏目漱石「こころ」~Kについて

夏目漱石の「こころ」は、明治時代の小説なのに、今も原文でそのまま読めるのは、考えてみると…

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私
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夏目漱石「こころ」~奥さんへのお嬢さんとの結婚の申し込みについて

次は、「私」が下宿の奥さんに、お嬢さんとの結婚を申し込む場面です。 ③~⑥あたりの、下宿…

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1年前
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夏目漱石「こころ」~お嬢さん(と奥さん)は、なぜ「私」を夫として選んだのか?

お嬢さん(と奥さん)は、なぜ「私」を夫として選んだのか? コミュ障でやや性格に難があると…

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1年前
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夏目漱石「こころ」~遺志に反する先生の過去の公表について

「こころ」を最後まで読み、また初めから読み返すと、冒頭にとても引っ掛かる表現が出てくる。…

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夏目漱石「こころ」~先生がKを「よそよそしい頭文字」で呼ぶ理由と、遺書の公表につ…

もうひとつの疑問は、③の部分だ。 ③鎌倉の海水浴場で偶然見かけ、その後知り合った人を、「…

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1年前
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夏目漱石「こころ」~先生が自殺したのは、青年のせいである

少し長くなるが、『こころ』本文を示す。 本文の、特に①~⑩の部分から、次のようなことが言…

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夏目漱石「こころ」について~先生神話の崩壊

先生、お嬢さん、Kそれぞれの家族の確認。 先生は両親を伝染病で失い、叔父の裏切りから故郷と縁を切る。兄弟もおらず、天涯孤独の身。 お嬢さんも一人っ子で、父親を戦争で失っている。母ひとり子ひとり。奥さんにしてみれば、身寄りのいない先生は、自分の家の再興を考える上において、最高の婿である。相手の家との関係を考慮しなくていいし、自分の家に迎え入れることができる。 Kの両親と養父母は存命だが、縁を切られている状態であり、きょうだいとは疎遠な関係。 つまり、先生とKは、親も、頼る人も

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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十六(本文最終回)「あなた限りに打ち明けられた私…

「殉死という言葉をほとんど忘れて」いた先生が、「妻の笑談(じょうだん)を聞いて始めてそれを…

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10か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十五「記憶して下さい。私はこんな風にして生きて…

この先生の自殺の理由の説明を聞いて、納得できる人はどれほどいるのだろう。 「死のう死のう…

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10か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十四「私は死んだ気で生きて行こうと決心した」

「その内 妻(さい)の母が病気になりました。医者に見せると到底 癒(なお)らないという診断でし…

私
10か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十三「たった一人で淋しくって仕方がなくなった」

「書物の中に自分を生埋(いきうめ)にする」とは、読書・勉強によってKの幻・罪の意識から逃れ…

私
10か月前

夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十二「告白を抑え付ける力」

「私の亡友に対するこうした感じはいつまでも続きました」 前話で先生は、「私の幸福には黒い…

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10か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十一「私はとうとうお嬢さんと結婚しました」

先生は、さまざまな人から、「Kがどうして自殺したのだろうという質問を受け」、「もう何度と…

私
10か月前
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夏目漱石「こころ」下・先生と遺書五十「雑司ヶ谷に葬られるK」

「私は奥さんに気の毒でしたけれども、また立って今閉めたばかりの唐紙を開けました。」 Kの自殺現場の状況を確認してもらうためだ。 「室の中はほとんど真暗でした」 Kの魂は既に冥界へと旅立ったことを表す。 「奥さんは私の後ろから隠れるようにして、四畳の中を覗き込みました。しかしはいろうとはしません。」 死の世界への侵入への拒否感の表れ。 「雨戸を開けてくれと私にいいました」 雨戸を開けることによって、太陽の光をKの部屋に入れ、生の世界へと戻す作用がある。暗闇は死の世界だ。