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ラ・ラ・ランドの副作用

2017年の日本公開から2年。

金曜ロードショーで地上波初放送された「ラ・ラ・ランド」。

私たち家族も、ようやくこの三連休で堪能することが出来た。


話題作。

夜空をバックに、黄色いドレスの女性とシャツ姿の男性が向き合って踊っている画のイメージ。

ミュージカル映画。

大学時代の友人たちのSNS投稿で、彼女たちが、とても酔いしれていた映画。

(「ボヘミアンラプソディー公開後は、そっちに乗っ取られていたけれど」)

その程度の知識だけで見始めた。


2時間半後。

胸のあたりのゾワゾワ、モヤモヤが、止まらくなった。

勝手にハッピーエンドだと思っていた私にとって、この終わりかたは、なかなか衝撃だった。

フランス映画、ミニシアター系ジャンルだったのか…

(あからさまではないにしろ、読み進めるとネタバレになるキーワードもあります。ラ・ラ・ランドはまだ見ていないけれど今後見たいという方は、読まずにお戻りください。)


私は普段、映画やドラマを見るとき、どうしても自分の身に置き換えて見てしまうタイプだと思う。

だから、あまりにも感情移入できない主人公や設定の話には、あまり興味を持てないというか見ないことが多いし、見たとしても、カチッとはハマらないまま見終わる。


「ラ・ラ・ランド」は、どこか素直になれない強がりな二人の始まりとか、夢や自分の表現に対するこだわりと、その裏に見え隠れする自信のなさとか、とてもカチッとハマった。

客観的に見られるからこそ、今の年齢だからこそ、

「あー、もったいないよー、そこはこうした方がいいのにー」

「素直じゃないんだから」

「こう言えば伝わるのに」

そんな言葉を画面の外から二人に掛けつつ、「まぁ、当事者になると、こういうもんだよね…あるある!」と油断しながら、最後まできたのだ。


でも。

だけど。

最後の終わりかたは、私には納得いかなかった。

「世間あるある」なのかもしれないけれど。

「恋愛あるある」なのかもしれないけれど。

「それぞれ別の夢を持つ二人あるある」かもしれないけれど。

二人には、夢だけでなく、不器用な恋も大切にし続けてほしかった。

いや、不器用だからこそ、この結末なのだろう。

そんなことはわかっている。

でも、私はその部分だけは、やっぱり共感できなかったのだ。


お互いがそれぞれ「夢」だけに真っ直ぐに向き合う期間があったのもわかる。

でも、失敗やすれ違いを経て、それを共有し合える相手になれていたと感じたのに。

「夢」だけに向き合ったあと、しっかりと継続できる二人になれたと、私は見ていたのに。


どちらかの心が離れてしまったのなら、それは仕方がないと思う。

あのラストはそういう意味なのだろうか。

でも、私にはそうは思えなかった。

ミアは、年齢的観点、経済サポート的観点から、流されてしまったのだろうか。

5年とは、気持ちを冷めさせるには十分すぎたのか。

それとも、お互い「夢」に生きていこう、と決めた時点で、終わったと思っていたのだろうか。

セブの5年後のほうには、他の相手の存在は全く描かれていなかった。

彼のほうは、お互い「夢」を叶えて、また始める機会を待っていたのではないのだろうか。

ミアにとって、「夢」とともに「恋」「愛」は並列位置にはなかったのか。

でも、仕事しながら、他の人とは恋愛し、結婚し、出産できたのだから、それがセブ相手でもよかったのではないか。


お互いフリーの状態で、あの最後の場面を迎えて欲しかった。

最後の「もしこうだったら走馬灯」。

そんな最初からうまくいっていなくても、オーディションのあとからの対応で、十分持ち直せる、と思えたのに。


しかし、この「もしこうだったら走馬灯」が、現実とかけ離れすぎているからこそ、この二人なら最初からそんな風にできなかった夢物語であるからこそ、対比的に、とても幸せな、そして残酷なものとして、観客の心にいつまでも残るのであろう。

現に私の心には、その日の夜、毎週録って見ている「ワンピース」を見るまで、モヤモヤが残った。


私の実生活恋愛は、ハッピーエンドを迎えたのちの、楽しい家族生活が続いている。

「ラ・ラ・ランド」を見てモヤモヤしたとしても、私の今の状況は、私たち二人の、家族三人の「愛」のバランスによってしか変わらない。

しかし、疑似体験に近い映画鑑賞は、幸せな夢から覚めた現実を見ていたあの頃を思い出す。

「大好きな人と幸せになれた、と思ったら、夢だった」、あの愕然とする朝の気持ち。

久しぶりに味わってしまった。


映画の中とはいえ、二人の気持ちは、二人にしかわからない。

そういうことなのだろう。

だけれども、それを知った上でもなお、二人には希望の見えるラストを迎えて欲しかった。

それだけ素敵な二人だった。


若い頃、「ハッピーエンドなんてありきたり!」と、フランス映画、ミニシアター系にハマっていた私も。

年を取った。

大人になった。

そういういうことかな。

サポートしていただける、というありがたみ、深く心に刻みます。 子どもに繋いでいけるよう、子どもにいろんな本を買わせていただくのに役立てようと思います。