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私のくるぶしは、入水のかおりを知っている

好きな人が好きだった人になっても、仕事を辞めても、好きなアーティストのライブに行っても、突然理由もなく死にたいとしか考えられなくなっても、生活は続く。

久々に会った友人に、「悲劇のヒロインって正直1番簡単なんだよ」って言われて、納得してしまった。何事も、何かに原因をこじつけて自分の現状を悲観することで、諦めることを簡単にするし、むずかしい思考を停止させることが出来るようになる。私はいつから悲劇のヒロインだったんだろう。諦めることで、思考を都合よくやめてしまうことで、私は自分の人生や将来、これから関わるかもしれなかった人達、ありとあらゆる可能性を丁寧に確実に断ち切ってしまっていたんだと、気づいた時にもう。

生きていくには、働かないといけない。私は新卒で入った会社がブラックで、半年で心身を壊し退職した。しばらくして派遣で働き始めたが、ひたすらに単調な事務作業が向いてなくて契約更新を辞退した。全部、私自身が決めたことだけれど、それでもあの時やめていなかったら、あの時もう少しだけ耐えることができていたら、と考えてしまう。私は今日、アルバイトの面接で「今は何もされていないんですか?」と聞かれ、「はい」としか答えることが出来なかった。何もしてないんです私。何もなせないままなんです。自分に甘えて周りに甘えて、優しくしてくれる人によりかかって、冷たい人を都合よく遠ざけて、あったかもしれない未来を無くしてしまった、私には無いんです。なにも。

好きなバンドのボーカルが亡くなってからもう5年が経つ。5年。長いんだけど、本当に短くて、コロナ禍が太文字になったデザインで社会科の教科書の後ろの方、現代社会の部分に載るであろう数年。
この5年で、たくさんのことがかわった。私は大学を卒業して職歴が2つになった。上手くいっている元同期を見るのが、浪人して今年就職の友人を見るのが、妬ましくて、そんなことを思ってしまう自分が1番嫌いだった。酒もタバコも覚えた。でもピアスは開けない。肌が弱いから。ギャンブルはしない。いなくなった父親を思い出すから。

何度も死のうと思って海に出かけた。結局、1番進めてくるぶしだった。私のくるぶしは、入水のかおりを知っている。私の肺は、コロナウイルスを知っている。ニコチンを知っている。私の心は、世の中を心底怖がっている。私の肝臓は、アルコール分解のすべを知っている。私のうでは、好きだった人の温かさを知っている。私の目は、ずっとあの早春の星空を見ている。私は、自分自身をいつまでも不幸に傾かせることをやめられないと、確信している。

知っているだけでも、数人の友達が新卒1年以内に会社を辞めた。みんな心を壊した。体を壊した。学生時代に、あんなに笑いあった子が、涙声で電話をかけてきた。もう、みんな、笑っていてくれるだけでいいのに、何がそんなに私たちを許してくれないんだろうね。なんで図太いだけの人が、心が強いひとが最終的に生き残る社会構造になってるんだろうね。私たちずっと悲しかったのに、悲しい顔が出来なくて笑って暮らしてたのに、今になってボロが出てさ、ずっと寂しいまま虚しいまま心の空洞が寒いまま、守られないまま、淘汰されたね。ね。ヒロイン。

大抵の物語にはヒロインにはヒーローがつきものなのに、誰も来ないね。だれも、たすけにこないね。

自分のことは自分で守るんだって、人を好きになる前に自分のことを好きにならないとって、ちゃんと本当はみんなわかってるんだよね。私もそうだよ。

こんなの割に合わないから、はやく人生メンテナンスお願いします神様。詫び石いらないから、即刻お願いします。


ぜんぶよくなる。青が大好きなみんな、大丈夫でも大丈夫じゃなくても、最後のどんでん返しぐらい信じてあげようね、人生は映画じゃないし小説でもないけど、自身の舞台であることにかわりはないからね。ほんらい、観客も主役も脇役も、全部自分一人で十分なはずだからね。


おやすみ。
久しぶりに文章を書いたけど、青は青のままでいられてるのかな。

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